アメリカの新興企業がつくる新しいソーシャルデバイド

アメリカの新興企業がつくる新しいソーシャルデバイド

2014年01月06日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

十代女性向けファッション誌に登場した、ある若手女性モデルのプロフィールに「インスタ15万F」とあった。インスタとはInstagramのことで、15万Fとは15万のフォロワーがいる、ということだ。ファッションモデルのエッジィな流行としてすでにInstagramが入ってきており、フォロワー数を競うことがひとつの売名行為として認められている。もちろん、これは日本国内での話だ。

本コラム、ひいてはMdN Design INteractiveの読者の平均年齢を僕は知らないが、読者の多くにとって、いまや“ソーシャルネットワーク=Facebook”なのではないだろうか。もちろんTwitterを併用している人も多いだろう。しかし、InstagramやVine、SnapChat、Pinterestなど、アメリカではすでにポストFacebookとして人気を博しているオルタナティブSNS群に熱中しているという人は、まだまだ少ないのではないか?

しかし日本国内でも、十代はLINEの圧倒的な知名度の陰で、新しい画像共有型SNSをライフスタイルに取り入れはじめている。VineやSnapChatなどがそうだ。女子高生あたりでは、おもしろい写真や動画を仲間内でシェアするためのアイテムとして、オトナとは違う感性で遊びはじめている。

つまりソーシャルネットワークの使い方において、オトナと若者の間でいつのまにか一種のデバイド(格差)が生まれているのだ。

いや、この格差自体は昔から存在していた。前略プロフィールやリアルなど、ケータイ上で十代にしか使われていないサービスはいくらでもあった。オトナがmixiやGREEに注目しているときに、彼らは別の遊びを見いだしていた。しかし、今回の格差の発生はこれまでとは異なり、すべて海外のサービスであるということだ。

ここ数年のIT業界を支えてきたのは、着うた・着メロなどのデジタルコンテンツをキャリアのプラットフォーム(iモードなど)経由で販売するか、GREEとDeNAというゲームプラットフォーム経由でゲームを提供するかのどちらかだった。ところがスマートフォン時代ではキャリアやGREE、DeNAが力を失い、AppleとGoogleという海外組がプラットフォームになってしまった。このふたつのプラットフォーム上で儲けようと思えば、いまやゲームアプリを無料で配付し、デジタルコンテンツをオプションとして購入させるという手法しかない。実際、パズドラのような爆発的ヒットの存在がある。もしくは、InstagramやVine、SnapChatたちと同じようにサービスとしてのアプリを世界中に配付し、広告収益を目指すほかない。

しかし、日本のインターネット系企業にとっては、すさまじいまでの資金力にモノをいわせてアジア上陸を本格化させ、実際に日本の十代にも簡単に受け入れられはじめたInstagramやVineなどの強敵との競争を強いられるので、後者での成功は非常に難しくなってきているのが実態だ。

だから資金力と人材に恵まれた企業は結局ゲーム開発に走るが、スタートアップはソーシャルサービスに踏み込もうとせず、B2B市場に舵を取るケースが多くなってきている。結果として、LINEは海外ではWhatsAppなどの強敵との激戦にのぞみつつ、国内では画像・動画共有型の米国スタートアップからの侵蝕をどう食い止めるかを考慮しなければならない。ただ、ソーシャルネットワークサービス自体は、オトナ向けのFacebook、若者向けのInstagram、Vine、Snapchatなど、米国産のサービスの前に手も脚も出ず、誰もまともには挑戦しない、という状況がしばらく続きそうである。


Instagram


Vine




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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