第35回 星野崇(tetratone Inc.)
無個性がオリジナルを生む
さまざまなジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はWebデザイナー、テトラトーンの星野崇さんを取材しました。独立して会社設立1年目となった現在までの足跡をたどり、デザインを志した「原点」を振り返っていただきましょう。
第3話 一人じゃ踏み切れなかった独立
代々木のオフィスにて、星野崇さん
──積極的に独立志向とかありました?
星野●特になかったです。会社でやりたいことができたら、そのままいたと思うし。別に絶対会社を作って独立してやろうというのはなかった。
──でも、結果的には......
星野●ですね。きっかけは、はじめ僕が入社した時って、40名ぐらいだったんですけど、辞める時はそこそこ組織化や分業化も進んで、90名ぐらいの規模になっていたんです。会社に制作依頼がきて、その中でたまたま自分がその案件のAD担当になる……。そこには自分とそのお客さんの関係性や、デザインする動機付けがすごく希薄に感じたんですね。それは自分のイメージするデザイナー像ではない気がしたんです。もっとデザイナー自身がお客さんと向き合っているというか。だったら自分の好きなようにやってみようというのが理由です。
──一人でやろうと決めたわけですか?
星野●いや、そのときに臼田(パートナー)はフリーで4~5年やってて、いまの会社どうしようかなって相談していたんです。じゃあ、一緒に会社にしてみようかと。なので、かなりアドバイスもらっているし、一人じゃなかなか踏み切れなかった。
──それはいつの話ですか?
星野●ちょうど1年前です。33歳。
──自分の中では思い切りました?
星野●そうですね。でも、あのまま会社にいても自分ができることは先が見えている感じがあったので。周りからみたら思い切りなのかもしれませんが、自分的にはサラッと辞めて踏み込んだかなと。
──不安とかなかったですか?
星野●もちろんありましたよ。けど、周りの協力や助けもありましたし。
──でも、1年ぐらい前だと、どこも仕事が目減りし始めた頃で......
星野●ええ。それは確かにあります。でも、前の会社から独立する人も結構いたので、なんとかそういう人たちと協力しながらというのもありましたし。特にアテがあったわけでもないのですが。
──営業も?
星野●これまで特にしたわけではないです。臼田が持っている仕事をチョコチョコ手伝いながら、途中から入った新規の仕事は僕が受け持つようになって、少しずつ広げていった形ですね。あとはさっきも言ったように、会社のOBから仕事を回してもらったり。あまりバーンとは広がらないですが、結構地道にやってますよ。いい仕事をして、少しずつ広がっていけばいいと思ってやっています。
星野さんの仕事より
株式会社ミクシィ 新卒採用情報2010 案内状/株式会社ミクシィ/2008年
AD+D:星野崇
次回、第4話は「なるべく削ぎ落としたものを」を掲載します。
(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)
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