増えすぎた鹿の害がニュースになり、ジビエとしての活用も盛んになっている今日この頃、その革を使った小物で注目を集めている「thaw」を今回は紹介しよう。牛革とはひと味違う柔らかな質感と、草木染めが生み出す繊細な色合いはぜひ手に取って確かめてほしいものばかりだ。
しっとりと手に馴染む質感、鹿革が生み出すやさしい風合い
「ジビエレザーを使いたくてこのブランドを始めたんです」
大学で地域の自然や文化について学び、その流れで害獣問題に触れてジビエレザーを活用した革小物へと辿り着いたという「thaw」の窪田さん。そんな思いから生み出されたのが、鹿革をメインにしたジビエレザー小物の数々だ。
本革製品というと硬めでしっかりとしたイメージを抱く人が多いが、「thaw」の革小物を手に取った感触は「しっとり」「柔らか」「軽い」といった真逆の印象。心地よい革の感触と、くちなし・あじさい・やまもも・ぶどうといった自然由来の染料を使った草木染めの色合いのコラボレーションが、手に取り、使うたびに心が癒してくれるようだ。
● 繊細な色合いが魅力の「草木染め鹿革のペンケース」
もっとも売れている看板商品が丸みのあるラインが魅力のペンケース。広めのマチと、鹿革ならではの柔らかさのおかげで、見た目以上にペンや文房具を収納できるのが大きな魅力だ。
そして柔らかな雰囲気を盛り上げてくれるのが草木染めの繊細な色合い。草木染めはしっかりとオーダーしないと色味を安定させるのがなかなか難しいというが、thawでは自然由来の淡い色で美しくムラなく染め上げられたものを使用。デスクトップやカバンの中など、様々なシチュエーションに溶け込んで、使う人の心を癒してくれる絶妙のカラーリングに注目だ。
ペンがピッタリ収まる程よいサイズ感に仕上げてあり、長さは17センチとミニマム。ファスナー部分には革の色を引き立てる色を選ぶなど、細かなコーディネートが考えられている。
● 革オンリーの手触りが心地よい「エコトーン染めのメガネケース」
こちらは、L字型に切り出された鹿革を縫い合わせて作ったメガネケース。本体とフタの部分がすべて一枚革で仕上げられており、スリムながらもしっかりと眼鏡を納めることができる。鹿革ならではの柔らかさのおかげで、ボリュームのあるメガネでも収納可能だ。
カラーバリエーションは草木染めのくちなしに加えて、エコトーン染めのライトベージュ・ウォームグレー・ブラックネイビーの計4色を用意。樹皮に含まれるポリフェノールと鉄分を反応させて皮革を発色させる「エコトーン染め」は、染色環境の影響を受けやすく、安定した色を出すのに高度な技術が必要になるが、有害な物質を一切使っていないので環境にやさしい。ジビエレザーを活用した革小物を作るthawらしい素材のセレクトだ。
背面にはブランドロゴが焼印で入れられている。内側の床面(革の裏側)も丁寧に処理されているため、革特有の毛羽立ちがなく、眼鏡やレンズが汚れる心配が無い。
フタを固定するベルトは、当初はカシメ金具で止めるつもりだったが、鹿革の手触りの邪魔になるので革を丁寧に漉いて縫製で仕上げることに。thawのメガネケースはすべてが革のパーツで作られている。
● 魅力的なアイテムが続々!
他にも、カード類を納めるのにぴったりのミニフラットポーチやポケットティッシュケース、さらにはキーカバーや鉛筆キャップに名刺入れなど様々なアイテムがラインナップされている。
顧客の要望に応じて革の裏面処理や、名入れサービス(焼印/箔押し)にも対応。身につけて持ち歩くモノをすべてそろえてコーディネートすれば、常に鹿革の心地よい手触りが楽しめるのでオススメだ。
やさしい柔らかさは、やさしい素材から ~環境にもやさしいボルティラレザー~
革製品の製作工程で欠かせないのが、革の腐敗や硬化を防ぐ「なめし」工程だが、thawのアイテムはここでも環境にやさしい方法が選ばれている。長年の主流となっているのが、クロムなどの金属加工物や、ホルムアルデヒドなどの有機化合物を使ったなめしだが、これらの製法は自然環境への悪影響も大きい。
一方、thawの製品の革に使われているのは、ボルティラなめしという製法だ。自然の素材のみを使用したなめし剤を使用することで、他のなめし革にはない柔らかさと染色が映えやすい自然な「白」の仕上がりを実現している。
草木染めなどの天然染料を使った色つけとも相性が良く、化学物質を含んでいないので燃やしても安全。そして使用する革は害獣として駆除されてしまった鹿のものと、工程全てがエコロジーなレザーとなっているのだ。
「thaw」のアイテムで自然を常に感じよう
最初に触れたように、大学では地域の自然や街作りについて学んだという窪田さん。やがて害獣として駆除されてしまう鹿のことを知り、その革を使った製品づくりを志したのだが、最初に手にした鹿革はそれまでのイメージとかなり違うものだったという。
鹿自体が小さいので大きく使える部分が少なく、傷や虫に刺された痕がそのまま残っている。牛革と比べるとあきらかに使い勝手は悪い。しかしその反面、鹿革ならではの人の肌のようなしっとりした感触に大きな魅力を感じた。
その柔らかさゆえに、加工しにくかったり保管にも気を遣う鹿革だが「触り心地がいいので作っていて気持ちが良いし、革を手にしながらアイデアを練るのが楽しい」と語る窪田さん。今後は鹿革の個性を活かした財布を作ってみたいそうだ。
「thaw」のブランド名に込められた意味は「打ち解ける」「雪解け」など。手にしているだけで自然との共生を感じ取れるようなやさしい革小物を、これからも作り続けていってほしい。
「thaw」
https://www.thaw1209.com/
窪田さんは、ボルティラレザー&草木・エコトーン染めで質の高いジビエレザーを生産するタツノラボの鹿革でアイテムを製作。最初はそれほど数も出なかったものの、だんだんと反響が広がっていき現在に至るとのこと。
2021.07.19 Mon