熾烈を極めるFacebook vs Google+(後編)

熾烈を極めるFacebook vs Google+(後編) 2011年7月19日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

※本記事は「熾烈を極めるFacebook vs Google+(前編)」のつづきになります。前編をお読みでない方は、前編からお読みください。

Googleの元CEO エリック・シュミットは、Googleのソーシャル戦略が立ち遅れてTwitterやFacebookに大きく差を付けられたことについて、それはすべて自分の責任としたうえで、Facebookはソーシャルというよりも、実名制の徹底によるインターネット上のアイデンティティの確立という意味で成功した、という自身の見立てを述べている。

そのうえで、シュミットはGoogleこそがインターネット上のアイデンティティ確立という責務を担うべきだったと思うが、この分野に経営資産を投下してこなかった、なにかしなければいけないことは明らかに理解していたが、行動に移せなかった、と悔やんだ。

しかし同時にシュミットは、Google+が、これまでGoogleがリリースしてきた幾多のソーシャルサービスと比べてはるかに良い出足で成長しはじめていることに対する満足の意を表している。

前述のようにシュミットは、ソーシャルネットワークというものをアイデンティティの確立という視点で見ている。だから彼らは、Facebookのアイデンティティのあり方に欠けていると(彼らが思っている)友人関係の階層化を、サークルという機能で実現しようとしているのだ。

サークルは、携帯電話の電話帳をこまめに整理する人には非常に親和性の高い機能だろう。Facebookの「友達」とは、原則として実際に顔見知りであることが条件で、よく知らない人とは友達にならないように勧めてくる。反対にGoogle+ではGmailとの強い連携があり、顔は知らなくてもメールのやりとりをしているのであれば、それは知人だと考える。

メールは非対称なメディアだ。メールを出したことがなくても受け取ったことがあれば、非対称な関係性ができる。今回GoogleはGoogle+において、このメールにおける非対称な関係をソーシャルネットワークの基本におくことにした。図らずもそれは、Twitterと同じだ。非対称なコミュニケーションであればGmailを広げてきたようにやればいい。実際、Google+のβユーザーの増やし方はGmailのそれと酷似している。

Facebookでは互いに友人関係であると承認し合わない限り、ソーシャルな関係にはならない。Google+はTwitterと同様に、どちらかが知っていれば(Twitterではフォローすれば、Googleではサークルに入れれば)ソーシャルな関係が成り立つ。つまり、Google+はFacebookの顔をしたTwitterなのだ。

Googleは、Facebook流のソーシャルグラフをつくるのではなく、Twitter流のインタレストグラフ、つまり強い相互的な人間関係ではなく、興味のつながりという関係性を基盤にしていくほうがカンタンなことに気がついた。

Facebookの皮をかぶったTwitter、それがGoogle+の本質だといえるのだ。



Google+



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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