第4話 デザインの専門家以外との仕事 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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居山浩二氏によるデザイン術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話では、都錦酒造が販売している「ばら焼酎“Rosier”」のパッケージとポスターをピックアップし、商品デザインにおける重要なポイントについて詳しく話を伺う。



専門的な用語を使わずに
クライアントに説明する必要性





──まず最初に、今回ご紹介いただける作品の概要を教えてください。


居山●クライアントである都錦酒造は、島根県の日本酒メーカーなのですが、新しい試みとして、地元の特産であるバラとコラボレーションしたリキュールを作ることになったのです。そのパッケージとポスターを、僕が手がけています。地元のバラ園と組んで作る商品なので、過疎化が進む島根県の活性化にもつながるかもしれない意義のある仕事だと感じました。


──立体的なパッケージデザインでは、紙媒体と異なるポイントもありそうですが、何か気を配ったことなどはありますか?


居山●たとえば、ラベルを瓶に貼ったときに、曲線の形に合わせてラウンドしてしまうので、文字列が少し短めに見えてしまうのです。だから、通常より少し長めにテキストを配置するなどの試行錯誤がありました。そのような場合は、実際に貼ってみて確認することが大切です。


──ラベルをデザインする際に、中に入っているリキュールの色は、あらかじめ決められていたのでしょうか?


居山●初めの頃は、もう少し淡いピンク色だったので、ラベルのデザインでも、マット調の赤箔を使用していました。ただ、商品開発と並行しての仕事だったので、最終的に、リキュールの色味が少し変わってしまったのです。そこで、それに合わせて、使用する箔も変えるなどの調整を行いながら、定着させていきました。


──続いてポスターについてお聞きします。このビジュアルは、どのようなテーマで制作されたのでしょうか?


居山●バラのリキュールであることが最大の特徴なので、一目瞭然でバラが見えるグラフィックに仕上げました。ラベルと連動させたもの、バラから漂ってくる香りを視覚化したもの、バラを大量に使った商品の製造工程を表現したものと、それぞれの役割を持たせた3パターンを制作しています。モチーフをランダムに配置しているものなので、感覚を大事にしながらも、時には少し引いて客観視してバランスを取っています。


──ちなみに“Rosier”というネーミングは、居山さんが提案したそうですね。


●そうです。最初に候補に上がっていた名前は別のものだったのですが、今回の商品には少し合わないように感じましたので。いくらデザインに気を配っても、名前が適したものでなければ、どうにもならないですからね。

──そのほかに、今回の仕事で何か難しかった点などありましたか?


居山●都錦酒造が販売している従来の商品では、筆文字や波のグラフィックを大胆に用いたような、典型的な日本酒のラベルがほとんどでした。もちろん、それも悪くはないのですが、今回の商品とは方向性が異なるので、これまでとは大きく趣向を変える必要があったのです。ただ、先方には外部のデザイナーに依頼してラベルを作った経験がなかったようなので、その地慣らしは大変でした。


──デザイナー側から方向性やディテールを提案する形でのデザインは、先方にとって経験がなかったのですね。

居山●だから、最初にデザイン案を見ていただいたときには「これはデザインされているのですか?」と聞かれてしまいました(笑)。要素を絞り込んでいたので、デザインしていないように見えたのでしょうね。もっと金箔などを多用した、ゴージャスな仕上がりを想定なさっていたようです。

──なるほど。ただ、今回の商品には、そのような方向性は合わなかったわけですね。

居山●そうです。商品の性質上、女性をターゲットとした展開が考えられましたが、ベタで派手な見栄えにしてしまうと不適当ですので、そのポイントは譲歩できなかった。そこで「デザインしていないように見せているのが、デザインなんですよ」とお話しして、検討してもらうことになりました。その後、さまざまなやり取りを経て、最終的には、ほぼ最初のデザイン案通りの案を実現できたので、ホッとしています。結果として、売れ行きも堅調だったようなので安心しました。

──そのように、クライアントに対してプレゼンテーションする際には、しっかりと自分のデザインについて説明する力が求められるのではないでしょうか?

居山●そうですね。ただ、クライアントは、デザインに対して専門的に関わっている方たちばかりではありませんし、専門用語を用いないように、なおかつ「そうすることが、売り上げに対して、どのように貢献できるのか」と、利益につながる道筋を説明することが大切なのだと実感しています。今回の仕事では、そのことを再認識できましたし、すごく良い経験になりました。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


「このアートディレクターに聞く」第10回居山浩二さんのインタビューは今回で終了です。

[プロフィール]
居山浩二(いやま・こうじ)
1967年、静岡県生まれ。1992年、多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業。日本デザインセンター、atomを経てイヤマデザインを設立。 N.Y.ADC銀賞・Distinctive Merit、メキシコ国際ポスタービエンナーレ銅賞、香港国際ポスタートリエンナーレ銀賞、JAGDA新人賞2005などの受賞実績がある。

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