モバイル向けFlash Playerの敗走
モバイル向けFlash Playerの敗走
2011年11月14日TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
Adobe Systemsが、モバイル向けFlash Playerの開発を完全にお蔵入りした。
インターネット最大のプラットフォームはWebだ。そのWebはおもにHTMLによってプログラムされた世界である。Web上、すなわちブラウザを使って表示されるコンテンツやアプリケーションを、より動的にする(リッチアプリケーション化する)ための方法にはAdobeのFlash Playerに代表されるプラグインと、JavaScriptのようなWebの標準技術を用いる手法があった。後者はAjaxと呼ばれ、GmailやGoogle Mapsの登場とともに、Webのリッチアプリケーション化の最有力として一世を風靡すると同時に、Flash Playerは徐々にWeb上でのプレゼンスを失いはじめることになった。
さらに、AppleがiPhoneへのFlash Player搭載を拒否したことによって、モバイルインターネットにおいては完全に行き場を失うことになった。AndroidはFlashを受け入れたが、先行して世界市場に大きなシェアを持つiPhone、そして急激に成長するタブレット市場を制圧しているiPadではFlashを使ったアプリケーションが動かないことがわかっている以上、開発者たちがFlashを忌避するのは当然のことだ。
同時にMacの標準ブラウザであるSafariからFlash Playerを閉め出したこともあり、PC版も含めて近い将来完全にFlashは消え去ることだろう。PC上の90%以上のブラウザにはFlash Playerが標準搭載されており、これまではFlash PlayerがPCにおけるWebのリッチアプリケーションプラットフォームとして君臨していたわけだが、それももう終焉間近だ。
現時点での状況をいえば、PCにおいてはAjaxが実現してきたリッチアプリケーションの技術を拡大しつつ、誰にでも用いられやすい仕様がHTML5としてまとめられつつあり、これが次世代のインターネットのプラットフォームになる可能性が高い。モバイルにおいては、モバイルブラウザが貧弱であったこと、またiPhoneによるApp Storeの普及によりインストール形式のアプリケーションが全盛となり、これがしばらくHTML5のプラットフォーム化を阻むことになるだろう。しかし、やがてはPC同様、HTML5がモバイルインターネットをもWeb化していくはずだ。
●参考:http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/9659/
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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