Facebook Messagesの新バージョンがGoogleとの勢力争いに与える影響

Facebook Messagesの新バージョンがGoogleとの勢力争いに与える影響
2010年12月2日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

米Facebook社と米Google社がネット業界のイニシアティブを争っていることについては、これまでの僕のコラムや著書で何度も繰り返し説明してきた。米Google社が明らかに米Facebook社に対して優位性を保っている領域は、おもにGmailによるオープンで非対称なメッセージングのユーザー数と、Google Mapsによる位置情報の把握だと考える。このふたつはリアルとWebの境目を超えるために重要なシステムである(最近流行の業界用語でいうと「O2O」(Online to Offline or Offline to Online))。

Facebookはもうじきユーザー数が6億人に達しようとしており、サービスの閉鎖性と規模の大きさによって、米Google社の検索を中心としたサービスを無力化しつつある。Facebookの中のデータはGoogleでは検索できないし、Facebookのユーザーは検索よりも日々プッシュされてくる情報によって世間の動きを把握することを好み始めているからだ。

そのため、米Facebook社としては米Google社の優位性をひとつひとつ潰していくことによってさらなる勢力を伸ばしていくのだ。前置きが長くなったが、それが先日発表されたメッセージングシステムである「Facebook Messages」の新版だ。

この新機能はおおよそ以下のようである。

・ほかのメッセージングサービスとの統合
Facebook内のサービスにとどまらず、ふつうのメールやインスタントメッセンジャー、SMSなどとの互換がある。「@facebook.com」のメールアドレスを利用できる。

・シンプルかつカジュアルなサービス
TwitterのDMのように、簡潔で使いやすい。通常のメールのようなグリーティング不要にする。


Facebook Messagesの機能自体はそれほど特筆するべきほどのものではないが、Facebookユーザーがふだん使っているツールから、非Facebookユーザーに対してメールやチャットを直接行うことができるというのは、Facebookにログインし続ける大きな動機になる。
さらに、一昔前のHotmailのように、Facebookユーザーが非ユーザーに対してFacebookドメインのメールを送ることで、自然に非ユーザーを勧誘することになるので大きな広告効果もある。

Facebookが意図的にGoogle対抗をしているわけではないが、結果として彼らの直接競合エリアは広がり、勢力争いは加速するばかりだ。


Facebook Messages



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。




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