震災から学ぶソーシャルメディアの役割(前編)

震災から学ぶソーシャルメディアの役割(前編) 2011年3月22日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

Ustreamは日本国内であまり活気が見られなかったが、最近は東北地方太平洋沖地震の様子を具体的に伝えるツールとして、Twitterとともにふたたび勢いを取り戻しつつあるようだ。

世界的に見ると、Ustreamはチュニジアやエジプトの民主化運動が全国に広まっていく模様を伝達する最良の手段として巧みに活用されており、2011年に入っても順調な成長を続けていた。筆者は自著でYouTubeが動画版ブログならば、Ustreamは動画版Twitterであると表現している。データのアーカイブではなく、ストリームのツールであるという点が、Twitter・Ustreamともに大きな特徴だ。Twitterが事故や災害、政変などの世界的なニュースが発生するたびにデジタル瓦版として成長してきたように、そして、そのもっとも有効なガジェットとしてのスマートフォンの普及が成長を後押ししてきたように、Ustreamも同じ道をたどっている。

TwitterとUstreamの成長は、実際にはあらゆるソーシャルメディアの役割を明確化し、全体を刺激していることが興味深い。ブログは人々の想いや主義主張をコンパクトにまとめて記録に残す最良のメディアだ。また、数多くの動画コンテンツは最終的にYouTubeにアーカイブされ、Googleの手によってたやすく検索されるように整理されていく。そして、実名で多くの人をつなぐFacebookがそれらのコンテンツの共有と再利用を促している。事件発生時に威力を発揮するのはTwitterとUstreamだが、伝達された情報のさらなるネットワーク化や検証へとつないでいくのは、それ以外のソーシャルメディアたちだ。

ソーシャルメディアは単独で用いられるのではなく、おおまかな役割の相違があることによって、全体が大きなネットワークとして機能するようになる。筆者はこの状態をソーシャルストリームと呼んでいる。データが複雑な海流のごとく、複数のソーシャルメディア間を流れていく様子を表現した言葉だ。TwitterやUstreamだけでは、データは津波のように私たちを飲み込んだあとに消えていくが、FacebookやYouTube、ブログなどがデータの有効利用をうまく担う。

今後、ソーシャルメディアの有効活用をマーケティング視点で語るうえで、このソーシャルメディアミックスの配分をどう考えるかが要諦になるだろうと思われる。どのようにするかで、データの伝搬のさせ方が決まってくるからだ。



USTREAM




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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