第1回 WEBと教育「eラーニング」の未来 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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教育コンテンツの制作現場から

境祐司

教育デザイナーとして学校、企業の講座企画、講演などの活動をおこなう。著書「改訂新版 Webデザイン基礎」(技術評論社)、「XHTMLマークアップ&スタイルシート リフォームデザインガイドブック」(ソシム)など
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第1回
WEBと教育「eラーニング」の未来


現在、企業内教育においてeラーニング導入が進んでいる。すべての社員が受講する大規模なeラーニング事例も増えてきた。ブロードバンド・インターネットが急速に普及してきたことで個人向け事業の可能性も見えてきている。これからのeラーニングについて考えてみたい。


eラーニングの特性

eラーニングとは、インターネットを活用して行う教育のこと。標準化の推進活動などをおこなっている組織として日本eラーニングコンソーシアムがある【1】。

【1】日本eラーニングコンソーシアム www.elc.or.jp/ eラーニングの普及促進を目的に発足された特定非営利活動法人(略称eLC)
【1】日本eラーニングコンソーシアム www.elc.or.jp/ eラーニングの普及促進を目的に発足された特定非営利活動法人(略称eLC)


通常、教材コンテンツの配信や受講者の進捗管理などが実行できる学習システムを使用する。導入して自社で運営する場合とASPサービスを利用して運用依託する場合がある。日本最大のeラーニングシステムe-cubeが参考になる【2】。

【2】e-cube learning(イーキューブ・ラーニング) www.e-cube.goo.ne.jp/ NTTレゾナントが提供する200社、15万人を超える利用実績のある国内最大eラーニングシステム
【2】e-cube learning(イーキューブ・ラーニング) www.e-cube.goo.ne.jp/ NTTレゾナントが提供する200社、15万人を超える利用実績のある国内最大eラーニングシステム


eラーニングには「場所や時間に依存しない」「受講者のペースで進められる」、また「受講者の進捗管理や理解度の把握が容易」「教育運用の簡素化」といったメリットがある。ただし、受講者にとってはある程度の強制力が必要だ。

企業内研修のプログラムであれば強制力が働くが、個人だと自己学習能力が問われる。eラーニングで習得した人を優先して採用したいという企業があるのは、この能力を買っているからだ。つまり、それほど自己学習においてモチベーションを維持するのは難しいといえる。eラーニング導入の成功事例は社員に対する短期間教育などが多い。

eラーニングの学習プログラムを企画する際、ISD(instructional system development)
という教育システムの開発方法論が用いられるが、これはもともと米国の国防省が兵士の訓練のために開発したもの。分担の決まった兵士に操作手順や保守手順を短期間で習得させるのが目的だった。現在、企業で導入されているプログラムの多くはこのISDを進化させたものである。

手順が決まっているものや明確な答えがある学習はeラーニングに適しているので、ビジネススキルやITスキル、セールスマニュアル、工程管理、情報処理や語学の検定対策などはプログラムを比較的つくりやすい。感覚やセンスにかかわる美術的なもの、たとえば絵を描くための教育などはeラーニングでは難しい。アドバイスなど個別対応する人が必要で人的負担が非常に大きく、自動化できないプロセスが多いためなかなか利益を出せないのが現実だ。


「わかる」というレベルを体系化

eラーニングの教材設計に関しては、まず「わかる」というレベルをフォーマット化することから始まる。以下の各レベルには、受講者のトライ・アンド・エラー経験が深くかかわってくる。

(1)    概念・仕組みが理解できるレベル
(2)    教材で示されている例題を行えるレベル
(3)    わからないことに対して自分で調べることができるレベル
(4)    他人に教えることができるレベル


評価基準を設定するには受講者が学習を中断させてしまう要因についても検証する必要がある。IT学習なら以下の3つに分けられる。

(トラブル系)
ハードウエアやOSに関わること。
メモリ不足やフリーズ、接続不良など
(ヒューマンエラー系)
受講者の誤動作によって引き起されること
(読解系)
教材の内容が理解できないことで発生するもの


「わからない」「先に進めなくなった」という学習の中断にはいくつかの要因がある。[トラブル系]の場合は、使用しているマシンのOSやアプリケーションソフトのバージョンなど受講者の学習環境についての情報が必要だ。教室などで行われる集合教育では管理された設備を使うため、あまり問題にならないが、受講者ひとりで学習する環境では注意しなければならない(家庭教師のトライは家族で学ぶ形式の学習システムを提供している【3】)。

【3】トライeNAVI(トライ・イーナビ) e-navi.tv/ 家庭教師のトライが提供する「家庭で、親子で学べるインターネット学習システム」
【3】トライeNAVI(トライ・イーナビ) e-navi.tv/ 家庭教師のトライが提供する「家庭で、親子で学べるインターネット学習システム」


[ヒューマンエラー系]と[読解系]は“何を教えないか”を設定する必要がある。集合教育の場合は講師が受講者の反応を探りながら講義レベルを調整することが可能だが、遠隔教育では工夫が必要となる。たとえば、受講者の行動追跡(ビヘイビア・トラッキング)を行えば、さまざまな情報が得られる。これらの情報を活用すればスモールステップ型の「受講者にとってちょうどいい教材」の配信が実現する。


オンライン教育と次世代のプラットフォーム

eラーニングの学習コンテンツはWebブラウザ上で展開されるものが多いので、どうしてもパソコンが必要となる。勉強にはふたつのスタイルがある。ひとつは机に向かって集中する勉強、もうひとつは通勤、通学などの移動時間やちょっとした空き時間を利用した勉強である。机に向かって集中するのがパソコン学習なら、移動時間やちょっとした空き時間を活用する学習には携帯電話やPDA、iPodなどのオーディオプレーヤーなどが利用できる。すでに携帯電話向けに学習コンテンツを配信しているサービスもある。

一般の受講者が容易に所有できるのはパソコン、携帯電話、テレビ、ラジオなどである。携帯電話の多くはインターネットに接続できるのでパソコンを使った学習と連携可能だ。パソコンで学んだ内容をチェックするために、通勤時間などを利用しながら携帯電話でテストを受けることもできる。

今後はテレビ、ラジオもデジタル化されるため、今までは不可能だった新しいオンライン教育が可能になるだろう。来年にはデジタルラジオを搭載した携帯電話も登場してくるので、ラジオ講座なども様変わりする可能性がある。次のステージに移行するeラーニングビジネスには新たなチャンスがあり、ユーザーにとっても受講しやすい学習環境になっていくはずである。

本記事は『Web STRATEGY』2005年 創刊号 vol.1からの転載です
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