Palmを買収したHPの秘策は?

Palmを買収したHPの秘策は?

2010年5月10日

TEXT:小川 浩
(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

米Palm社(以下、Palm)は、PDA市場、そしてスマートフォン市場のパイオニア企業といっていい。IT業界でもない限り、日本国内の一般消費者のほとんどはPalmの名前さえしらないかもしれない。しかし、僕たちベンチャー起業家の中ではやはり特別な存在なのである。



米Palm社のWebサイト(US)(http://www.palm.com/us)


そのPalmは、2010年4月28日、米ヒューレッドパッカード社(以下、HP)に買収される発表がなされた。買収額は12億ドル。買収自体はPalmの各国の株主の承認を得られる7月末までには完了する予定という。

HPは、モバイルコンピューティング、特にiPhoneやBlackberry、Android携帯らが席巻するスマートフォン市場と、iPadが切り開きつつある家庭用および業務用のタッチパネルコンピューティングの双方での出遅れを懸念しており、今回の買収で、優秀な技術者チームとWebOS(Palmが最後にはなったあだ花ともいえる、非常に優れたマルチタスクの軽量OS)を得ることで、仕切り直しをしたいところだろう。

「Palm」というブランドが残るかどうかはいまのところはっきりしないが、自前のOSを保有しない限り、次世代のコンピューティング事業で勝ち抜いていくことはできない、とHPが認識していることだけは確かだ。僕は「CLIE」というPalmクローンをつくっていたことでPalmと関係も深いソニー(株)がPalmを買収してくれることを望んでいたので、今回のディールについては、やや残念な思いを拭いきれずにいる。


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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。

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