Facebookがメディアを殺す日―Instant Articlesの衝撃

Facebookがメディアを殺す日―Instant Articlesの衝撃

2015年05月18日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)


Instant Articles

FacebookがWebメディアや新聞社などに、コンテンツを直接Facebookにアップロードするコンテンツホスティング事業「Instant Articles」を開始するとアナウンスした。

現在みなさんは、自社のWebサイトにアップしたコンテンツのリンクをFacebookページにポストしているはずだ。それによって自社サイトへのトラフィックを稼ぐ―Facebookマーケティングの基礎だ。そこで注目されるのは

Facebookページへの「いいね」:
そのコンテンツがFacebookユーザーに届く可能性の大きさ

Facebookページのリーチ:
コンテンツが読者に届いた数

Facebookページのエンゲージメント:
いいね/コメント/シェア/記事のクリック

などである。

率直に言えば、我々の目標は、最後の自社サイトに辿り着いてもらうための“記事のクリック”、ということになる。この考え方は、ニュースコンテンツのトラフィックを広告によって換金しているニュースメディアであっても、通常のWebサイトを運営している企業や個人であっても同じことだ。

だが、今回のInstant Articlesは、このFacebookマーケティングの考え方を、まずメディアに対して無力化してしまう。Facebookはメディアに対して、リンクを投稿するのではなく、Facebook上に直接すべてのコンテンツをポストさせる。ランディングページ(LP)を自社サイトにもって、そのリンクをFacebookで拡散させるというやり方を、メディアに対しては禁じようとしているのだ。

いや、あからさまに禁じようとはしていないが、コンテンツの配信場所を現在のWebサイトやサーバからFacebookが用意する場所に変えなければ、トラフィックを遮断するという意図は見え隠れする。だからメディアも対抗できずに従うことになる。いまやトラフィックエンジンのチャンピオンはGoogleではなくFacebookだからだ。

各メディアはFacebookと広告収入をシェアすることになり、そのぶんサーバやネットワーク代を支払う必要がなくなる。しかし、メディアはつねにFacebookへ過度に依存することになり、生命線を握られることになる。Facebookがメディアになり、現在のメディアはコンテンツメーカー、コンテンツプロバイダーに過ぎなくなる…。

Instant Articlesについての詳細は、「Introducing Instant Articles」(http://media.fb.com/2015/05/12/instantarticles/)を参照してほしい。現在日本市場ではサービス展開されていないし、iPhone上だけのサービスであるようだが、日本のメディアも安穏とはしていられないだろう。同時に、 個人や企業は、いまのうちに自社メディアにトラフィックを集める努力を急いだほうがよい。メディア市場全体に激変が起こる前に、自社メディア(いわゆるオウンドメディア)を強化して、核の冬に備えるべきである。

というわけで、次回は本コラムの内容を受けて「Facebookを味方につけて、あなたのWebサイトを盛り上げる3つの大切なこと」をお送りする予定だ。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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