第4回 コンテンツマーケティングの4つの型

第4回 コンテンツマーケティングの4つの型

コンテンツマーケティングはすべての商材に同じ手法を適用できるわけではありません。ただし、いくつかの類型化は可能で、代表的な4つの型に分類すると戦略が立てやすくなります。今回は本書のChapter4「コンテンツマーケティングの4つの型」より、コンテンツマーケティングの代表的な4つの型とその使い分け方について紹介しましょう。
2016年7月15日/執筆:渡辺一男(株式会社日本SPセンター)


■情報を提供することで商品を深く理解してもらう
 エデュケーショナル型

エデュケーショナル型は、いきなり商品を売り込むのではなく、お客様の疑問や困り事に対してコンテンツで答える手法 です。

商品の購入を考えている人は、あふれるほどの選択肢を前にとまどってしまうことでしょう。普段は気にならないけれど、いざ購入を考えると「ジューサーとミキサーはどう違うのか?」「縦型とドラム型ではどちらの洗濯機がいいのか?」という疑問が急にわくのではないでしょうか?

こうした疑問に対して的確に答えることにより、見込客がまだ漠然としたイメージしか持っていない段階から関係を構築し、段階的に知識を提供し、商品購入を手助けしていく のがエデュケーショナル型の考え方です【01】。


【01】エデュケーショナル型

ワンメッセージでは伝達できないような商品の魅力を、お客様が解決したいことに合わせて段階的に情報を提供することにより、深いレベルで理解してもらえます。また、ぱっと見ただけでは違いがわかりにくいものの、背景となる知識を身につけると違いがよくわかる家電などの商品にも適しています。

エデュケーショナル型の例としては、Panasonicの「4Kテレビの疑問解決!」が挙げられます。開設当時は各社が画質の良さを競って訴求していたものの、まだユーザーには4Kという言葉の意味が浸透していない状況でした。そこで、メーカーにとっては当たり前の4Kという言葉の意味をユーザー視点に立ち、わかりやすく説明したのは、まさにエデュケーショナル型の見本といえます。


■質の高いコンテンツで検索順位を上げるコンテンツSEO型

コンテンツSEOとは、Googleを始めとする検索エンジンがコンテンツの質そのものを評価するようになって生まれた概念です。

従来は検索キーワードとの関連性や、被リンク数が検索順位を決定する主な要因となっていましたが、コンテンツの質そのものが検索順位に大きな影響を与えるようになってきました。そこで、検索キーワードを含みつつ、専門性が高く、オリジナルで質の高いコンテンツをつくって検索順位を上げ、見込客に見つけてもらいやすくしようという考え方 が生まれました。

コンテンツSEOでは、基本的には、認知・情報収集・検討・決定などの各フェーズにおいて、検索エンジン経由の流入を増やすことを目指します 。エデュケーショナル型では、認知フェーズ以外ではSEOを重視していないため、途中のフェーズからの流入は少ないのですが、コンテンツSEOを組み合わせれば、想定したペルソナ以外の流入をかせぐことができます【02】。


【02】コンテンツSEO型

コンテンツSEO型の例としては、眼鏡通販のオーマイグラス株式会社が運営するブログOMG Pressが挙げられます。眼鏡市場やJINSといったライバル会社のレビュー記事の人気が高く、あえて他社の情報も掲載することで比較検討フェーズでのSEOにも成功している良い例です。


■他メディアに溶け込んだコンテンツで惹きつけるネイティブ広告型

エデュケーショナル型とコンテンツSEO型は、基本的には検索エンジン経由の流入を主としているため、すでに顕在化している情報ニーズを満たすためには優れていますが、潜在ニーズそのものを掘り起こす力はあまり強くありません。なるべく多くの潜在見込客に対してリーチするためには別の方法が必要です。

そこで力を発揮するのがネイティブ広告型です。従来の広告型認知モデルに対してコンテンツマーケティングを適用した例です。マス広告ほど広範囲ではないが大量のリーチが必要な際に有効な手法です【03】。


