Amazon EC2の障害で露呈したクラウドの留意点

Amazon EC2の障害で露呈したクラウドの留意点 2011年4月25日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

日本時間の2011年4月21日(米国時間20日)から、Amazonが提供しているクラウドコンピューティングサービスであるAmazon EC2に重大なトラブルが発生した。クラウドコンピューティングとはインターネットの活用形態を水道や電力のように従量課金で使えるようにするという試みであり、Amazon EC2とは、Amazonが世界中に持つ広大なネットワーク基盤から、WebサイトやWebアプリケーションを開発・運営するための環境を従量課金でレンタルできる仕組みである。

世界中のスタートアップや有力新興企業の多くがAmazon EC2を活用しており、カナダのソーシャルメディア向けコンテンツ配信サービスのHootSuiteや、位置情報ゲームサービスのFoursquare、Q&AサイトのQuoraなどの有力Web関連企業が一時的なサービス停止に追い込まれた(僕が経営するモディファイのSaaSサービスであるSM3、RTポータルなどのサービスも、Amazon EC2の長時間ダウンの影響をまともに受けることになった)。

クラウドコンピューティングはAmazonをはじめ、GoogleやMicrosoftなどの巨大IT企業が率先して普及に取り組んでおり、近年は日本国内でも大きな盛り上がりを見せている。利用者である企業にとってはミニマムコストでWebサイトを公開できるし、サービスの需要が増えてもサーバを買い足す必要がない。開発環境も運用環境も仮想化されており、オンラインですべてのサービスを利用できることと、利用金額の支払いが月額で完全従量課金であることも無力のひとつだ。

震災による原子力発電所の重大事故が、改めて電力供給の多様化の必要性とともに、原子力が低コストではあっても事故が起きた際に重大な危険性をはらむことを認識させた。同じように、クラウドコンピューティングへの依存が高まるWeb業界において、今回の事故によってクラウド離れが起きることはあり得ないものの、個々のサービス事業者ごとになんらかのフュエルセーフを考えねばならない状況になっている。クラウド推進企業の経営者たちは、唇を噛み締めていることだろう。



Amazon EC2



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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