Googleを旧世代化するFacebook、2社の直接対決の行方(前編)



Googleを旧世代化するFacebook、2社の直接対決の行方(前編)
2010年11月2日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)


本コラムで何度か触れていることだが、世界最強のインターネット企業である米Google社は、現在ふたつの強力なライバルとの直接競合にさらされている。それは米Apple社と米Facebook社の2社だ。前者はモバイルインターネットとデジタルコンテンツ配信事業における競合であり、後者は加速するソーシャルメディア市場における競合である。

米Apple社とは、実のところHTML5の業界標準化への動きや、Webブラウザのレンダリングエンジンである「Webkit」の採用など、歩調をひとつにするところも多く、巷で言われるほどの緊張状態にはないと思われるが、米Facebook社とはまさしく一触即発の状態にあると言ってよい。

米Google社がインターネット上で強大な影響力を持ち得ている最大の理由は、検索エンジンがネットのトラフィックの発生源、すなわちトラフィックエンジンになっているからであるが、いまやソーシャルメディアは検索エンジンのそれを上回っている。

ネットユーザーはなにか知りたいことがあれば検索する。つまり検索自体、クリエイティブな行為である。しかし、いまや多くのネットユーザーは、自分の知人や友人が興味を持った情報(コンテンツの中の短縮URLとして存在)にアクセスすることを好む。検索結果のリストから自分の興味に即した情報を選ぶより、友人や知人の推奨の情報のほうが信頼できるし考える必要がないからだ。

米Google社の検索エンジンは、WebサイトあるいはWebページのリンク構造(ハイパーリンク)を意味付けることによって開発されたアルゴリズムを採用している。これに対してFacebookは人間関係あるいは興味のあり方を構造化することによって(ソーシャルグラフ)、情報の発見を手助けする。

いわばFacebookは、次世代の検索エンジンとしてGoogleのコンセプトを旧世代化してしまう可能性があるのだ。

米Google社自身もそれに気がついており、自社のアルゴリズムの中にソーシャル的な要素を取り入れる努力は続けているし、Google Waveなどのコラボレーションプラットフォームの開発にもチャレンジしてきた。しかし、そのGoogle Waveの開発は頓挫し、かつその開発リーダー自身を米Faceobook社に引き抜かれるなどの失態を演じている。

両者の直接対決は、2011年のネット業界の台風の目になることはまちがいない。(後編に続く)







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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。

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