震災から学ぶソーシャルメディアの役割(後編)

震災から学ぶソーシャルメディアの役割(後編) 2011年3月29日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

※本記事は「震災から学ぶソーシャルメディアの役割(前編)」のつづきになります。前編をお読みでない方は、前編からお読みください。

Twitterは、社会的な事件や大事故などの発生とともに口コミ元として会員数を増やしてきたことでもよく知られている。米国のハドソン川に飛行機が不時着した際に、災害を世界に伝える写真の最初の1枚が公開されたのは、iPhoneによって撮影されアップロードされたTwitter経由のものだった。

実際、 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震にあっても、多くの情報がTwitterを経由して伝達された。マグニチュード9.0という、世界でも最大級(過去計測された地震では世界第4位の規模とされている)の地震は、日本国内では少なくとも過去400年間に起きた震災の中でももっとも大きいという。都内にあっても、携帯電話はほとんどつながらなくなり、電力不足によって交通手段にも大きな麻痺が起きた。高層マンションにあっては電気が止まれば水道も使えない場合が多く、直接的な被害が少ない東京であってさえ、とにかく数週間から数カ月にわたって、さまざまな不都合や不自由に直面することになる。天災とはまことに恐ろしい。

TwitterとUstreamの成長は、実際にはあらゆるソーシャルメディアの役割を明確化し、全体を刺激していることが興味深い。ブログは人々の想いや主義主張をコンパクトにまとめて記録に残す最良のメディアだ。また、数多くの動画コンテンツは最終的にYouTubeにアーカイブされ、Googleの手によってたやすく検索されるように整理されていく。そして、実名で多くの人をつなぐFacebookがそれらのコンテンツの共有と再利用を促している。事件発生時に威力を発揮するのはTwitterとUstreamだが、伝達された情報のさらなるネットワーク化や検証へとつないでいくのは、それ以外のソーシャルメディアたちだ。

東北地方太平洋沖地震では、Twitter上に拡散希望RT、といった表現が散見されたが、情報を広く伝えるという目的に最も適したツールがTwitterであることはまちがいない。ただし、デマが多く広がるときには、信憑性をじっくり考えるまえに発作的にRTしてしまうユーザーも多く見られる。よくも悪くもTwitterの拡散メディアという性質を示しているといえるだろう。

その点、Facebookは、ニュースフィードに流れる情報は、必ずしもリアルタイムに更新されたらすぐ表示される時系列順のタイムラインとは異なり、見ているユーザーの属性やソーシャルグラフに応じたコンテンツの見せ方をしている。なにかしらのアルゴリズムを用いていることはまちがいないが(たとえばユーザーの使用言語に合わせて表示するコンテンツを選択している)、いずれにしてもFacebookは震災のような大事件によって発生するパニックに対する耐性があり、受け取る情報の質をフィルタリングする機能が備わっている。だから、事件発生直後はTwitterにユーザーの関心は集まり、今度は徐々にFacebookで少し腰を落ち着けて情報を整理する、という動きをしているようだ。






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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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