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デザイン・クリエイティブ目線で語るソーシャルアプリ制作の裏側 第8回「プロ野球PRIDE」(2/2)

2024.4.26 FRI

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デザイン・クリエイティブ目線で語る

ソーシャルアプリ制作の裏側

第8回 株式会社コロプラ「プロ野球PRIDE」(2/2)


 Interview 2/2 

職種に関係なく全員で
同じ方向を向いて企画を考える


株式会社コロプラ アートディレクター/デザイナー 大室氏
株式会社コロプラ
アートディレクター/デザイナー
大室氏
「プロ野球PRIDE」では選手カードをつくる際に、「選手がいかに映えるか、かっこよく見えるかを考えている」とアートディレクターの大室氏は話す。選手の個性が出るような写真を選択するために、同じようなポーズやアングルの写真はなるべく避け、その選手が映えるようにしているようだ。また、色については、「日本がつくり出したプロ野球の色とはなんだろう、といつも考えていますね。メジャーリーグとは色の感じがやはり違うので。また、球団によってチームカラーがあるので、背景などは基本的に黒をベースにしています。黒は、高級感が出るし、どのチームにもかぶらない色ですから」とプロ野球ゲームならではのこだわりがあることを大室氏は説明してくれた。

「現実のプロ野球を楽しみながら、プロ野球を盛り上げ、我々のゲームも楽しんでもらうことが目標です」(石渡氏)
「現実のプロ野球を楽しみながら、プロ野球を盛り上げ、我々のゲームも楽しんでもらうことが目標です」(石渡氏)
コロプラでは、Android版を先に開発し、それをベースにiPhone版をつくっているようだが、機種やディスプレイの違いが多いAndroidの開発について菅原氏にたずねると、「機種の違いはもちろん、開発当時はAndroid4.x系が一般ユーザーに普及しはじめた頃だったので、OS特有の対応も必須でした」と答えてくれた。「各機種の対応は、レビューや問い合わせなどをチェックしながら、端末ごとに調査して地道に対応していくしかないですね。Android 4.1や4.2の対応機種が出てきていますが、これらに対してもこれまでのノウハウを活用しながら乗り越えていきたいと思います」(菅原氏)


「社内で意見をぶつけ合いながら想いをこめてモノづくりができることが楽しいですね」(菅原氏)
「社内で意見をぶつけ合いながら想いをこめてモノづくりができることが楽しいですね」(菅原氏)
コロプラでの開発や制作の特長は、「基本的にモノをつくるときにはチームメンバー全員で話し合いながら、企画を考えています。皆で同じモノを同じ方向を向いてつくっていくことを大事にしていますね」と石渡氏が話し、「開発当初から画面やパーツをホワイトボードに書き出して、チームで話し合いながらつくっていきました」と菅原氏が話すように、役割に関係なくチーム内で話し合いながらモノづくりをしていくことだ。エンジニアやデザイナーの立場で企画などの話し合いをすることに違和感がないかを菅原氏にたずねると、「いろんな人の目や頭を借りたほうが効率的で、テーブルを囲みながら意見を出し合ったほうがよいモノができると思います。そこに職種の垣根はなく、いい意見は取り入れて積み上げていくようにしています」と答えてくれた。また、大室氏は「どのようなUIにするか決まるのは企画を話し合うときだと思っています。企画の骨子を聞いたときに自然にUIが浮かばないようでは、企画がまだまとまっていないと思っています」と話し、企画に参加してチームで同じ方向を向くことで、よりよいUIやデザインをつくっていることを明かしてくれた。


楽しんでもらうことはもちろん
つくっている本人が楽しんでいる


現在はゲーム制作のエンジニアやデザイナーを務めている菅原氏と大室氏だが、以前はゲーム業界とは異なる業界で働いていたという。

菅原氏は、Webサイト制作の中でサーバ側のプログラミングなどを行っていた経歴をもっているという。「ゲームが好きだったので転職を決断したのですが、これまでの技術が通用するのかという心配もありましたし、挑戦だと思っていました。ゲームを作ったこともなかったですし。自分ができることを探しながら、ひたすらモノをつくり続け、知識を蓄えてきましたね。ただ、サーバ側とフロント側の両方を見ながらモノをつくるという部分は、前職の知識が役立っていると思います」(菅原氏)

