Apple TVから見えてくるアップル製品の“次の一手”(前編)

Apple TVから見えてくるアップル製品の“次の一手”(前編)
2010年11月15日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

アップルジャパン(株)がついに映画コンテンツの日本国内販売およびレンタル事業に着手した。

新旧の邦画・洋画を約1000タイトル以上のコンテンツを視聴できる。ただし音楽タイトルと同様にソニー(株)系のコンテンツはなく、ソニー・ピクチャーズの映画タイトルはみることができない。国内の宅配レンタルサービスと比べて、まだまだ貧弱な状態であることは否めない。

しかし、筆者はスタートしたばかりのサービスの欠点を評価の基準にすることにはまったく意義を感じない。特に米Apple社はベータ的なサービスやプロダクトをまずリリースし、その後時間をかけて仕上げてくることに定評がある。やがてはコンテンツも徐々に増え、ホームシアターのメインコンテンツサプライヤーとしての地位を確立してくるだろう。

むしろ注目するべきは、米Apple社がクラウドコンピューティング時代のAV家電として、「Apple TV」を再リリースしたことだ。

新しいApple TVは、高さ23mm、幅98mm、奥行が98mmと非常に小型化された。重量も272gとiPhoneとあまりかわらない。

この大幅な小型化の成功は、ハードディスクやSSDを搭載せず、本体にまったくストレージ機能を持たせなかったことによる。コンテンツはMacやPC、あるいはiPhoneやiPad、iPod touchなどのiOS搭載デバイスに保存する。あるいはAppleのクラウドサービスから直接ストリーミングするという仕掛けだ。

米Apple社は旧世代あるいは現行世代のテクノロジーが古びてきた、と考えたとき、躊躇なく間引き、次世代のテクノロジーに移行する(同時にユーザーに移行を強制する)メーカーだ。

これまでにもフロッピーディスクや有線LAN、(携帯端末における)物理キーボードなどを切り捨ててきた。今回彼らが切り捨てることを決意したのはCD/DVDなどの光学ディスク、およびハードディスク(HDD)だ。

MacBook Airがフラッシュストレージのみの仕様になったが、来年にはすべてのノートPCがそれにならうだろう。というより、ほかのノートPCも光学ディスクを搭載せずオプションとするようになり、やがてMacBookはボディサイズとCPUの違いだけになると思われる。

MacBook Airは人間がタイピングし、作業や情報の閲覧をみるために必要な最小限のサイズがある(それ以上に小さくすると用をなさない)、だからHDDからフラッシュストレージに切り替えたおかげで得たスペースを、切り捨ててボディサイズを小さくする代わりにバッテリーを積み込んで、より長い継続利用時間を手に入れた。

その点、Apple TVはバッテリーを必要としないうえに、ボディサイズを小さくすることになんの制約もない(後編に続く)。







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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。




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