2015年もネットメディア革命は継続するか

2015年もネットメディア革命は継続するか

2014年12月22日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)




日本国内はIT企業の上場ラッシュで、世間一般的な感覚よりは好景気を期待する状況で2014年は終わろうとしている。あと数日――営業日でいえば、4日ほどで今年も終わる。

さまざまな変化が起きた一年だったが、個人的な感覚ではメディア業界における変化がもっとも興味深い。日本国内ではそれほどバズっていないが、とくにPlatisherと呼ばれる構造変化はじつにおもしろいと思っている。このコラムでも何回か紹介しているが、PlatformとPublisherが融合する動き(Platform+Publisher)を、その組合せによる造語で示している。

Platisherを説明するにもっともわかりやすい事例は、YouTubeだ。誰もが知るYouTubeは、基本的にはプラットフォームとしての側面だろう。簡単にアカウントが作成でき、自作あるいはインターネットで拾った動画をアップロードできる。アップロードされた動画は世界中の誰にでも公開できるし、閲覧者を限定することもできる。まさにプラットフォームの典型的な機能だ。

次にYouTubeはメディアになった。集まった動画コンテンツを見たい人が集まれば、大きなトラフィックが生まれるので、広告を出す機会が与えられる。つまりCGM(コンシューマージェネレイテッドメディア)として、世界中のユーザーからコンテンツを集めて、人気を博して広告で稼ぐ。プラットフォームであり、メディアである。

ここまでの状態をもってPlatisherと呼べるかというと、そうではない。そもそもプラットフォーム企業自体、金を稼ぐには広告か、有料でプラットフォーム上の機能を貸すしかないからだ。つまり、改めて造語をつくるほど新しくも珍しくない。

Platisher最大の特徴、そしてYouTubeがPlatisherである最大のポイントは、みずから独自コンテンツをつくり出しはじめるということだ。YouTubeが自社でライブ動画などを集め、テレビ番組のように独自のコンテンツチャネルを提供しはじめているのは、多くの人が知っているはずだ。

つまりPlatisherは、オープンに誰もが使えるプラットフォーム(Platform)であり、集めたコンテンツをメディア化(Media)すると同時に、みずからコンテンツをつくり出す(Publisher)。

要するにメディア市場では、自社コンテンツをつくり出すことが重要になっている。当たり前のようだが、いわゆるキュレーションメディアやバイラルメディアが、これまでメディアと名乗りつつも他人コンテンツを収集することでトラフィックを生み出してきたように、「メディア=パブリッシャー」ではない。パブリッシャーはメディアであるが、メディアがパブリッシァーであるとは限らないわけだ。また、プラットフォームはメディアである場合が多いが、メディアがプラットフォームであるとは限らない。

このように、Platisherのように、プラットフォームであり、メディアであり、パブリッシャーであるという三位一体サービスはなかなか生まれない。そして、一度成立すれば、非常に強力なサービスになる。

現在アメリカにおいてはVoxMedia、MediumなどがPlatisherモデルを標榜して急成長しているが、YouTubeの巨大さと比べればまだまだだ。最近日本国内ではあまり聞かなくなったPinterestも、自社コンテンツ提供に大きく踏み出してくると思っているが、ビジュアル型のコンテンツプラットフォームがPlatisherを目指すことは非常に理にかなっている。

来年は、日本国内でもPlatisherモデルの大きな成功例が出てくるものと思う。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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