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タイトル画像:「こだわり」を持たないからこそできる映画づくり

映画をビジネスとして成立させるための提案


――劇場版第2作では作品名のサブタイトルに商品名を表記し、ネーミングライツにしています。そうした新しい手法を作品に取り入れるのはなぜでしょうか?
FROGMAN●実写映画の世界にいたので知っているのですが、映画の業界にはものすごくこだわりのある方が多いんです。映画はフィルムじゃなくちゃダメだ、役者はこの人じゃなきゃダメだ、映画のシナリオとはこういうものだ……。「こだわる」という言葉はもともとネガティブな意味だったんですよね。今はポジティブにも使われてますけど。でも、僕はこだわりはなくていいんじゃないかと思っているんです。様式にこだわってばかりいても、映画を作れなかったら始まらないなと。

映画を観る側、観客の人たちはフィルムで映画が撮られているかどうかなんて、今はまったくこだわっていない。だったら、ハイビジョンで撮って予算を安く抑え、余ったお金をギャランティとして分けて、みんな豊かになればいいじゃない……と。広告だって、今の時代ロケ地で撮影すれば、背景に普通に入ってきます。であれば、意図的に広告を取り込むことでお金をいただくことができます。自分たちは実在するいろいろなものをパロディ化するのが作風ですから……どうせやるなら広告もパロディにして、ビジネスとして成立させようと。そこへの提案が、「こだわり」を持つ人からすれば考えられないような、映画をFlashで作ろうよ、さらにネーミングライツやプロダクトプレイスメント(※2)にして広告を入れようよ、ということなんです。


「作品を観て、最後は元気になって劇場を出ていってほしい」と語るFROGMAN氏
出展ブースに展示されていた秘密結社鷹の爪団・総統の等身大パネルの前で。「作品を観て、最後は元気になって劇場を出ていってほしい」と語るFROGMAN氏


――そうしたお考えを持つに至った契機などはありますか?
FROGMAN●90年代の半ばごろにデジタルビデオカメラが普及して、ラース・フォン・トリアー(※3)という監督がソニーのデジタルビデオカメラで映画を撮り始めたんです。それまでの映画の常識では考えられないことでした。そうした過程を見てきて、こだわりは持たなくてもいいんじゃないかと思うようになりましたね。



記者発表会の壇上に登場した『秘密結社 鷹の爪』の人気キャラクター、レオナルド博士。同作以外の作品にも登場しており、複数の作品に同じキャラクターが登場する点も蛙男商会の作品の特徴


――今後、やってみたいこと、挑戦してみたいことは?
FROGMAN●今はFlashアニメーションというフィールドでやらせてもらっていますが、それにこだわらず実写などいろいろやっていきたいですね。いつかは、山田洋二さんみたいな作品も作りたいんですけど……でも、自分が山田洋二さんみたいなものを撮ったって、山田洋二さんには敵わないわけだし。今の自分だからできる作品は何かと考えると、Flashで、バカバカしいけど、観客のみなさんがいっしょになって笑ってもらえるものかなと思っています。

最近ダウナーな気分になって劇場を出ていく映画が多い気がするんです。犬が死んじゃったとか、誰かが死んじゃったとか。だから、今回は誰一人死なずとも感動の涙が出てきて、最後は元気になって映画館を出て行く作品をつくることがテーマにありました。今9割ぐらいまで完成に近づいてますが、相当元気が出るものになっています。自分自身も作りながら毎回に元気になっていきますね。

――ありがとうございました。


(取材・文:熊谷千春/MdN Interactive)


プロフィール画像:FROGMAN(蛙男商会代表) FROGMAN(ふろっぐまん)●蛙男商会代表
1971年東京都生まれ。映像クリエイター。映画・ドラマ制作のスタッフとしてキャリアを積む。2001年映画ロケのため島根県を訪れ、結婚を機に島根県 に移住。自身のWebサイトでFlashアニメ『菅井君と家族石』、『古墳GALのコフィー』などの作品を発表し、2006年『THE FROGMAN SHOW』(テレビ朝日系)が注目を集める。現在、『筑紫哲也NEWS23』(TBS系)内で『蛙男劇場』、『ファイテンション☆テレビ』(テレビ東京系)内で『たたかえ!土管くん』が放映中。

蛙男商会
http://www.kaeruotoko.com/
株式会社ディー・エル・イー
http://www.dle.jp/
『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE Ⅱ ~私を愛した黒烏龍茶~』
http://www.takamovie.jp/


※2:テレビ番組や映画などのコンテンツの中に商品を登場させ、消費者に訴求するプロモーション手法。劇場版第1作『秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE ~総統は二度死ぬ~』で導入された。

※3:代表作にビョークが主演し、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などがある。
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