2015年のトレンドは?―テキストvs画像vs動画、そしてWebvsアプリ

2015年のトレンドは?―テキストvs画像vs動画、そしてWebvsアプリ

2015年01月13日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)





新年も明けて2週間が経とうとしている。そろそろエンジン全開で仕事に取り組もうと、改めて気合を入れ直している読者も多いことだろう。

2015年は、実におもしろい一年になるのではないか、と僕は期待している。ことに我々のようにIT業界、テクノロジーとクリエイティブの間にいる人間にとっては、非常に刺激的な変化が訪れると思うのだ。

今月はこれらの変化に対する所見をまとめていこうと思うのだが、今回はざっくり概観について述べてみよう。

1. テキストの復権?―キーワードは「Immersive(イマーシブ)」
インターネットは、まず誰でも自由に文章―すなわちテキストを書き、意見や主張を発表できる場として発展してきた。インターネット上で情報を公開しようとすれば、サーバやドメインの取得にはじまり、HTMLなどの専門知識を必要とした。若干ハードルが高い所業だったわけだが、それがブログの登場により、誰でも簡単にテキストはもちろん、画像などもアップロードできるようになった。これが最初の革命だろうと思う。

さらにFlickrやYouTubeなどが画像・動画のアップロードにも門戸を開き、ビジュアルWebの時代が訪れた。

Twitterは140文字に絞り込んだテキストWebの旗手として人気を博したが、やがてインターネットは完全にビジュアル化し、Instagram、Pinterestなどの新興勢力が猛威をふるうようになる。さらにいうと、静止画よりも動画コンテンツに人気が集まり、動画メディアが爆発的にトラフィックを集めたのが2014年だった。Facebookのニュースフィードは、いまやYouTubeを超える動画消費の場である。

今まではこのような流れだったわけだが、2015年は再びテキストWebにも焦点があたるような兆しが見えている。もちろん画像や動画との組み合わせになることはまちがないが、画像・動画の添え物のように扱われていた2014年のテキストに比べれば、明らかに長文テキストの需要が再び表われはじめている。いわゆる没入型メディア=Immersive Mediaとよばれる比較的長文のテキストと、あまりレイアウトに凝らず写真や動画を置くならガツンと画面いっぱいに置く(=サムネイルをクリックさせることで読者の集中力を削ぐようなことはしない、という意味)ようなシンプルなUIをもったメディアが人気を集めつつあるのだ。

はじめに言葉ありきと唱えたのは神だったが、インターネットもまたテキストからはじまった。そのテキスト重視の懐古的なメディアが、スマートフォンやタブレットの狭い画面を味方につけて再興を目指しているのである。なお、次回はこの“変化”について詳述する予定だ。

2. Webの復権?
現在のインターネットはモバイルインターネットである。スマートフォン上のトラフィックはあきらかにPCを圧倒している。同時に、モバイルブラウザは、モバイル上のアプリのひとつにすぎなくなり、Webは各アプリ上(のアプリ内ブラウザ機能)で表示される、コンテンツフォーマットにすぎなくなった感がある。

アプリの弱点は、異なるアプリ間でコンテンツを共有できないことで、それがゆえにWebは生き残っているといえるのだが、異なるアプリ同士でも情報を直接つなぎ合わせてアプリ内ネットサーフィンを実現するための手法として、いわゆるディープリンク(http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/38118/)に注目が集まるように、やがてはアプリはWebを必要としなくなるという見方も多い。

しかし、逆に、WebもまたHTML5の進化が目覚ましく、アプリにできることはすべてWebでもできる、と言い切れるようになることも夢ではなくなってきている。結局のところ、アプリを介して情報を公開しようと思えば、企業も個人もApple StoreかGoogle Play、通常であればその両方に対してアプリ公開の申請を行う必要があり、つねに私企業であるAppleとGoogleの了解を得なければならない。これを嫌がる気分は、誰にでも理解できるだろう。

対してWebは、自由で誰にでも開かれたオープンな場である。同時に、アプリ市場の占有者であるAppleとGoogle自身もまた、Webの進化に対する支援を怠らないところがおもしろいところだ。

アプリがディープリンクなどの異なるアプリ制作者間で共用できるコンテンツシェアリングの標準仕様を手に入れて、Webを駆逐するのが先か、Webがアプリの強力な表現力を手に入れて、PC時代に謳歌したWeb 2.0的発展をモバイル上で再現するか、非常に注目されるところだ。2015年は、このプラットフォームの激震の萌芽が見られる一年になると考えている。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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