Webサイト構築サービスの台頭(後編)―モバイルファーストからモバイルオンリーへ

Webサイト構築サービスの台頭(後編)―モバイルファーストからモバイルオンリーへ

2014年05月07日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

前編はこちら>Webサイト構築サービスの台頭(前編)

前回は、Webサイト構築サービスを主要事業とするベンチャー企業が勢力を伸ばしていることを紹介したが、なぜこの業界がにぎわっているのかを説明する。

従来のWebサイト構築サービスや各種インターネットサービスは、モバイルファーストという考え方を標榜しているが、現代は若者を中心にPCを使わずモバイルデバイスだけでインターネットを使う傾向が加速的に進んでいる。このような世代はモバイルオンリーとよばれる。

2014年現在、モバイルファーストという考え方ではもう足りない。モバイルオンリーの考え方こそが必要なのである。PCサイトをつくり、モバイルデバイスでも閲覧できるように工夫したり、スマートフォン用のデザインを考慮するような複雑な考え方は、もはや古いのだ。逆にいえば、モバイルオンリー層に対して最適な利用体験を与えられるWebサイトを、企業に対してリーズナブルなコストで提供するベンチャー企業が台頭しているのである。

モバイルオンリーへ情報を伝えるために必要な工夫というものがある。それはスマートフォンに最適化したスタイルシートを用意することであり、OGP(Open Graph Protcol…FacebookやTwitterなどメジャーなソーシャルネットワーク上で引用された記事を、正確に表示するための規格)をサポートすることだ。

スマートフォンおよびタブレット端末を総称してスマートデバイスという。スマートデバイス上でのインターネットトラフィックのシェアは

・ゲームアプリ 32%
・Facebookアプリ 17%
・その他アプリ 37%
・Webブラウザ 14%

という割合になっている(2014年4月現在 ※出典:http://www.flurry.com/bid/109749/Apps-Solidify-Leadership-Six-Years-into-the-Mobile-Revolution#.U2nimF5-PA8)。

「その他アプリ」はTwitterなどのソーシャルネットワークやニュースアプリなどが中心だ。だからこの結果だけをみると、スマートフォンサイトの必要性を軽く感じてしまうかもしれないが、実際はそうではない。

なぜならFacebookアプリはもちろん、ゲームアプリをのぞくほとんどのアプリは、コンテンツとしてWeb上の情報を流通させているからだ。結局のところ、複数アプリ間で情報を共有するには、Webがもっとも使いやすい。Facebookアプリをはじめ各種アプリはいわゆるアプリ内ブラウザというWebサイトを表示させる機能を包含しており、それによってコンテンツをシェアしている。

要するに、ゲームアプリ以外のモバイルトラフィックを支えるアプリの68%は、Webとの共存状態にあるプラットフォームであるということだ。そして、アプリ内ブラウザの恩恵を正しく受けるには、OGPをサポートしておく必要がある。スマートフォンの狭い画面では、ピンチアウトしなくても文字や画像を綺麗にみせるような工夫とOGP対応が必要なのである。

これらの仕様を、あえてユーザーに意識させることなく簡単に提供する。そういう、いわばファストWeb、ファストモバイルのコンセプトをもつベンチャー企業の台頭は、今後日本国内でも大きな注目を集めるだろう。


iOS版Facebook






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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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