デザイナー視点でとらえたWWDC2013現地レポート(前編)
デザイナー視点でとらえたWWDC2013現地レポート(前編)
ユーザー第一でつくられたハードウエアとソフトウエア
2013年06月14日TEXT:堀内 敬子(Boule)
後編はこちら>デザイナー視点でとらえたWWDC2013現地レポート(後編)
2013年6月10~14日、Appleの開発者カンファレンス「WWDC2013」が、アメリカ・サンフランシスコにて開催中だ。初日の基調講演を皮切りに、開発者向けにさまざまなセッションが行われている。筆者はデザイナーなのでデザイナー視点よりで、現地の空気感とともにレポートをお届けしたい。前編では基調講演について、後編ではiOS 7について紹介する。
OS X Mavericksが採用した新技術
基調講演で、いつものイントロダクション的な数字の紹介やデモののち、次はMacについての紹介とティム・クックがいうと、会場のいたるところからため息だか鼻息だかが聞こえた。参加者のうちMacアプリ開発者とiOSアプリ開発者がどの程度の割合かはわからないが、iOS 7の紹介を期待していた人々が圧倒的に多かったのは明白だ。
さてMacの新しいOS、OS X Mavericksの最大の特徴は、高速化とバッテリーの節約を行うための新技術群だ。OSの基礎からアプリまで各レベルで見直しが行われ、CPU負荷を最大72%も抑えたり、背面のウインドウが必要ない場合はスローダウンさせたり、アクティブでないアプリのメモリを圧縮する技術が導入されたのだ。もちろん全自動で行われるので、利用者側はなにも意識する必要がない。これらの技術は、特に重いアプリを複数同時に利用することの多いデザイナーにはうれしい話だ。ひとつのウインドウをほかのウインドウで隠すと、負荷を示すインジケーターがぐぐっと下がる様子を披露したクレイグ・フェデリギのパフォーマンスに、大勢の人々が興奮していたのも印象的だった。
ほかにも、マルチディスプレイやNotificationの強化、Finderのタブ、ファイルのタグ付け、iCloud Keychainなど、デザイナーはもちろん仕事でMacを使うさまざまな人々にとって、地味ながらも役立つ機能が追加された。リリースされる秋が非常に楽しみだ。
ユーザの心理をついたMacBook AirとMac Pro
パフォーマンスが大きく向上したMacBook Airは、今回発表されたハードウエアの目玉だ。外観は前モデルと変わらないが、問題は中身である。筆者もMacBook Airを使っているが、外観にはなんの不満もない。あえて不満をあげるとバッテリーの持ちか、と思っていたところに、All-dayバッテリーが紹介された。新しいMacBook Airのバッテリー持続時間は11インチで最大9時間、13インチで最大12時間。そして、なにより新プロセッサやストレージの採用によって、パワフルかつ高速になっている。大容量のファイルを扱ったり重い描画をすることが多いデザイナーにはメリットが大きいだろう。これだけパフォーマンスやバッテリーの持ちが向上して価格も抑えられているのだから、魅力的といわざるをえない。
Mac Proにも少し触れておきたい。Sneak peekとして発表された際の会場の期待感は、じつに楽しいものだった。Mac Proは愛されていると心から思ったほどだ。Mac Proの紹介シーンは楽しいので、ぜひKeynoteのビデオで確認してほしい(Mac Proの紹介は53分40秒ごろから)。
■Apple Events - WWDC 2013 Keynote
http://www.apple.com/apple-events/june-2013/
基調講演の導入に流れたビデオに「The first thing we ask is: what do we want people to feel?」とあった。この言葉からもわかるとおり、Appleはユーザーの心理をじつによく理解していると思わされた基調講演だった。
iOS 7については後編で詳しく紹介する。
[筆者プロフィール]
ほりうち・たかこ●フリーランスのUIデザイナー。Web制作に長年従事したのち、現在はアプリ(iOS/Android/Web)のデザインを中心に活動中。Web制作関連の共著3冊、ほか雑誌・Webメディア等に執筆。使い心地の良いアプリを真剣に考える人。
Boule http://bouledesign.com/
云々(ブログ) http://unnun.com/