「iPad対応のGmailを出したGoogleの思惑──前編」



「iPad対応のGmailを出したGoogleの思惑──前編」

2010年4月5日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Googleが「iPad」の画面サイズに最適化されたGmailを発表した。




iPadに適した「Gmail for mobile」の画面(Googleの公式ブログより)
http://googlemobile.blogspot.com/2010/04/google-services-on-ipad-and-tablet.html


iPadは世界で初めて本格的な成功を収めるであろうタブレット型のモバイルデバイスとして世界中で注目されている。Googleがいち早くWebアプリのiPad最適化を進めることで、この製品が電子ブックリーダーというよりも、新しいカテゴリーのコンピュータであることを、改めて一般消費者に印象づけることになるだろう。

iPadは、指で触れることを前提にしたコンピュータだ。入力デバイスとしてハードウェアキーボードでもスタイラスでもなく、仮想のソフトウェアキーボードを指で直接操作する。同時に、場所を選ばずにインターネットに接続することを前提としたコンピュータでもある。つまり、iPadは、それを操作する、という観点から見ればこれまでにない特殊なコンピュータなのである。

そして、GoogleはHTMLとJavaScriptという、基本的なWebのフォーマットにこだわり、インストール型のアプリではなく、あくまでWebアプリによるコンピューティングを理想とする企業だ。簡単にいえば、クラウドコンピューティングこそがGoogleの目指す領域である。

GoogleはPCにおけるインターネットのトラフィックを手中に収めることに成功した。しかし、いまやコンピューティングの主戦場はPCからモバイルに移り、iPhoneとiPadという、Apple独自のプラットフォームが世界を席巻しつつある。

Appleは「App Store」という、iPhoneおよびiPadの(クローズドな)プラットフォームでのインストール型アプリをドル箱にしており、それはGoogleの思惑とは違う。

Googleとしては、iPadとiPhoneという、新しいモバイルコンピューティングの場も、PC同様にWebアプリ隆盛の世界に変えていかねばならない。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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