ついにAppleがEV事業に参入か?

ついにAppleがEV事業に参入か?

2015年02月16日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)


Tesla Roadster

Bloombergなどが報道しているところによると、EV(電気自動車)メーカーTesla Motorsが、Appleから大量に人材を引き抜いているという。少なくともAppleから150人以上の人材を採用しているとのことで、全従業員6000名のうちの150名だから、相当の割合といえよう。

2014年の今頃には、Appleがイーロン・マスクとTesla Motorsの買収交渉をしているとの噂もでていたし、イーロン・マスクのAppleのCEO就任待望論もあった。

そのAppleが、Tesla Motorsとの交渉が進まないことに業を煮やして(もしくは、恫喝の意味もあってか)、AppleブランドのEV開発に着手しているという報道がなされた(http://jp.wsj.com/articles/SB12091905799479333513004580460610713782240)。

僕は本コラム上で、2010年にAppleがEV事業に進出する可能性を示唆している(http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/15971/)。

Appleはソフトウエア(OS)とハードウエアの完璧な融合を目指す会社だ。Googleはソフトウエアだけの会社である。映画『マトリックス』のネオが生身をもちながらプログラム上の存在として両立し、ライバルのスミスがプログラム上のみの存在であるという関係に似ている(劇中で、スミスが生身の人間に憑依して現実に肉体をコントロールするシーンは、スマートフォン製造にみずから乗り出すGoogleに似ているではないか)。

Googleは無人自動車のように、完全に自律状態で動作する車をつくるにあたり、最終的に自動車メーカーになろうとは思っていない。彼らはソフトウエアの提供者であればいいからだ。対してAppleは、前述のようにソフトウエアとハードウエアの融合にこだわる。その美学と実践こそが、Appleの存在意義だ。

スマートフォンの次のスマート市場は、明らかに家屋と自動車だ。スマートハウスとスマートカーこそが、次の戦場である。スマートウォッチなどのデバイスよりも、はるかに市場は大きいと僕は思っている。

Appleは家の中に関してはApple TVやiPhoneを使って進出機会を狙っているはずだが、自動車に関しては、それでは不足だと考えている。なぜなら自動車というものは、家屋とは違ってハイテクな機械そのものだからだ。そもそもソフトウエアを使って制御されているわけだから、スマート化するのは簡単なのである。

ただ、Appleがほんとうにスマートカーを自社で製造するか、Tesla Motorsをなんとしても買収しようと考えているかは五分五分だと僕は考えている。つまり、今回の報道はある意味Tesla Motorsへの強烈な威嚇である可能性も高いのではないか。

いずれにしても、AppleがGoogleと全面戦争するなかの新たな戦場として、自動車業界に本気でロックオンしようとしていることは、ほぼまちがいないように思うのである。




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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