
2003年設立後、ルイ・ヴィトン・ジャパンのブランディングサイト、ADCのサイトなど、数々のブランディングサイトで評価を集めるSIMONE。そのSIMONEのクリエイティブ・ディレクター/代表であるムラカミカイエ氏に話をうかがった。
第2話 ブランディングサイトについて
??ブランディングサイトをつくるときに注意していることはありますか?
ムラカミ●まず徹底的にヒアリングとリサーチをします。コンセプト、歴史、競合、販路、売り上げ、ターゲット、目標など。Web制作とは何ら関係なさそうなことですが、ブランドを取り巻く状況のすべてを聞いて多角的に分析します。ファッション業界は栄枯盛衰が激しくて、生モノを扱っているような側面が強いですから、数字上のデータだけを鵜呑みにすると痛い目に遭います。各ブランドが置かれているマーケットの状況やその他の情報を常に第三者的観点で捉えておくことは必須で、こういった検証材料がデザイン作業に入る前の設計段階に大きく影響を及ぼします。
一方、伝統や歴史、DNAなど、ブランドバリューの源となる要素に関しては、永続的に安定したビジネスを続かせるための生命線になるデリケートな部分ですから、注意深くその内容を掘り下げ、大事に取り扱うようにしています。ブランドの過去と現在と未来、時間軸の情報すべてを検証しWebというメディア上で、いまこのタイミングでどうやって展開すべきかを常に考えるようにしています。
クリエイティブに関しても同様で、どんなテーマで今シーズンのイメージを構築したのか、そのテーマの源になったソースは何なのか、それをどう解釈しキャンペーンにどんなフォトグラファーを使っているなどのクリエイションプロセスを徹底的にヒアリングした上で、そのブランドが考えたクリエイションの続きをWeb上でどのように表現するか。そのためにどんな世界観と技術が必要なのかを考えます。芯が強く、波及効果が高いブランディングサイトをつくるために、各メディアにまたがるクリエイションの方向性をひとつに絞り込んで、明快で潔く、パワーがあるサイトをつくるよう心がけています。
simoneのサイトではSIMONEが手掛けてきた主なブランディングサイトが紹介されている
??通常のキャンペーンサイトとファッションのブランディグサイトの違いは?
ムラカミ●広告業界におけるキャンペーンサイトは、サイクルがとても早く、アウトプットしたときの即効性と、どれだけの話題性がつくれるかが重要ですよね。しかし「話題性がある」ということは「風化されやすい」というリスクも同時に持ち合わせるのでこういったアプローチは、時としてブランドにとっては致命傷になる可能性もあると思います。
ファッション業界では毎年、春夏/秋冬という年二回の変遷期のなかで、シーズンテーマを重要視しながら新しいことにトライしつつ、これまで何十年、何百年と続けてきたブランドの歴史を同時に踏まえてアウトプットしていかなければならないので単なるスポット的な仕掛けではなく、長期的ブランディングプランの一環として捉えなければなりませんから、広告の及ぼす時間軸の捉え方が根本的に違うのではないかと思っています。

あとWebの特性のひとつとして情報の供給量の多さってあるじゃないですか。情報が限りなく入るということになると、クライアント心理として伝えたいことがたくさん出てくるんです。僕はブランドの価値と情報の供給量バランスって、常にシビアにコントロールしないといけないと思っていて。ひとつのモノについて、語れば語るほど、ブランドの神話性というか付加価値はどんどん薄くなっていく傾向が強いので、ケースバイケースですがファッションでキャンペーンサイトを作る場合は極力感性表現に重きを置くようにしています。
??SIMONEらしさとは?
ムラカミ●ファッションに強い。とよく言われますが、主観ではバランス感覚が強みだと思っています。簡単に言えばビジネスとクリエイションの両方をバランス良く配分したフィニッシュができるということかもしれません。ファッションというと表層的なビジュアル表現ばかり取り上げられるのですが、僕自身ファッションから学んだ一番大きなことはブランディングメソッドだと思っています。SIMONEのメンバーには僕以外にも世界有数のファッションブランドのマーチャンダイジングやプレスに関わっていたスタッフが在籍していて、クリエイティブとビジネスの両感覚のバランスを取りながら制作している側面がとても強い。
ビジュアルの表現は常に探求していく課題としてどのWebクリエイターも取り組んでいることだと思いますが、我々はファッションブランディングが培ってきた独自の観点でWebの骨格を作り上げ、それぞれのクライアントのセンスにあった多種多様なビジュアル表現をディープに展開できるということには自信を持っています。
??SIMONEらしい表現とは?
