2013年のネットビジネス総括(3)

2013年のネットビジネス総括(3)

2013年12月16日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

Webデザインは、当たり前のことながら、表示される画面サイズによって左右されるべきものだ。数年前までは、デスクトップとモバイルのインターネットは別物であり、PCにはPC用の、モバイルにはモバイル用のWebサイトを用意せざるを得なかった。つまりPCとモバイルでは別のWebサイトをつくり、URLも別になった。

iPhoneが登場すると、指先でピンチアウトすることによりPCサイトをスマートフォン上で閲覧することができるため、専用のWebサイトを用意する手間が省けると多くの企業が考えた。しかし、結局小さな画面で大きなサイズのWebサイトを閲覧し続けるのはユーザーにとって苦痛である。だからWordPressのようなCMS提供者は、専用テーマ(CSS)を用意して、スマートフォン専用サイトを比較的簡単に構築できるようにしたが、いまのところそれほど普及しているとはいえない。さらに、モバイルアプリが人気を博し、Webブラウザ利用よりも一般化したことで、Webサイトをわざわざスマートフォン用に用意する手間を多くの企業はますます惜しむようになった。結果的に、大企業やIT企業のみがスマートフォンサイトに対応し、日本の法人の99%を占める中小企業は取り残されてしまったのである。Webだけでなく、アプリにおいても同様だ。逆にいえば、モバイルインターネットのトラフィックがデスクトップのトラフィックを超えていく流れのなかで、多くの企業は取り残されていくということだ。

もちろん飲食店なら食べログやクックパッドに情報を載せるし、Yahoo!ショッピングや楽天に店をもつという代替手段はあるが、自分たちの都合ですべてをコントロールできるわけではないし、情報のアップデートも人任せだ。

その状況が変わりはじめたのが今年、2013年だ。中小企業や個人がみずからのアイデンティティをインターネット上に置くことができるように、モバイル対応したWebサイトを簡単につくることができるようなサービスを提供する企業群が増えてきたのである。

■モバイルWebサイト制作サービス
Wix、Strikingly、Weeblyなど

■モバイルEC制作サービス
BASE、Stores.jpなど

■モバイルコミュニティサービス
Backplane、Revolverなど

■モバイルアプリ制作サービス
アプスタ、Yappliなど

僕は以前にもここに書いたが、この動きをファストWeb、そしてその流れにある企業をファストWeb企業と呼んでいる。ファストWebとは、ファストファッション同様に、最先端の流行をいち早く取り入れて、その流行を誰にでも手の届く金額で提供する。つまり、どんな企業、個人であってもスマートフォンやタブレットで自分専用のサービスを簡単に開設できるようにする。

アプリも、Webサイトも、ECも、そしてSNSも、低コストで自分たち専用ブランドとして提供できるようにする。こうした動きが加速し、自分たちの専用のスペースとサービスをモバイルインターネット上にも確立することが、中小企業にも可能になりつつある。


Wix
http://ja.wix.com/


Strikingly
https://www.strikingly.com/


Weebly
http://www.weebly.com/


BASE
https://thebase.in/


Stores.jp
https://stores.jp/


Backplane
http://www.thebackplane.com/


Revolver
https://revolver.jp/


アプスタ
http://www.appsta.jp/


Yappli
http://yapp.li/

続き >> 2013年のネットビジネス総括(4)




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
twitter:http://www.twitter.com/ogawakazuhiro
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