ビジネスSNSへと踏み出したFacebook

ビジネスSNSへと踏み出したFacebook

2015年01月26日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)



FacebookとLinkedInは、実名SNSという点では酷似しているが、これまでは前者はコンシューマSNS、後者はビジネスSNSという棲み分けができていた。

しかし、Facebookは若者の支持を失いつつあるうえに、海外市場にもほぼ浸透した状態になってきており、成長神話に陰りがでてきた。これ以上の成長を求めるのであれば、宇宙に出るか深海に潜るか地中を掘るか、いずれにしても新しい市場を探さなければならない。

そして、Facebookはひとつの選択肢を採択して、実際に侵攻を開始した。それは、LinkedInが勢力を張るビジネスSNSへの道である。

日本国内においてLinkedInが振るわないのは、Facebookがまず社会人を中心に普及し、その結果、早くから高校生や大学生の利用頻度が衰え、肩書きや社会的立場を色濃く反映した世界観ができてしまっているせいだ。そこでFacebookは、どうせならその方向に思い切り振り切るのも手だと考えたのだろう。

実際にはFacebookがテストリリースした「Facebook at Work」は、社内でグループウエアとして活用できるセキュアでクローズドなツール、俗にいう社内SNSである。Microsoftが買収したYammerに近い。日本ではgamba!やトークノートといったスタートアップたちのサービスがこれにあたる。

だが、この市場はさほど大きくない。目指すところは、これらの社内SNSを包含する企業ユースやビジネスパーソンにとってのインフラとしての道であると僕は考えている。

実際、コンシューマ向けのITの世界でGoogleが最強への道を歩みはじめたころ、ビジネス向けのITのチャンピオンはMicrosoftであり、Googleはその領域を侵食することを決意した。Microsoftのドル箱であるオフィススイート(文書作成=Word、表計算=Excel、プレゼンテーションソフト=PowerPoint、メールソフト=Outlook)に対応するサービスとしてGoolge Appsをリリースし、インストール型のソフトウエアからSaaSへのパワーシフトを起こそうとした。これらの動きに、今回のFacebookの舵取りは似ている、と考えている。

Facebook at Workは、現時点では社内SNSとして、企業内でFacebookを使ってもらうコラボレーションツールだが、そのうちには企業間SNSとしても動作するようになるだろう。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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