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XP-Penの液タブはどれほど使えるのか? 新モデル「Artist 15.6 Pro」を徹底検証

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[巷で話題の液晶タブレット・製品レビュー]
XP-Penの液タブはどれほど使えるのか? 新モデル「Artist 15.6 Pro」を徹底検証
2019年04月05日
TEXT:編集部


イラスト制作やフォトレタッチ、3Dモデリングなどのクリエイティブな作業を行う際にあると便利なのが、液晶ペンタブレット=液タブです。このジャンルは長らくワコム一強状態が続いていましたが、最近になって参入企業が相次ぎ、価格破壊が進んでグッと身近になってきました。

なかでも注目を集めているのが、高性能な液タブをリーズナブルな価格で提供しているXP-Pen社です。その最新モデル「Artist 15.6 Pro」は、フルHDの液晶や8192段階の筆圧検知、±60°の傾き検知などの機能を搭載しながら44,828円という価格を実現して発表時から大きな話題を呼んできました。一昔前なら考えられなかったような低価格ですが、実際のところ、どの程度使えるものなのでしょうか。今回、同製品を試すことができたので、そのセットアップ方法やスペックの詳細とともに気になる実力を紹介していきましょう。
XP-Pen社の新モデル「Artist 15.6 Pro」。本体にはフルHDの液晶ディスプレイが搭載されています

XP-Pen社の新モデル「Artist 15.6 Pro」。本体にはフルHDの液晶ディスプレイが搭載されています

机の上に置いて作業する際、画面に傾斜がつくよう、専用スタンドが用意されています

机の上に置いて作業する際、画面に傾斜がつくよう、専用スタンドが用意されています

製品パッケージ。白を基調にした洗練された化粧箱に収められています

製品パッケージ。白を基調にした洗練された化粧箱に収められています

本体とスタンドのほかに、接続ケーブル、ペン、クイックガイド、クリーニングクロスなどが同梱されています

本体とスタンドのほかに、接続ケーブル、ペン、クイックガイド、クリーニングクロスなどが同梱されています

本体は、幅443mm×奥行き280mm×厚み12.6mm、重量は実測で1.515kgです。液タブとしてはかなりの薄型軽量で、液晶が内蔵されていないペンタブレットに近い軽快な取り回しを実現しています。筐体は樹脂製ですが、表面がマット仕上げになっているため指紋や汚れがつきにくく、さらっとした手触りが好印象。安価でありながらチープな感じはせず、洗練された雰囲気が漂っています。
本体底面やスタンド表面にはゴム製の滑り止めがついているため、机の上に直接置いて作業する場合でもスタンドに乗せて作業する場合でも、筐体が不用意に動かないのはありがたいです。スタンド装着時の安定性もよく、画面の端の方に手のひらを置いたときでも簡単にガタついたりはしません。
本体のベゼル部分はマット仕上げになっていて高級感があり、指紋や汚れもつきにくくなっています

本体のベゼル部分はマット仕上げになっていて高級感があり、指紋や汚れもつきにくくなっています

本体底面やスタンドの表面には滑り止めのラバーがついており、作業時に筐体が動きにくくなっています

本体底面やスタンドの表面には滑り止めのラバーがついており、作業時に筐体が動きにくくなっています

実際に使い始めるには、付属のケーブルでパソコンと液タブ本体をつなぎ、ドライバをインストールする必要があります。ケーブルは片方がUSB Type-C、もう片方がUSB Type-A(赤)とUSB Type-A(黒)、HDMIコネクタのセットになっており、液タブ側にUSB Type-Cを、パソコン側には残り3つをつなげます。このうち、USB Type-A(赤)は電源供給用なので、パソコンのUSBポートが足りない場合などは、付属の延長ケーブルとACアダプタにつないで、電源コンセントに差し込んでもOKです。

ちなみに、液タブ側はケーブルが横から突き出る形になり、マウスなどを併用する場合は少しジャマに感じることも。設置場所によってはケーブルの取り回しを多少工夫する必要が出てくるかもしれません。
液タブ側はUSB Type-Cケーブルのみ接続します

液タブ側はUSB Type-Cケーブルのみ接続します

USB Type-A(赤)は付属の延長ケーブルとACアダプタにつないで電源コンセントに差し込んでもOKです

USB Type-A(赤)は付属の延長ケーブルとACアダプタにつないで電源コンセントに差し込んでもOKです

ドライバはXP-Penの公式サイトから最新版をダウンロードしてインストールします。完了したらパソコンを再起動して[コントロールパネル]→[ディスプレイ](Windowsの場合。Macは[システム環境設定]→[ディスプレイ])を開き、使用環境に合わせて設定を行います。製品には日本語を含む11カ国語に対応したクイックガイドが同梱されており、分かりやすく図解されているので、その指示にしたがえば迷いなく設定できるはずです。

なお、今回試したWindows環境ではデフォルトのままだと少しだけ画面の青みが強く感じました。このような場合はタスクトレイのドライバのアイコンをクリックして液タブの設定画面を呼び出し、[モニタ設定]で[色温度:USER]に変更するとRGB各色を細かく調整できます。
Artist 15.6 Proの設定画面。モニタやペン、エクスプレスキー、ローラーホイールの設定ができます

