アートディレクターに聞くフォトディレクション 山﨑泰弘 [STANDARD] Yasuhiro Yamazaki |
やまざき・やすひろ
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。広告制作会社、Sony Musicを経て2011年に独立し、デザイン事務所「STANDARD」を設立。CDジャケット、広告、CI / VI、Webデザインなどを手がける。 url.standarz.com/ |
1 手描きのラフで撮影のイメージをつかむ ジャケット写真の撮影のためのラフ。鉛筆で描いたあとにスキャンして、Photoshopで着色をする。背景のイメージ、それに合わせた衣装の色など、全体の配色をわかりやすくするため、ラフには色をつけることは多いそうだ。逆にいえばそれ以上はあまりイメージを決め込まないようにしているとのこと。「たとえばこれだったら、崖のところでピアノ置いて、天板に雲が映ってて弾いている、というところくらい。本当に決めてない」 (山﨑さんのコメント。このあとの括弧内も) |
2 配色を考えつつアザーカットのラフも描く アーティスト写真( 通称、アー写)やアザーカットのぶんもラフを描く。アー写は各種音楽媒体などで使われたりするものだ。ジャケットでは青いコートを着ているが、アー写は人物にもっと寄ったイメージ( 左端のラフ)なので、黄色いコートにすると青い空が映えるのでは、という狙いがあったという。アザーカット( 中央と右端のラフ)は、プロモーションキットなどに使うためのもの。「ピアノの存在感が大きいぶん、アーティストが背景に溶け込んではまずい。背景は空だったり、赤みの強い土だったりするので、さかいさんが羽織っているジャケットはどれも沈まない色をもってこようと思ったんです」 |
3 撮影のスケジュール表をしっかりと立てる ロケ撮影のためのスケジュール表(香盤表とも言う)は、撮影全体の監督者であるアートディレクターがつくることが多い。山﨑さんはこのスケジュール表に、描いたラフも貼っておくとのこと。撮影の流れで、次は何のカットを撮らなくてはいけないかがパッと見でわかると、現場が混乱しないそうだ。食事のタイミングも記入されている。「スタッフは夢中になってごはんを食べるのを忘れてしまうことも。食べないと撮影の回りが悪くなったり、雰囲気もカリカリする。そういうのを避けるスケジュールを立てるのも自分の仕事です」 |
4 ロケハンで撮影場所やそのほかの状況を確認 撮影前に、ロケハンに行って、必ず現場を事前確認する。この時のロケハンは、フォトグラファーと一緒に行き、光の向きなどを確認。撮影する間も太陽がどんどん動いていくので、なるべく撮影する同じ時間に見に行くのが望ましいそうだ。「ただ、このときのロケハンは暴風雨のため大荒れで大変でした(笑)」 |
5 狙いがきちんと伝わる 構図を探って撮影 実際に撮られた一枚。「この現場では、カメラの高さに関して相談しました。ピアノの上面を見せたくてカメラの位置を上げ過ぎると、何かダサくなってしまう。かといって、低すぎると狙いがよくわからない。その間をうまく撮れたらな、と」。そして、CDジャケットの正方形でトリミングしたのがP040のものだ。「後ろの風景がきれいだから全部入れたい。向こう側の灯台とか。でもそこは我慢。主役は何なのか、脇役として風景をどれくらい入れるのかのバランスを考えてバスっとトリミングしました」 |
6 宣材用の写真なども一緒に撮影する こちらは、一緒に撮影された宣材用のアーティスト写真。「アーティスト写真は雑誌媒体などに使われるものです。ジャケットの世界観やイメージに連動してかなきゃいけないので、ピアノがなくても成立するアー写を考えていかなきゃいけないですね。空気感とかトーンなどに統一感が出るように」 |
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本記事は『MdN』2013年8月号(vol.232)からの転載です。
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