「Siri+iPadで実現する!? ナレッジ・ナビゲーターの世界」



「Siri+iPadで実現する!? ナレッジ・ナビゲーターの世界」(1/2ページ)
2010年4月2日

TEXT:大谷和利
(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)

アメリカで4月3日発売のiPadだが、彼の地での人気が高まれば、アップル社はそちらへの供給を優先して、一応4月末とされている日本での発売時期を平気で先送りするのではないか? ふと、そんな気もしてきた今日この頃、この新プラットフォームでぜひ実現してほしい技術について考えてみた。


あるようでないiPhoneのキラーアプリ

iPhoneが登場して1年後にアプリ開発が可能になったとき、そのキラーアプリは何になるのかという議論が一部メディアを賑わせた。

しかし、それから2年近くが経過し、アプリ数が推定15万本を超えるようになってみると、結局、ほとんどのユーザーがとりあえずインストールするような人気のアプリはあっても、それらは、パーソナルコンピュータでいうところのいわゆるキラーアプリとは趣が異なるように思える。

つまり、あるアプリのためにiPhoneを購入したというより、買ってみたら用途に合うアプリに出会ったというほうが実態に近く、しかも本当に気に入って使い続けているアプリは、人それぞれに違うと考えられるのだ。

その結果、ごく少数のキラーアプリではなく、玉石混淆であっても想像を超えるほど種類が多く、また現在も日々数百のオーダーで追加されるアプリが、総体としてiPhoneの魅力を高めるような状況が生まれた。

その意味では、ユーザーからはなかなか見えない部分ではあるが、さまざまなアプリの出現を促すOSの基本能力や開発環境の充実度が、新世代スマートフォンやタブレットマシンにとって、キラーアプリに代わる重要なポイントになってきているといえる。

たとえば、鳴り物入りで登場したドコモの「Xperia」は、タッチパネル自体はマルチタッチ対応だが、現状ではベースOSがAndroid 1.6で、「Nexus One」や「HTC Desire」のように最新の2.1ではないため、マルチタッチ機能を使うことができない。






NTTドコモの「Xperia」の紹介ページ
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/smart_phone/so01b/index.html





「HTC Desire」はソフトバンクモバイルから提供される
http://mb.softbank.jp/mb/product/X/09wi/#x06ht


また、アプリケーションの販売サイトも、本家のAndroidマーケットの他にドコモマーケット(当初はAndroidマーケットにリンクを貼る案内サイトの体裁だが、通話料金との連結決済が可能になった時点で独立したダウンロードサービスへと移行する)も立ち上がるなど、一枚岩とは言えない状況にある。

さらに、Androidにおいてグーグルはハードウェアに関する責任を負わないという基本姿勢を持つため、iPhoneやiPadのようにハードから開発ツール、アプリ販売サービスまでを一貫して支えるバックボーンがないことに懸念を表明する開発者も出てきている。

もちろん、プラットフォームに関するすべてを一元管理するというアップル社のやり方にもそれなりの弊害はあり、特にアプリの審査体制への不満から開発を断念するソフトハウスもないわけではない。しかし、Android市場でも、大手ゲームデベロッパーのゲームロフト社のように、Android市場では採算がとれずに、早々と撤退を表明してiPhone/iPadアプリに専念するところも現れている。それはまさに、iPhoneのほうが市場として確立していることの証だと言えよう。

したがって、少なくともここしばらくはEvernoteのような一部のアプリやサービスを除いては、デベロッパーの指向性やポリシー、ビジネスモデルなどに応じて、どちらかのプラットフォームに特化したアプリ開発を進めるところが多くなりそうだ。



タッチ+ボイスコマンドが現実化

さて、そこでiPadにおけるキラーアプリならぬキラー技術は何になるかを考えてみた。この連載では、以前に、iPhoneのボイスコマンド入力対応によって、かつてアップル社が未来の情報環境としてビジョンビデオを制作した「ナレッジ・ナビゲーター」のための要素技術が出そろったことに触れたことがあったが、その先が見え始めたのだ。

現状のiPhoneのボイスコマンドは、特に日本語だとうまく機能しているとは言い難い。しかし、Androidケータイでも音声認識に力を入れているように、近い将来には声による入力がタッチ操作と並んで、電子デバイスの重要な操作方法のひとつとなるはずだ。

その観点から注目したいのが、現在、アメリカ国内でのみサービス提供されているiPhone向けの音声検索アプリ+サービスの「Siri」である。

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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)。


れたことがあったが、その先が見え始めたのだ。
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