「試行錯誤しながら、とにかくわからないことは知っている人に聞くという姿勢で勉強してきました」(大室氏)
「とにかくわからないことだらけだったので、色々な人からアドバイスをもらい、試行錯誤しながらつくっていました」(大室氏)

一方、大室氏は広告デザインや雑誌のエディトリアル、パッケージデザインなどを手がけるフリーのデザイナーだった。コロプラに転職したきっかけは、友人から職場を見に来ないかと誘われたことだという。「訪問したときの社内の雰囲気がとても良く、みんな楽しそうに仕事をしていたことに驚きました。当時はフリーで活動していたので、さまざまな企業を訪問する機会が多かったのですが、オフィスに入った瞬間の明るさがまったく違いましたね。その日の夜には入社を決めていました」と話す大室氏。入社当初は、ユーザーに配布するノベルティやポスターなど紙媒体の仕事をやっていたが、数週間後にはゲームデザインを担当していたという。「とにかくわからないことだらけだったので、色々な人からアドバイスをもらい、試行錯誤しながらつくっていました」(大室氏)

Web制作などほかの業界からでも活躍できるか、と聞くと、両氏は「まちがいなくある」と口をそろえる。「根性論ではないですが、やはり熱意とやる気が重要ですね。ソーシャルゲームはユーザーとの距離が近く、同じシステムづくりでも人間くさい感じがしています。機械的につくるのではなく、社内で意見をぶつけ合いながら想いをこめてモノづくりができるのがこの業界だと思いますね」と菅原氏が話せば、大室氏も「疑問をもちながらクライアントや上司から言われた仕事をやるのではなく、自社開発でユーザーの近い場所でモノづくりができることが楽しいです」と話してくれた。

チームカラーを大切にし、背景などは黒を使うようにしている。
チームカラーを大切にし、背景などは黒を使うようにしている。
日本野球機構承認
©COLOPL, Inc.
なるべく選手の個性が出るように、ポーズやアングルの異なる写真を使うなどの工夫が行われている。
なるべく選手の個性が出るように、ポーズやアングルの異なる写真を使うなどの工夫が行われている。
日本野球機構承認
©COLOPL, Inc.
「ユーザーに楽しんでもらいたいと考えていますが、つくっている自分たちが実際にプレイして盛り上がりながらつくれたことはよかったですね。技術面でも、楽しめるという面でも、今いちばん盛り上がっているところで働けるのはうれしいと思います」と大室氏が話すように、つくっている側が楽しみ、こだわりを発揮しながらよりよいコンテンツをつくって、アップデートしてきたことが長くユーザーに支持され、300万ダウンロードを達成させるコツだといえる。最後に「現実のプロ野球を楽しみながら、我々のゲームも楽しめるような企画をどんどん考えていこうと思います」と石渡氏は話してくれた。

2013シーズンを通じて「プロ野球PRIDE」は進化し続け、シーズンを重ねるごとにプロ野球と密接にリンクしながら盛り上がるコンテンツとして大きく成長していく。

(取材・文・撮影:野本幹彦)


株式会社コロプラ

代表取締役社長の馬場功淳氏が制作した「コロニーな生活」をベースに2008年10月に設立された株式会社コロプラは、世界初の位置ゲー特化型プラットフォーム「コロプラ」やスマートフォン向けカジュアルゲームブランド「Kuma the Bear」を展開。「位置ゲー」をコアコンピタンスとし、スマートフォンアプリ開発、プラットフォーム運営、位置情報活用、リアル連携サービスの4つのセグメントを柱に、「Entertainment in Real Life――エンターテインメントでネットとリアルをつなぎ、世界中の日常をより楽しく、より素晴らしく」をミッションとしている。
URL http://colopl.co.jp/



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