Apple Music利用者がぜひ覚えておきたい不具合と対処法

Apple Music利用者がぜひ覚えておきたい不具合と対処法

2015年08月28日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)



今回は、先日遭遇したApple Musicのちょっとした不具合に触れることにする。

Apple Musicでは、iTunesにもともと保存されていた手持ちの楽曲に関して、Apple側のカタログと自動的に照合するようになっている。そして、カタログにない楽曲データのみが自分のiCloudミュージックライブラリにアップロードされ、合致したものについては、カタログにある256KbpsのAACデータで置き換えられる(細かなルールはサポートページを参照)。こうすることで、むだなアップロードトラフィックの発生や、iCloud上でのデータの重複を防ぐのであり、これは手持ちのすべての楽曲をiCloudで管理できるiTunes Matchと同じ仕組みだ。

Apple IDが等しいすべての対応端末から、自由に自分の音楽ライブラリにアクセスしたり、楽曲をダウンロードして再生できる点も共通だが、両者の違いは、iTunes Matchではメンバーシップの登録解除後もダウンロードされた楽曲が再生可能なのに対し、Apple Musicでは、ストリーミングはもちろんダウンロードした楽曲も無効化される点にある。後者が購読サービスである以上、その部分はいたしかたない。

しかし、あるアーティストの異なるアルバムに同一曲が収録されていた場合、先にマイミュージックに追加したアルバムは全曲問題なく表示されるのに対し、重複した曲が、後から追加したアルバムの楽曲リストには表示されなかったりする(つまり、そのアルバム内では聴けない)のは、各アルバムのコンセプトを尊重するうえで問題を感じる。特にAppleは「音楽をデジタルデータではなくアートとして扱いたい」といったメッセージを発信しているのだから、なおさらだ。

また、原因不明ながら、Apple Musicをオフにした途端、手持ちの4700曲もの楽曲データが消えたという海外ブロガー(http://www.loopinsight.com/2015/07/22/apple-music-is-a-nightmare-and-im-done-with-it/)も存在するので、いずれにしても、自分が「所有する」楽曲データについては、バックアップを取っておくべきではある。

個人的に悩ましかったのは、ごく少数ではあるが、手持ちの楽曲がApple Musicのカタログとマッチした際に、同名の異なる楽曲に置き換わってしまった点だ。これは、手持ちの楽曲と同じ曲がカタログにはなく、別アーティストによる同名の曲が存在していたために起こったのだが、両者のアーティスト名やジャンルなどのメタデータは異なっており、本来であれば別の楽曲として認識される条件が揃っていた。

改めて音楽の世界を見回すと、案外、タイトルが同じ曲や、異なるアーティストによる同一曲のカバーレコーディングが多いことに気がつく。そこで、読者のみなさんにも同様の症状が起こった場合、筆者が試みた対処法が有効と思われるので、紹介しておくことにする。それは、iTunes側で手持ち曲のタイトル自体にハイフンや括弧を付け、たとえばアーティスト名を追加するというやり方だ。つまり、曲名を少し変えて、カタログとマッチ処理される際の混同を防ぐのである。

とても単純な方法だが、筆者の場合にはこれで不具合は解消された。もしもの際に役立てば幸いである。




■著者の最近の記事
Apple Musicはアーティストとリスナーにとってプラスかマイナスか?
Apple MusicのライバルはAWAやLINE MUSICだけではない―Spotifyとの戦いの幕開け
Apple Musicを3週間使い込んで感じた魅力、そして問題点
温故知新を感じたWWDC2015
Apple Watchは情報洪水を防ぐ水門となるか
Apple Watchで旧世代の贅沢品ブランドを戦々恐々とさせるApple
Apple Watchを着用してはじめてわかった、魅力点と要改善点






[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。

MdN DIのトップぺージ