【03】ネイティブ広告型

ネイティブ広告型では、広告モデルの割り込み型の弱点を克服し、いかに自然に見込客を惹きつけるかという要素を取り入れています。古くは記事広告、最近ではAntennaやGunosyなどのキュレーションアプリ内の広告、Facebook広告やTwitter広告などが代表的な手法です。

ただし、集客をネイティブ広告にのみ頼る状態では広告費を払い続けないといけません。ネイティブ広告できっかけをつくり、その後の関係性を継続させるためにオウンドメディアを強化して、そこでファンになってもらうための施策が必要です。

■生活者の関心を惹きつける面白コンテンツ型

人は誰もみな面白いことが大好きです。この「面白いこと」を利用して、生活者の関心を惹きつける手法が面白コンテンツ型、あるいはバズるコンテンツ型です。

この手法のよいところは、うまく当たれば爆発的な集客力を発揮することです。面白さで集めた生活者は、見込客ではない確率も高いという課題はありますが、たとえば、ソフトドリンクのように集客すれば比較的高い確率で商品購入につながる低関与度の商品には適しているといえます。

また、難易度は高くなりますが、面白さと商品情報をうまくミックスすることができれば、高関与度の商品でもコンバージョンにつなげることができます【04】。


【04】面白コンテンツ型

著名な成功例としては、iPhoneやiPadなどを粉々にするバイラルビデオでブレンダーの性能を示した、ブレンドテック社の「Will It Blend?」というウェブサイトが挙げられます。


■4つの型の使い分け

コンテンツマーケティングのどの手法を選ぶかは、商品特性を鑑み、「顕在化したニーズに応えるのか、潜在ニーズを掘り起こすのか」という軸や、「商品と直結したコンテンツがよいのか、商品にまつわる周辺情報から紹介するコンテンツがよいのか」「見込客の質を追うのか、量を追うのか」「検索行動を見込めるかどうか」などの軸で判断する必要があります。

たとえば、認知を獲得できれば高い確率で購入につながる商品であるならば、見込客の質よりも量が重要になるので、集客力を重視した面白コンテンツ型を実施すれば販売に結びつく可能性が高くなります。この場合は、面白いコンテンツと商品との関連性をいかに演出するかが重要です。

今までにない新しいカテゴリーの商品であり、そもそも検索流入が期待できない場合には、ネイティブ広告型が効果的かもしれません。見込客が普段接していそうなメディア上で自然な接触が期待できるからです。逆に見込客が積極的に検索を行うことが見込めるのであれば、コンテンツSEO型で他社に抜きんでることを狙うのもよい方法です。商品に直結する情報ではなく、周辺情報での集客を狙う場合にも有効です。

エデュケーショナル型は待ち受け型ではありますが見込客の疑問に的確に答えることにより信頼性を構築することができます。また、エデュケーショナル型で集客した見込客の質は比較的高いというメリットもあります。信頼性、専門性が重要な、検討期間が比較的長い商品に特に有効です【05】。


【05】商品特性に適したコンテンツマーケティングの型を選ぶ

以上で第4回は終了です。次回は作成したコンテンツをどう広めるかについて紹介しますので、お楽しみに。

なお、書籍のChapter4では、各コンテンツマーケティングの型や具体的な事例のより詳しい解説、購買ファネルにあわせた型の選び方なども解説していますので、ご興味のある方はぜひご一読ください。

第3回「マーケティングコンテンツのつくり方
第2回「コンテンツマーケティングの始め方」 
第1回「コンテンツマーケティングの基本概念
目次に戻る



【BOOKS紹介】
「どのようなコンテンツが効果があるのか」、「コンテンツのアイデアはどう考えたらよいか」、「効果が上がらない時はどのように改善していくか」といったコンテンツの制作・拡散・チューニングの具体的なノウハウを解説。ビジネスゴールや商品タイプに応じてコンテンツマーケティングの手法を分類し、コンテンツの方向性や戦略の違いも詳説していますので、ご自身の環境に合わせて適切な手法を選べます。実務で役立つチェックシートもダウンロードできる実践的な一冊です。

●書籍ページ:http://www.mdn.co.jp/di/book/3215203010/
●Amazon:http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844365614/mdndi-22/

MdN DIのトップぺージ