ムラカミ●ファッションに関わるサイトに限定すると、例えば写真のディレクションひとつとっても、ただ良い写真であるだけでなく、時代のムードを切り取れなければいけないですし。モデルの選定をするにせよ、時代背景によって評価される人物像も変わってきます。その非常にセンシティブな感覚や社会状況をもかぎ分けつつ、ブランドの持つDNAと時代を象るパワーを同時に表現できるかをいつも考えています。

Web制作者がファッションにおいて最も重要な広告表現の要素のひとつであるファッションフォトをディレクションできず、一方でWeb上での技術に固執してしまったことでブランドが本来持っている伝統や世界観から逸脱してしまい、結果として破綻してしまっている例を見かけ残念に思うことがよくあります。
Webクリエイター全体に言えることですが、写真に限らずクライアントと共有できるアートや音楽、映画などに対しての知識と提案力を得ることと、その感覚値を応用して素材になるべきモノのクオリティ言及をするという初歩的な段階から始める状況に差し掛かっていると思います。
ファッション業界からアウトプットされたイメージはその半年から1年後に確実に多くのマス広告表現などに影響を及ぼしています。クリエイターズクリエイターという言葉がありますが、ファッションのサイトに関わるクリエイターも常にそういう社会的スタンスを意識して表現していかなければいけないと感じています。
サイト全体の表現については、僕自身、イメージを豊かに表現できるフラッシュサイトに固執していましたが、最近はそういう気負いもなくなりました。完成されていないWebサイトのかっこよさっていうのも、攻める角度にブレがなければ可能性はあるなって思うようになってきましたし。でも、そういうことを考えられるようになったのは最近で、3年間この業界にいてやっと状況が見えてきたというのが本音です。
??最近では状況が変わってきたということですか?
ムラカミ●変わり始めたと思います。最近いろいろな業種の人たちがファッションに関わるWebサイトに関心を寄せるようになってきたので、必然的に表現の振り幅も広がりましたよね。他のクリエイターが取り組めば取り組むほど、僕らも触発されて、“こういう過激さがあってもいいよね。”とか、“こういうエレガントさも良いよね。”とか、参考にすべきテストケースが増えてきたという実感はあります。以前は他に誰も戦っている人がいなかったので、一人で考え一人で戦わなければいけなかった。いまではいろいろな人たちがファッションとWebの可能性について考え、チャレンジするようになって、僕らも触発される要素がでてきたので、この状況を楽しんでいますね。
ムラカミ●まず徹底的にヒアリングとリサーチをします。コンセプト、歴史、競合、販路、売り上げ、ターゲット、目標など。Web制作とは何ら関係なさそうなことですが、ブランドを取り巻く状況のすべてを聞いて多角的に分析します。ファッション業界は栄枯盛衰が激しくて、生モノを扱っているような側面が強いですから、数字上のデータだけを鵜呑みにすると痛い目に遭います。各ブランドが置かれているマーケットの状況やその他の情報を常に第三者的観点で捉えておくことは必須で、こういった検証材料がデザイン作業に入る前の設計段階に大きく影響を及ぼします。
一方、伝統や歴史、DNAなど、ブランドバリューの源となる要素に関しては、永続的に安定したビジネスを続かせるための生命線になるデリケートな部分ですから、注意深くその内容を掘り下げ、大事に取り扱うようにしています。ブランドの過去と現在と未来、時間軸の情報すべてを検証しWebというメディア上で、いまこのタイミングでどうやって展開すべきかを常に考えるようにしています。
クリエイティブに関しても同様で、どんなテーマで今シーズンのイメージを構築したのか、そのテーマの源になったソースは何なのか、それをどう解釈しキャンペーンにどんなフォトグラファーを使っているなどのクリエイションプロセスを徹底的にヒアリングした上で、そのブランドが考えたクリエイションの続きをWeb上でどのように表現するか。そのためにどんな世界観と技術が必要なのかを考えます。芯が強く、波及効果が高いブランディングサイトをつくるために、各メディアにまたがるクリエイションの方向性をひとつに絞り込んで、明快で潔く、パワーがあるサイトをつくるよう心がけています。
simoneのサイトではSIMONEが手掛けてきた主なブランディングサイトが紹介されている??通常のキャンペーンサイトとファッションのブランディグサイトの違いは?
