オウンドメディアのルネサンスは起きるのか?(後編)

オウンドメディアのルネサンスは起きるのか?(後編)

2014年04月14日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

前編はこちら>オウンドメディアのルネサンスは起きるのか?(前編)

オウンドメディアとは、自社のコントロール化にあるメディアをさす。つまり、必ずしもWebサイトやアプリだけのことではない。たとえばメーカーが製品を量販店で販売すればそこは外部メディアだが、直営店で販売すればオウンドメディアといえる。また、直営店に置かれたPOPやチラシなどもオウンドメディアといえよう。

ただ、直営店のような物理的なメディアはリーチできる範囲が狭いし、時間帯にも制限がある。コストも多くかかるだろう。だから、結果的にオウンドメディアは自社サイトを意味することが多くなる。

本コラムの読者であれば、多くの人がWeb制作やWebデザインに関わっておられるだろう。この数年はTwitterからはじまり、YouTubeやFacebookによるソーシャルメディアマーケティング全盛であった。特に2010~2012年は、トラフィックを集中させるデスティネーションとしてFacebookページを使う企業が非常に多かった。多くの企業にとってFacebookページは、オウンドメディアの代用品であったわけだ。

しかし前編で述べたように、もはやFacebookページはオウンドメディアの代用品としては成立しない。どうあっても自分の手で自社サイトを運用しなくてはならなくなっている。

日本の事業者の60%はWebサイトをもっていない、と前回述べた。逆にいえば40%の企業はもっていることになるが、実際にオウンドメディアといえるようなWebサイトはそれほど多くない。めったに更新しないWebサイトや、カタログサイトのような静的サイトが非常に多いのだ。

また、いまだにFlashやテーブルレイアウトを採用していたり、画像で文字情報を表現しているWebサイトも多い。これらの技術を使っていては、スマートフォン上で快適な表示が行えない。現在のインターネットとは、PC経由のトラフィックではなく、スマートフォン・タブレットを経由したトラフィックのことだけを指していると思うべきだ。スマートフォンで十分に表示できないWebサイトは、もはや存在していないことと同じなのだ。

スマートフォンによるインターネットトラフィックのうち、Webブラウザ経由のシェアは現在14~15%にまで落ちているという。スマートフォンの利用時間が落ちているわけでなく、ネイティブアプリの利用頻度が高まって相対的に落ちているだけなのだが、それでも低い。スマートフォンを対象としたオウンドメディアはアプリのほうが良いのでは、という意見もあるだろう。実際、Yapliのような低価格で企業向けアプリを提供する企業もでてきている。

しかし、実際にはそうはいかない。アプリ同士で情報をシェアすることは、Webサイト(=URL)を介さない限りは難しいからだ。また、少しの更新であってもアプリはコーディング作業を伴うし、iOSアプリであればAppStoreの審査を受けなければならない。ゲームなどの動的なサービスでもないかぎり、基本的にはスマートフォンに最適化されたWebサイトを構築するのが先決で、その後アプリの活用法を検討するべきだろう。

まして、前述のとおりモバイルインターネットのトラフィックの大半を占めているのはゲームやFacebookアプリであり、これだけで50%近いシェアになる。さらにInstagramやTwitterといったアプリを加えていくと、アプリこそがSafariやChromeを超える次世代ブラウザなのだということがわかる。

つまり今後は、各アプリ内ブラウザでコンテンツが表示されることが重要になるわけだ。スマートフォンのWebブラウザで最適化されたWebサイトをつくり、OGP(Open Graph Protocol=FacebookやTwitter、Google+などの主要SNS上でリンクを置かれた場合に最適なビューで記述内容を表記するための取り決め)に即したコンテンツを用意する。そうすれば、ソーシャルメディア上で情報が伝搬する。

ソーシャルメディアに情報を拡散させ、トラフィックを集中させる場所としてのオウンドメディアをつくる。そのオウンドメディアはスマートフォンの画面サイズにフィットした表示とOGP対応が必須であり、SEOやSMO(ソーシャルメディア最適化)のためにも、ひんぱんに更新されなくてはならない。ひんぱんに更新されるためには、HTMLやCSSなどの知識を必要とせず、スマートフォンから更新できるWebサイトでなければならない。こうした仕様を備えたオウンドメディアの需要は、今後大きく広がっていくはずだ。


iOS版Facebook






■著者の最近の記事
オウンドメディアのルネサンスは起きるのか?(前編)
Twitterの複数写真添付機能に対する懸念
匿名か実名か―ソーシャルメディアが抱えるジレンマ
ニュースキュレーションアプリのマッチレースはじまる
muukはいかにしてSextingに立ち向かうのか
Twitter創業者たちの次なる挑戦
WhatsAppがFacebookに160億ドルで買収、その余波は?
Facebookの分散型アプリ戦略は吉とでるか?






[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
twitter:http://www.twitter.com/ogawakazuhiro
facebook:http://www.facebook.com/ogawakazuhiro

MdN DIのトップぺージ