Apple Watchを着用してはじめてわかった、魅力点と要改善点

Apple Watchを着用してはじめてわかった、魅力点と要改善点

2015年04月28日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)



2015年4月24日、筆者の手元にもApple Watchが無事届いた。2日後の26日にユーザークラブ系の関連イベントがあり、そこに間に合うかどうかが懸念事項だったが、余裕をもって対処できたのは幸いだった。

すぐにコラムを書かなかったのは、やはり少し使い込んでみないと、ほんとうの意味でのインプレッションにならないと感じたからだ。

まず、改めてフィット感は申しぶんない。サイズも筆者には38mmモデルで過不足なく、Apple Watch側でパスコードをタッチ入力する際に、ほんの少しソフト10キーをタップしにくい程度だ。前述のイベントでも20人ほど集まったうちのほとんどがすでにApple Watchを所有しているか到着待ちで、2名のみ、会社都合や利用しているグループウエアが非対応という理由から購入を見合わせていたが、全員男性であるにもかかわらず、38mmモデルと42mmモデルが、ほぼ拮抗していたことは興味深い。

さて、たった2~3日の利用でも、バッグやポケットからiPhoneを取り出す回数は確実に減っている。特に重宝しているのは、自転車移動時のナビ機能だ。今のところ、純正マップアプリの徒歩移動ルートで代用せざるを得ないが、iPhoneで経路探索をしてApple Watch側のマップアプリを開けば、すでに経路が表示されていて、そのまま走り出せるのが便利このうえない。あとは、ときどき次の分岐点までの距離をグランス(ちょっと見)しつつ、曲がる合図の音と手首のタップを頼りに走行すれば、問題なく目的地に到着できる。ただし、タップを強めの設定にしても路面の不整などがあると感知しづらいので、さらに強めのタップ設定が望まれるところだ。

このマップ連携もそうだが、これまでは、MacとiOSデバイス間の処理自動継続機能と考えられていたHandoffが、じつはiPhoneとApple Watch間で威力を発揮することがよくわかる。その点で、たとえば路線探索系のアプリのなかにも、検索結果を明示的にApple Watchへ転送しない限り表示が引き継がれないものがあるが、これはApple Watch対応としてはまちがった仕様といわざるをえない。iPhone上のアプリで必要な設定をすませたら、あとはユーザーがなにもしなくても、Apple Watch側のアプリに適切な情報が現れるというのが、理想的な連携のあり方だからだ。

アプリをつくる側は、これまで実機がない状態で開発してきたので仕方ない面もあろうが、「Apple Watchに転送」といった処理の考え方は、従来のデバイス連携の概念にとらわれすぎている。該当するアプリは、次のバージョンアップで仕様変更すべきだ。

また、心配されたバッテリーについては、Apple Watchではたしかにグランス中心の使い方がメインになるため、実用上は差し支えない印象をもった。その一方で、Apple Watchのホーム画面は、適切な数のアプリが登録されていれば使い勝手も良好で楽しくさえあるが、一定数を超えると目的のアプリを探すのに苦労する。特に、iPhoneなどと違ってアイコンにアプリ名が付かないため、位置と絵柄のみで判断することになるのだが、同じジャンルのアプリがいくつかあると区別が難しい場合も多い。さらに、アイコンの並べ替えはiPhone以上にめんどうで、ひとつ動かすと周囲のアイコンが空いた場所へ流れ込むように移動するため、なかなか思うような順番にアレンジできない。

もちろん、Apple自身がそのことに気づいていないはずはなく、腕時計型のデバイスに必要以上のアプリをインストールするとかえって使いにくくなることを意識させるために、あえてホーム画面の使い勝手をこのようなものにしているとも考えられる。いずれにせよ、特定のアプリをApple Watchに表示するかどうかはiPhoneのApple Watchアプリで簡単に設定でき、また、使い込むうちに利用すべきアプリも絞られてくるだろう。日常的に利用するものを厳選し、旅行などの際に必要なアプリを一時的に増やすような使い方が向いているようだ。

そのほか、日常使いでは、アプリの起動後に情報が表示されるまでに、やや待たされることがある点が気になる。おそらく消費電力をおさえるうえで、アプリが起動したあとでiPhoneからの情報取得を行う仕様となっているためだろう。それも実時間にすればほんの数秒のことだが、Apple Watchの用途を考えると、このタイムラグはゼロに近いほど良く、今後の最適化に期待したい。

最後に、Siriを使って、たとえば簡単な言葉の意味や定義を尋ねると、HandoffでiPhone上のSafariを使って確認するように誘導されることが多い。テキストの要約のみでもApple Watch上で確認できれば、さらに便利になるだろう。

…と色々と書いたが、日々、新たなユーザー体験をもたらすApple Watchを全般的には気に入っており、日本でのApple Payの展開や交通系電子マネーへの対応が1日も早く行われることを願いつつ、これからも積極的に使い続けていくつもりだ。




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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。

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