インタラクティブ広告年鑑ほか2冊
周りを驚かせるようなカッコいいアイデアやデザインは、一朝一夕で生まれるものではありません。情報や技術を取り入れつつ、日々感性を磨きながら、実践(現場)で鍛えていく。インプットとアウトプットのサイクルが大切。多忙なデザイナーのインプットを助けるべく、MdN Interactive編集部がオススメ本を紹介していくコーナーです。
いま、Web広告の「最前線」を一望する書
『インタラクティブ広告年鑑 —JAPAN INTERACTIVE ADVERTISING ANNUAL -09—』
tokyo.interactive.ad.awards.jp/インンプレスジャパン9,000円+税
グラフィックデザインの世界に『ADC年鑑』があるように、Web広告にも当然、本書のような年鑑(アニュアル)が出るようになった。お代は高い代物だが、そのボリューム320ページ。2008年に行われた「第6回東京インタラクティブ・アド・アワード(TIAA)」審査委員長・大岩直人氏の序文にはじまり、各賞受賞および入選作品の紹介、合間に受賞者のトークや『広告批評』編集長などによる寄稿、ブロガーやクライアント、ディレクターによる座談会が挿入された構成は飽きさせない。また、第1回から第5回までのTIAA受賞作品のアーカイブも掲載されており、これ1冊で「いまのWeb広告とは?」という問いに少なからず答えてくれるビジュアルブックとなっている。海外に向けたアプローチとして全テキスト英文並記。日本の携帯文化からWebコンテンツのコンテクストまで、幅広く重厚にメッセージする一冊となっていよう。インタラクティブ業界に憧れている人から現在身を置いている諸氏にも、もちろんクリエイティブ座右の銘としてくだされ。しかしながら……コレってWebで出来ることなんですよね。無理して長大・豪華な造本にしなくてもいいし、インタラクティブならそのままディスプレイで体験したほうがいい。クライアント様の都合もあるでしょう。紙文化としての年鑑の意義もある。でも僕は、いずれWeb版への展開を期待したく思うのだ。
日本から問う、これからの「デザインの在り方」
『クォーテーション No.2』
Gradation Blue/ビー・エヌ・エヌ新社580円+税
わたしたち「MdN Interactive」のコントリビュート・エディター/寄稿者として名を連ねている、クリエイティブディレクター・蜂賀亨氏が編集(Gradation Blue名義)を勤める新デザイン情報誌、第2号が刊行。今回はロンドンに目を向け、グラフィック、フッション、アート、ギャラリー、メディアなど現在の最新事情を特集。また、ラフ・シモンズのビジュアルイメージを担うピーター・デ・ポッターの密着取材をはじめ、豊富な海外コラムやインタビューを掲載している。その心意気、かつて『+81』時代における蜂賀氏の“編集魂”を彷彿……というか、はるか00年代に更新しているイメージ。決してオーバーグラウンドでのクリエイションでなくとも、たとえばアムステルダムの片隅の書店『Athenaeum』(慎ましい佇まいだがセレクト抜群!)に置かれて正当な造りだ。作り手に感じる“デザインへの希求”が、なんとも好感の新雑誌である。僕はこの『クォーテーション』の進もうとしている道を(まだ2号だけれどもね)諸手を上げて支持したい。ハンパない「ユルさ」で描かれる、デザイン事務所の日常
『誰も寝てはならぬ 10巻』
サラ イネス/講談社 ワイドKCモーニング533円+税
たまには漫画の紹介でも……と思って、一番に思いついたのが本書シリーズ。週刊『モーニング』連載だが、おおまかな舞台となるのが、グラフィックデザイン事務所。とりたてて、多くの皆さんが知りたいようなデザイン・スキルとは無縁で、その独特のユルさが虜にさせる毎号6ページ作だ。屋号「オフィス寺」の社長・ゴロちゃん(モテルゆえに離婚歴3回)をはじめ、所属イラストレーターのハルキちゃん(ゴロちゃんと幼なじみでバツイチ)、二人と同じ大学だったヤーマダ君(重機マニアのイラスト描き。絵本で受賞歴もあるが、趣味は終日野球)。そのほか、従業員のマキオちゃん(根暗でバス・フェチ)や女性スタッフのねねちゃん&巴ちゃん姉妹などなど、オフィス寺に集う人々は一癖も二癖もありありだが、そこは著者独特、湯煙がゆらり立つ温泉なみのグルーヴで日常の細部を細かすぎるほど表出させる。デザイン事務所(特に個人経営で社員10人以内)に勤めたことがある人ならば、仕事の案件どーのこーのはさて置いておいて、ああ、この感じわかるわ……と納得の漫画だろう。オフィス寺の面々を取り巻く、さまざまなキャラ(お天気お姉さんとか元過激派ジイさんとか)との絶妙の掛け合いも見物。最近10巻が出たばかりだが、この際一気にオトナ買いせい! ついでに、同著者の前作『大阪豆ゴハン』も読んだほうがいい部類の作品。何度も書くが、そのユルさ、ハンパなくリアルっす。
(文・増渕俊之)
(更新日:2009年2月13日)




