「たくさんの似顔絵が楽しい『KITSUNE MAISON』のジャケット」

「たくさんの似顔絵が楽しい『KITSUNE MAISON』のジャケット」
2008年11月25日
TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)
最近のデザイン傾向として、だたカッコイイだけとか、面白ければいいといったデザインは減ってきたようだ。デザイナーの自己満足だけでは、モノが売れるようなことはないし、共感されることもない。いい意味でデザインの本質がより問われるようになってきている。
レコードショップに行って、昔のようにジャケットを見て心をときめかせる機会もずいぶんと減ってしまった。極論を言ってしまえば、「ケツメイシ」の一連のアルバムのように、ミュージシャンの名前と写真がある程度のデザインクオリティでレイアウトされていれば、CDジャケットのデザインはそれで十分なのかもしれない。「音楽はやはり音が勝負。ジャケットデザインなんて普通でいいんですよ。凝ったデザインをしたからといってレコードが売れるわけではないんですから」といった声が聞こえてくるような気もする。
しかし、それでも僕たちはレコードやCDのジャケットには、なにかしらのデザイン的な魅力を求めてしまう。音楽と同じように、あるいは音楽とリンクするように、ジャケットのデザインは僕たちを楽しく、ワクワクさせてくれるはずだ。
CDジャケットがすべて「ケツメイシ」のようになることもけっしてないだろう。そういった視点でいえば一連の彼らのジャケットはとてもよくデザインされている。彼らのジャケットだからこそ、あのデザインなのである。コンセプシャルに私たちに「ケツメイシ」の世界観を伝えてくれるすばらしいジャケットデザインではないか。少しオシャレをきどったようなデザインのCDジャケットがいかに中途半端にみえてしまうことか。
同じように、ストーリー性があって気になるジャケットにフランスのクリエイティブチームKITSUNEによるコンピレーションアルバム『KITSUNE MAISON』シリーズがある。KITSUNEはジルダとマサヤ、そしてロンドンを拠点としているグラフィックチーム“abake”(アバケ──メンバーはマキ、カイサ、パトリック、ベンジャミンからなる6人のクリエイティブチーム)で、音楽レーベルやDJとしての活動のほかファッションも展開しており、KISUNEブランドは世界各地で人気があり、パリにはオンリーショップもある。
『KITSUNE MAISON』シリーズは、毎回KITSUNEの出会った人たち、友人などの似顔絵がジャケットデザインになっているプロジェクトで、グラフィックを担当しているのはアバケのチームである。当初はイベントのフライヤーのために6名の顔からはじまったこのプロジェクトは、現在ではおそらく500人以上(数えてみていないので憶測に過ぎない)になり、いまではKITSUNEのブランドイメージビジュアルにもなっている。
いつもアルバムが出るたびに、この500名近い顔の中から、今回はどこにどんな人の顔があるのだろうか? などと、ついつい『ウォーリーを探せ』のように探してしまう。絵のタッチも微妙に変化してきているようだ。KITSUNEを取り囲むたくさんの友人、知人たちのフェイスによって、つくりあげられているアルバムジャケットのデザインには、どこか愛情を感じてしまう。プロジェクトとしての面白さもある。デザイナーの自己満足の「かっこよさ」から、こういったジャケットデザインが生まれてくることはないだろう。
デザインの本質はけっして変わることはない。目先のテクニックやみせかけだけでは誰もごまかされなくってきている。レコードジャケットにも同じことがいえるのではないだろうか。

左:発売されたばかりのKITSUNE MAISON COMPILATION 6 CD
右:『KITSUNE MAISON』12" Vinyl る

[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/



