2013年のネットビジネス総括(1)

2013年のネットビジネス総括(1)

2013年12月2日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

2013年もついに12月に入り、残り1カ月を切った。営業日で数えれば、残り20日間くらいだろう。当コラムの更新も今回を入れて4回。だから今年の総括として、2013年を象徴するニュースをまとめていこうと思う。

まず最初に思い浮かぶのは、やはりTwitterのIPOだ。ソーシャルメディア周りは、このところIPOを避ける傾向にあったから、TwitterがM&AではなくIPOに踏み切ったことは2014年以降の、後続ベンチャーに少なからず影響を与えるはずだ。

というのも、2012年5月に行なわれたFacebookのIPOが初動においては期待を大きく下回る出来であったことで、市場がソーシャルネットワークの換金効率に対して根深い疑念をもつようになったからだ。

Facebookが期待通りの株価をつけることができなかった理由はふたつ。ひとつはモバイルからのトラフィックをうまく換金することができていないということ、もう一つは若年層の支持を失いつつあるのではないか、ということだった。FacebookはIPO時にすでに巨額の売上と黒字を実現していたが、それ以上の成長ができないのではないかという不安を払拭できなかったわけだ。Facebookでさえそれだから、Facebookほどの売上もなく赤字状態の後続ソーシャル企業群がIPOに二の足を踏むのも当然、ということになる。実際、TumblrはYahoo!に身売りし、InstagramもまたFacebookの傘下にいる。

Facebookは、若年層がFacebookから離脱しているのではないかという疑念に対してはいまだに完全否定しきれていない状態だが、モバイル上での広告ビジネスについても軌道に乗せることに成功したことで、どうやら株価を戻している。それがTwitterの投資家たちに自信と良いタイミングを与え、今回のIPOにつながったと思われる。

Twitterは売上的にはまだまだ大きくないし、赤字のままだ。収益性をみても、アクティブユーザーの伸びをみても、Facebookとは比較にならないほど、成長性に疑念をもたれそうに思うのだが、案に相違して彼らのIPOは成功した。今後の成長をどう果たすかはわからないが、メディアの情報配信プラットフォームとしての価値は、日本から見るよりも米国内では期待値が高いのだろう。ある意味Twitterの株主や取締役会がIPOに踏み切るチャンスを見極める目は確かだったといえる。

このTwitterのIPOは、PinterestやSnapChatなどの新興ソーシャルネットワーク企業には大いなる勇気を与えたことは疑いない。彼らはすでに数十億ドルもの企業価値に達し、巨額の資金調達に成功しているが、少し前ならバイアウトによる出口戦略もオプションとして真剣に考えていただろうが、Twitterの成功を見て、本格的にIPOを本命に据えて資本政策を見直したに違いない。

実際SnapChatは30億ドルという巨額の買収オファーをFacebookから提示されたらしいが、にべもなくこれを蹴っている。

伝え聞くところによると、Instagramの経営陣や元株主は、Facebookに早く売りすぎたことを後悔しているらしい。彼らの買収は最終的に7億ドル強で完了しており、1年待てば3~4倍になった可能性があるわけだから、悔やむのもわかる。

いずれにせよ、TwitterのIPOの成功は、2014年のIPO市場を大きく動かすきっかけになったと思う。日本においてもホットリンク、アライドアーキテクツなどのIPOが相次いだが、日本の市場関係者にとっても強気で株価をつけるためのひとつの好材料になったはずだ。



続き >> 2013年のネットビジネス総括(2)



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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