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STEAM対応とプライバシー強化にアップルらしさが出たWWDC 2016 キーノート (後編)

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STEAM対応とプライバシー強化にアップルらしさが出たWWDC 2016 キーノート (後編)


STEAM対応とプライバシー強化にアップルらしさが出たWWDC 2016 キーノート (後編)

2016年6月17日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)


「STEAM対応とプライバシー強化にアップルらしさが出た
 WWDC 2016 キーノート(前編)」はこちら

【前回のあらすじ】
WWDC 2016のキーノートでは、MacBook Proの新型は発表されなかったものの、STEAM教育に対するアップルの姿勢と決意を示すSwift Playgroundは、それに匹敵するサプライズだった。後編では、もう1つの重要なポイントであるプライバシーの強化について触れていこう。




iOS 10の発表の中では、おそらく多くの読者にとって耳慣れない「Differential Privacy(差分プライバシー)」という言葉が登場した。自社のプラットフォームは個人情報の特定が行いにくい環境であることをアピールするために持ち出された技術用語で、特にグーグルとの差別化を図る意図があったと考えられる。

一般的なプライバシー秘匿技術では、複数の異なる統計データを照合することで、ある程度の個人情報を特定できてしまう可能性が高く、いくつかの非匿名化テクニックも存在している。Differential Privacyは、こうした非匿名化テクニックが通用しない形式の統計データを得るためのフレームワークであり、取得された情報に対して意図的にノイズ(ダミーデータ)を加えて匿名性を高めるという基本アイデアに基づいている。

考え方としては決して新しくはないが、注目されてきたのは、実際にネット上のプライバシー問題が顕在化してきたここ数年のことだ。専門家の間では、Differential Privacyにおけるノイズの付加がデータの確度を落とすトレードオフを指摘する声も聞かれるものの、アップルがあえてこれの採用を表明したからには、この点に関しても何らかのブレークスルーを成し遂げたと考えられる。

グーグルも、「Differential Privacy」に関する研究成果を発表し、プライバシー保護を尊重する姿勢を見せようとしているものの、現実問題として同社のビジネス基盤となっている広告事業の実効性を高める上では、矛盾が生じてくる。

たとえば、アップルのモバイル広告プラットフォームであるiAdの失敗要因は、その技術や効果が劣っていたからではなく、広告主が必要とするユーザー情報へのアクセス制限がグーグルの広告サービスなどに比べて厳しかったためだった。

今やアップルは、先のFBIとの情報開示論争でも見せたように、ユーザーのプライバシー保護にかけてはネット上の盟主のような立場を貫いており、今回の発表でも、写真の顔認識や分類がデバイス上で完結することを強調するなど、他社との差別化の大きなポイントとしていた。

事実上、広告関連ビジネスで利益を得ているグーグルでは真似のできないプライバシーポリシーの徹底は、今後のアップルにとって、これまで以上に大きな意味を持ってくるはずだ(もちろん、ティム・クックは、そのことを誰よりも深く認識している)。

ちなみに、キーノートの締めくくりで、世界のデベロッパーたちが語るアプリ開発の理由をテーマとしたビデオが流された直後に、感極まった様子の参加者の姿も見られた。こうしたピュアな心の持ち主が、これからもアプリの世界を支えていくことに、少し安心感を覚えたことも書き添えておきたい。


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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。

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