ムラカミ●広告業界におけるキャンペーンサイトは、サイクルがとても早く、アウトプットしたときの即効性と、どれだけの話題性がつくれるかが重要ですよね。しかし「話題性がある」ということは「風化されやすい」というリスクも同時に持ち合わせるのでこういったアプローチは、時としてブランドにとっては致命傷になる可能性もあると思います。
ファッション業界では毎年、春夏/秋冬という年二回の変遷期のなかで、シーズンテーマを重要視しながら新しいことにトライしつつ、これまで何十年、何百年と続けてきたブランドの歴史を同時に踏まえてアウトプットしていかなければならないので単なるスポット的な仕掛けではなく、長期的ブランディングプランの一環として捉えなければなりませんから、広告の及ぼす時間軸の捉え方が根本的に違うのではないかと思っています。

あとWebの特性のひとつとして情報の供給量の多さってあるじゃないですか。情報が限りなく入るということになると、クライアント心理として伝えたいことがたくさん出てくるんです。僕はブランドの価値と情報の供給量バランスって、常にシビアにコントロールしないといけないと思っていて。ひとつのモノについて、語れば語るほど、ブランドの神話性というか付加価値はどんどん薄くなっていく傾向が強いので、ケースバイケースですがファッションでキャンペーンサイトを作る場合は極力感性表現に重きを置くようにしています。
SIMONEが手掛けたファッションブランド「BLONDY」のサイト
レコードレーベル「エースハイレコーズ」もSIMONEによるもの
??SIMONEらしさとは?
ムラカミ●ファッションに強い。とよく言われますが、主観ではバランス感覚が強みだと思っています。簡単に言えばビジネスとクリエイションの両方をバランス良く配分したフィニッシュができるということかもしれません。ファッションというと表層的なビジュアル表現ばかり取り上げられるのですが、僕自身ファッションから学んだ一番大きなことはブランディングメソッドだと思っています。SIMONEのメンバーには僕以外にも世界有数のファッションブランドのマーチャンダイジングやプレスに関わっていたスタッフが在籍していて、クリエイティブとビジネスの両感覚のバランスを取りながら制作している側面がとても強い。
ビジュアルの表現は常に探求していく課題としてどのWebクリエイターも取り組んでいることだと思いますが、我々はファッションブランディングが培ってきた独自の観点でWebの骨格を作り上げ、それぞれのクライアントのセンスにあった多種多様なビジュアル表現をディープに展開できるということには自信を持っています。
??SIMONEらしい表現とは?
ムラカミ●ファッションに関わるサイトに限定すると、例えば写真のディレクションひとつとっても、ただ良い写真であるだけでなく、時代のムードを切り取れなければいけないですし。モデルの選定をするにせよ、時代背景によって評価される人物像も変わってきます。その非常にセンシティブな感覚や社会状況をもかぎ分けつつ、ブランドの持つDNAと時代を象るパワーを同時に表現できるかをいつも考えています。

Web制作者がファッションにおいて最も重要な広告表現の要素のひとつであるファッションフォトをディレクションできず、一方でWeb上での技術に固執してしまったことでブランドが本来持っている伝統や世界観から逸脱してしまい、結果として破綻してしまっている例を見かけ残念に思うことがよくあります。
Webクリエイター全体に言えることですが、写真に限らずクライアントと共有できるアートや音楽、映画などに対しての知識と提案力を得ることと、その感覚値を応用して素材になるべきモノのクオリティ言及をするという初歩的な段階から始める状況に差し掛かっていると思います。
ファッション業界からアウトプットされたイメージはその半年から1年後に確実に多くのマス広告表現などに影響を及ぼしています。クリエイターズクリエイターという言葉がありますが、ファッションのサイトに関わるクリエイターも常にそういう社会的スタンスを意識して表現していかなければいけないと感じています。
サイト全体の表現については、僕自身、イメージを豊かに表現できるフラッシュサイトに固執していましたが、最近はそういう気負いもなくなりました。完成されていないWebサイトのかっこよさっていうのも、攻める角度にブレがなければ可能性はあるなって思うようになってきましたし。でも、そういうことを考えられるようになったのは最近で、3年間この業界にいてやっと状況が見えてきたというのが本音です。
??最近では状況が変わってきたということですか?
ムラカミ●変わり始めたと思います。最近いろいろな業種の人たちがファッションに関わるWebサイトに関心を寄せるようになってきたので、必然的に表現の振り幅も広がりましたよね。他のクリエイターが取り組めば取り組むほど、僕らも触発されて、“こういう過激さがあってもいいよね。”とか、“こういうエレガントさも良いよね。”とか、参考にすべきテストケースが増えてきたという実感はあります。以前は他に誰も戦っている人がいなかったので、一人で考え一人で戦わなければいけなかった。いまではいろいろな人たちがファッションとWebの可能性について考え、チャレンジするようになって、僕らも触発される要素がでてきたので、この状況を楽しんでいますね。
(取材:服部全宏(GO PUBLIC) 写真:谷本 夏 編集:蜂賀 亨)
![]() |
ムラカミ カイエ SIMONE INC. / CREATIVE DIRECTOR 株式会社三宅デザイン事務所にて三宅一生に師事。 入社後間も無くISSEY MIYAKE、ISSEY MIYAKE MENのART DIRECTORとして数多くのプロジェクト陣頭指揮にあたる。独立後、フリーランスを経て、ファッションブランディングをベースとしたクリエイティブカンパニー “SIMONE INC.”を設立 |




