Googleを旧世代化するFacebook、2社の直接対決の行方(後編)



Googleを旧世代化するFacebook、2社の直接対決の行方(後編)
2010年11月9日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

※本記事は「Googleを旧世代化するFacebook、2社の直接対決の行方(前編)」の続きになります。前編をお読みでない方は前編からお読みください。

米Google社と米Facebook社の直接対決は、今後さまざまな形で露見することになるが、その最大の焦点はインターネットにおけるトラフィックエンジンとして、どちらがより影響力を持てるか、ということに他ならない。


トラフィックエンジンとは、ユーザーが意識するかしないかは別として、Web上でなんらかの情報(つまりはWebページ)を閲覧する行為を誘発する起点となるサービスを意味する。

インターネットの黎明期にあって、このトラフィックエンジンはオフライン(本や雑誌、テレビなど)から得られるURLを直接Webブラウザに書き込むことであったし、それ以降はたどりついたWebサイトに書かれたリンク(相互リンクなど)をクリックすることによって次のWebサイトを開いた。いわゆる“ネットサーフィン”だ。

それがYahoo!の出現により、インターネットをより効率的に使うためのリンク集としてのポータルサイトが一般化した。しかし、大量に増える一方のWebサイトにポータルサイトによる(当時で言えば人間の手による)仕分けが間に合わなくなり、高度なアルゴリズムを持つプログラムによる検索エンジンの必要性が顕在化した。そのニーズに応えたのがGoogleだった。Googleはポータルをトラフィックエンジンとしては時代遅れにした。ちなみに、創業間もないGoogleのワーキングキャピタル(操業資金)を支えたのがYahoo!であったことは皮肉なことだ。

そしていま、Facebookを始めとする新世代ソーシャルメディアが台頭し、Googleからトラフィックエンジンの王者の座を奪おうとしている。インターネットサービスの歴史は、そのままトラフィックエンジンのシェア争いであると言ってよい。

Googleはそもそも純粋なトラフィックエンジンである。しかしFacebookはもともといわゆる“デスティネーションサイト”であり、ユーザーをできるだけサイト内に滞留させることを目的としているサイトだ。滞在時間を長くすることによって広告価値を得ている。しかし、Googleはトラフィックを生む、ユーザーを別のサイトに送ること(送客)で広告価値を得ている。なお、この点で、TwitterはむしろGoogle寄りのサービスであるということができる。Twitterもまた、自社サイトにユーザーを滞留させることをあまり考えおらず、送客トラフィックによって企業価値を高めてきた企業だ。彼らは今のところGoogleのような送客トラフィックをマネタイズする方法を見つけておらず、最近ではFacebookに酷似したサービスへと変質しつつある。

米Google社もまた、Bloggers.comやYouTubeの買収や、Gmailを始めとするGoogle Appsなどの滞留時間の長い自社サービスを徐々に持ち始めた。トラフィックエンジンであると同時にデスティネーションサイトであることを求めたからだが、Facebookもまたデスティネーションサイトであるだけでなくトラフィックエンジンであろうともし始めた。

デスティネーションサイトは、その性格からユーザーを囲い込まざるを得ない。ユニークアカウントを与え、会員にしなくてはならないのだ。会員制であるということはクローズドなサービスであるということであり、Googleはその中を検索することができない。Googleにとってデスティネーションサイトはあってもかまわないが、あまりにも大きくなりすぎると、その中を検索できなくなる。つまりFacebookはそういう存在だ。

だからこそ、方向性の異なる二つの企業が、互いの存在意義を賭けて激突しようとしているのである。








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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。

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