「Nexus OneにおけるGoogleの深遠な戦略──前編」



「Nexus OneにおけるGoogleの深遠な戦略──前編」

2010年1月12日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)


オンライン直販されるGoogleブランドのスマートフォン

Googleが米国時間2010年1月5日に発表したスマートフォン「Nexus One」は、Googleにとっては初めての自社ブランドによる一般消費者向けハードウェア製品だ。しかも、オンライン(http://www.google.com/phone/)で消費者に直販するという。

日本のケータイあるいは過去のスマートフォンと、iPhoneを始めとする新世代スマートフォン(もちろんNexus Oneを含む)の決定的な違いは、前者がWebも使える携帯電話であるのに対して、後者は通話もできるWeb閲覧端末である点だ。つまり、Webを使うことを大前提・最重要機能として設計されている。

Nexus Oneはハードウェアは台湾のHTC製、OSはもちろんGoogleのフリーOSであるAndroidが搭載されている。物理的なキーボードはなく、iPhone同様完全にタッチスクリーンによる操作で、テキストの入力方法はソフトウェアキーボードのみになる(音声入力もフルサポート)。




Nexus One Phone - Web meets phone.

Nexus Oneを紹介する米Googleのページ。画面上でNexus Oneの操作のシミュレーションが行える



SIMロックフリーの最新Android搭載携帯電話

SIMロックフリーとは、通信キャリアの縛りがない状態の携帯電話のことだ。金額的にはキャリア縛り(特定のキャリアしか使えない)のあるほうが割安にはなるが、国や地域の違いを考慮せずにすむのは海外出張が多いビジネスマンにとってはありがたいところだろう。消費者にとってどのキャリアを使うかではなく、どのケータイを使うかが大事なことであり、魅力的なハードウェアを使うためにいちいちキャリアを変えなくてすむというのはいいことだ。



Nexus Oneの意義

GoogleはWebオリエンテッド、つまりハードウェアでもなくインストール型のソフトウェアでもなく、あくまでWeb上のサービスに特化した企業だ。そのGoogleがリリースしたNexus Oneにはどのような意味があるのか。MicrosoftがiPhone対抗のスマートフォンをリリースするのとはわけが違う。

非常に逆説的な物言いだが、実はNexus Oneこそ、GoogleがすべてをWebに置き換える作戦を実行させるためのトロイの木馬なのである。

この深遠な戦略については、次回に詳しく説明する。



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)などがある。
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