第3話 自分の痕跡を残さない | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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グラフィックデザインと関係性が強い写真の世界。なかでも風景写真は、広告をはじめ様々な媒体の「空気」を映し出す。しかし、オーソドックスでありながら、実は扱いが一番難しいのが風景写真……という声も、よくデザイナーから聞かれる。そこで今回は、大和ハウスグループ「共創共生シリーズ」を例に、撮影を手がけた写真家の久家靖秀さん、アートディレクターの岡本学さん(サン・アド)のお二人に話をうかがった。風景が呼び起こす広告デザインとは?


第3話 自分の痕跡を残さない



大和ハウスグループ「共創共生シリーズ」ダイジェスト・プリント


大和ハウスグループ「共創共生シリーズ」ダイジェスト・プリントを間に……



──岡本さん、ちなみにどういうジャンルが得意?

岡本●なんでもやりますよ。広告以外にも、装幀、CDジャケット……基本的にシンプルにデザインしたいというのが一番にあって。あと、この仕事もそうですが、デザイナーの痕跡を残さない。個性を出すのが嫌いなんです。

久家●岡本さんらしいなあ。でも、だからこそ岡本さんの輪郭が出ているんです。普通は余計なことしたほうが個性らしきものは出るし、そのことで引っかかりが生まれるじゃないですか。

岡本●広告の場合、伝わってほしいのは商品のメッセージだったり企業の理念なので、それを伝えるためにどういうデザインをするか……。そう考えると、おのずとそうなっていく。この仕事のときも久家さんの写真がいちばん良く見えるように考えて、あとはなるべく普通に見えるようにしました。それは子供からお年寄りまで、見てスッと入ってもらえるということを念頭にした上で。でも、ここに至るまでデザインの試作が数々あって、中にはヘンなものもありましたよ。そういう過程をふまえてこれでいくのがいいと。


岡本学さん 岡本さんの“王道的な広告デザイン”の秘訣は……
「自分自身の経験とサン・アドという会社の体質、両方ですね。
同じようなものが好きな人が集まってくるのでしょう」(岡本)














──デザイナーの痕跡を残さないというのは、広告の王道なのかもしれませんね。でも、シンプルは難しい。

久家●相当難しいでしょ。大抵はヘンな方向に行きがちだもん。

岡本●僕も若い頃はそうでしたよ。自分の腕をアピールしたくて、こんなにカッコよくて面白いデザインできるんだぜって(笑)。メッセージはとりあえず置いておいて。でも、それはやっぱり考え方として間違ってるのではないか……と。仕事をしながら、自分の中で段々そうなってきたんです。

──自分が削いだものが、逆に受ける場合もあるのでは?

岡本●もちろん、ありますね。基本はクライアントワークだから、両方見せて、こっちがいいとなったら仕方がない。

久家●メッセージをのせる器として、それがちゃんと機能する場合は、カッコイイことは否定しないということですよね。

岡本●ええ。でも、すごく個性的なデザイナー、いるじゃないですか。そういう方々も僕は認めているというか、自分にはできないのですごいことだと思っていますよ。





余計なことをしないデザイン



──さきほど「子供からお年寄りまで」と言われましたが、広告の中でも新聞広告は特にそういう世界ですよね?

岡本●広告全体的には、ターゲットは明らかに絞り込まれて細分化されています。でも新聞広告は、広く一般の媒体ですよね。幅広い層へ向けなければならない。しかもこのときは、全国の地方紙まで網羅して出稿した。だから、それこそ日本人に向けた広告だったのかもしれない。

久家●だから、逆に珍しいですよね。コマーシャルのありかたとして。いまはマーケティングが緻密で、しっかりある時代なのに。

──そこで久家さんのようなアーティスティックな写真家がオーソドックスな写真を撮って、でもちょっと角度を変えて見ると「おや?」……というのは、一般広告として特異じゃないかと。

岡本●ああ、確かにそうですね。

久家●僕、そういうものが結構多いかも。サッカー日本代表の写真もそうだし、宇多田ヒカルさんの最初のCDジャケットも。みんな見て知っているけれど、僕の写真ということは知らない。

──岡本さんのお話同様、匿名性ですね。

岡本●なるほど、いいですね(笑)。

久家●仕事したこと自体、あまり言わないんですね。わかりやすいものは。


久家靖秀さん エディトリアル、広告を含め、
え? あの写真も? ということが多い久家さん。
最近は『雲のうえ』(発行:北九州市にぎわいづくり懇話会)という
地方誌で、工場萌え必見の写真を多数披露している






──クリエイティブの面で自分の気配を消す……というのは、声高な主張ばかりの世界で逆に気概を感じます。

久家●その案配が難しいんです。

岡本●若いときからそう思っていたら、すごいことですよね。

久家●うん。最初から意図的にそうだったらヤバイ(笑)。自然にそうなったなら、ありだけど。

──そう考えると、これらは“大人の作品”ですね。

岡本●ええ。40歳を前にして。

久家●いい仕事ができて良かった。やっぱり広告って伝達力の早さを競うところもあるから、わかりやすい作品性を求められるところもあるでしょ? でも岡本さんも、回りのスタッフも、みなさん大人のゆとりを持っている方々でよかった。


次週、第4話は「この風景は続いてゆく」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)



久家靖秀さん

[プロフィール]
くげ・やすひで●1962年福岡県生まれ。90年よりフリーとなり、雑誌や広告など幅広く活動。「交叉/配列シリーズ」をはじめ、個展も多数開催。2002年、日韓共催W杯日本代表選手公式写真の撮影を担当。作品集に『Aliens』『HONDA絶対速度』『cover/girl』『LIFT』『塩ノ花、三宅島』がある。


岡本学さん

おかもと・まなぶ●1967年京都生まれ。アートディレクター。数社の広告制作会社、デザイン事務所を経て、97年サン・アド入社。広告のアート・ディレクションから、装丁等のグラフィックデザインまで幅広い仕事を手掛ける。サントリー環境広告「水と生きる。SUNTORY」シリーズで東京ADC賞、大和ハウスグループ「共創共生」シリーズで朝日広告賞部門賞、毎日広告デザイン賞優秀賞など受賞多数。


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