Artist 15.6 Proの設定画面。モニタやペン、エクスプレスキー、ローラーホイールの設定ができます

モニタ設定では、手動で微妙な色味の調整を行うことが可能です

モニタ設定では、手動で微妙な色味の調整を行うことが可能です

ひと通り設定を済ませて使い始めて、まず印象に残ったのが画面表示の鮮やかさです。色域がNTSC比で88%、sRGB比で120%もあり、原色に近い赤やエメラルドグリーンなどの色がくすんだりせず、とてもきれいに再現されます。またIPS方式パネルを採用しているため視野角も178°と広く、視線の角度を動かしても色味の変化が少ないのは評価できるポイントです。ちなみに本製品の場合は標準でアンチグレア(非光沢)フィルムが貼られているのですが、透明度が高いためか黒の締まりがよく、一般的な非光沢液晶に比べてメリハリが効いて見えるのにも好感を抱きました。

液タブの使い心地を決めるひとつに、ペン先と描画位置のズレ(視差)がありますが、本製品はその視差が小さいのも特徴です。これは、液晶と表面のガラスの隙間を少なくするフルラミネーション技術を採用しているため。実際にペンで線を引いてみると、斜めから覗き込んでもペン先と描画位置がほぼくっついて見えます。Photoshopでトレースや切り抜きなどを試してみましたが、細かい部分もずれにくく、作業しやすく感じました。
NTSC比で88%、sRGB比で120%と色域が広いのも魅力的です

NTSC比で88%、sRGB比で120%と色域が広いのも魅力的です

まったくないというわけではありませんが、他の液タブと比べても視差はかなり小さい方です

まったくないというわけではありませんが、他の液タブと比べても視差はかなり小さい方です

付属のペンは、ペン先に向けて太くなっていく独特のフォルムで、ワコムのPro Pen 2に似たデザインです。指がかかる部分はラバーっぽい質感になっており、しっかりとしたグリップ感が得られます。電磁誘導式で電池レスのため見た目よりもずっと軽く、長時間使用していても疲れにくい印象でした。

製品パッケージにはペンを収納しておけるペンホルダーも標準で同梱されています。ペンホルダーの底面には切り替え芯が8本入っているので、ペンの使用頻度が高い人も当分の間は切り替え芯を買い増しする必要に迫られることはないはずです。
製品に付属するP05Rバッテリフリーペン。電池レスなので充電も不要なのがありがたいです

製品に付属するP05Rバッテリフリーペン。電池レスなので充電も不要なのがありがたいです

ペンホルダーの底面のフタを開くと、8本の切り替え芯が収納されています

ペンホルダーの底面のフタを開くと、8本の切り替え芯が収納されています

ペンのスペックはワコムのPro Pen 2と同等で、筆圧検知は8192レベル、傾き検知は±60レベルを実現しています。ただし、ペン先が沈み込む深さが少し大きいせいか、Pro Pen 2に慣れているとはじめのうちは描き味や描き心地に若干違和感を抱きます。とくに線の太さや濃淡を描き分ける際の力の入れ具合がつかみづらく感じました。気になる場合は、ドライバでペン先の感触を調整できるので、いろいろ試して自分好みの感触を探したほうがよいかもしれません。

今回はデフォルトのまま使ってみましたが、慣れてくると線の微妙な太さや濃淡も問題なく描き分けられるようになりました。筆圧検知レベルが低いものに比べると、細い線や淡い色がとても描きやすい印象です。徐々に筆がかすれていくような表現もより自然な感じに再現することが可能でした。
筆圧や傾きを検知して線の太さや濃淡を描きわけることができます。若干慣れが必要ですが、描き味は良好です

筆圧や傾きを検知して線の太さや濃淡を描きわけることができます。若干慣れが必要ですが、描き味は良好です

ドライバでペン先の感触を変更することも可能です。自分好みの感触に調整しておくと描き心地が向上します

ドライバでペン先の感触を変更することも可能です。自分好みの感触に調整しておくと描き心地が向上します

ペンにはサイドスイッチがふたつ搭載されており、デフォルトでは上が「ペン/消しゴム」の切り替え、下が「右クリック」に割り当てられています。それぞれ割り当て機能は変更することも可能です。なお、ワコムのPro Pen 2などではペンをひっくり返すことで頭の部分を消しゴムとして使えるようになっていますが、本製品のペンには同様の機能が搭載されていません。ペン/消しゴムの切り替えはサイドスイッチを使った方が早いので実用上は問題ないのですが、消しゴム機能はあると便利なので少々残念です。

ちなみに、本体には8つのエクスプレスキーとローラーホイールが搭載されていますが、それらに割り当てられている機能もカスタマイズ可能です。ペンのサイドスイッチとエクスプレスキー、ローラーホイールを組み合わせることで、パソコンのキーボードやマウスを使わなくてもたいていの作業は行えるようになっているのはとても便利です。
ペンにはふたつのサイドスイッチが搭載されています

ペンにはふたつのサイドスイッチが搭載されています

エクスプレスキーやローラーホイールもドライバでカスタマイズ可能。ホイールは物理的に回転し、微調整しやすいです

エクスプレスキーやローラーホイールもドライバでカスタマイズ可能。ホイールは物理的に回転し、微調整しやすいです

ペンの描き味に関していえば、ワコムのCintiqシリーズの方に一日の長がありますが、本製品もきちんと自分の環境や好みに合わせて設定することで描き味を改善することは可能です。競合する「Cintiq 16」に比べると、視差の少なさや色域の広さなど、むしろ本製品の性能の方が上回っている部分も少なくありません。この価格でこれだけの性能を実現しているのは、正直驚異的にすら感じます。初めて液タブを使う人はもちろんですが、旧世代の液タブからの買い換えを考えている人や、エントリーモデルからのステップアップを考えている人にも有力な選択肢となるのではないでしょうか。
製品名:Artist 15.6 Pro
実売価格:44,828円
発売元:XP-Pen
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B07MXGZHY7/
楽天:https://item.rakuten.co.jp/xp-pen/jpar156pro/
PCワンズ:https://www.1-s.jp/products/detail/197119
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