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今“ 知っておくべき”ケータイサイト制作事情 第6回 ケータイサイトの効果をつくるのは「ケータイ」だけではない

2024.4.29 MON

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今“ 知っておくべき”ケータイサイト制作事情

第6回

一歩進んだケータイサイト活用法とこれからのケータイサイトデザイン


ケータイサイトの効果をつくるのは「ケータイ」だけではない

クライアント企業にとって「ケータイ活用」は、単にWebサイトを制作するだけの話ではなくなってきた。たとえば、QRコードからケータイサイトへと誘導する例では、ユーザーが思わずアクセスしてしまうものと、そうでないものがある。その差はチラシなどの集客ツールによるところが大きい。今やWebサイトを用意して待っているだけが「ケータイWeb制作」ではない。リアル空間や紙ツールなどと連携し、各々が得意な役割を受け持ち、トータルでの成果を狙うことも必要な場合がある。たとえば、ケータイメルマガで顧客の囲い込みをしてPC通販や店舗での売り上げに誘導する、といった活用がそうだ。
さまざまなメディアを複合利用している大企業では、最近「Attribution Model」(要因モデル)という言葉が話題に上るという。ケータイに限らず、各メディアやツールがコンバージョンにどう寄与するのかを探ろうという試みだ。旧来のマーケティングではメディアを縦割り評価していたため、「ラストクリック」のメディアだけが評価される傾向があった。サッカーにたとえるならシュートを決めるストライカーだけを評価し、アシストパスを出す選手を無視するようなものだ。Attribution Modelはラストクリック以前に活躍しているメディアもきちんと評価し、活用・投資を最適化しようというチャレンジだ【1】。
メディアとツールのすき間を埋めるケータイサイト構築は、自然とAttribution Model的視点が求められる。めんどうと思うか、おもしろいと感じるかは感性の問題になるが、それらを横断編集して「ユーザー体験」というひとつの物語をつくる仕事だと考えれば、マーケターよりも、Web制作側つまりはクリエイター向けの仕事であるといえよう。

ケータイに封じ込められた「新しいリアリティ」

ケータイ端末にはフェリカやGPSなど、リアルと連動する仕組みが搭載されている。ユーザー体験を設計するとき、それらの機能の活用や組み合わせ次第でユニークなコンテンツをつくることも可能だ。たとえば「位置ゲー」と呼ばれる位置情報を活用したゲームでは、GPS機能やフェリカ機能を使ってユーザーが“場所を訪れる”というアクションに新しい価値や意味を与えた。ゲームがリアルの行動を促進し、リアルな商品購買がゲームのアイテム獲得とリンクするなどして「新しいリアリティ」を創出する。こうしたリアリティの導入によって、地方店舗であっても全国から顧客を集めている事例も聞かれる。ケータイではリアルとバーチャルを横断する物語の力がユーザーを動かしている【2】。

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【1】ユーザーの最終購入アクションに結びつくのには複数のチャネルが関与し、
後押ししているケースが事例として増えてきている= Attribution Model(要因モデル)

「物語」で商品販売するのがケータイECサイト

メディアを横断・編集して“ユーザー体験”の物語をつくる、という手順はケータイECサイトのサービスづくりにおいても有効だ。物販と物語という組み合わせを意外に感じる読者もいるかもしれない。しかし、画面サイズが小さいために商品のスペック比較やWebサイト間での価格比較が難しいケータイECサイトでは、商品の詳細情報は強い決め手にはならない。だからこそ、ケータイサイト上に解像度の高くない小さな画像しか掲載していなくても商品が売れるのだ。むしろ重要なのはユーザーの思い入れや共感度の深さ。ユーザーを「物語」に参加させ、その中にどんどん引き込んでいき、購入へとつなげていく。
たとえば「これは人気読者モデルがプライベートで購入した洋服です」という情報は、あこがれのモデルが自腹で購入したモノと同じモノを持ちたい、という共感性を利用した売り方だ。バイヤーが仕入れるまでの苦労をブログで紹介するという売り方もある。これは「こんなに苦労して仕入れたんだ」というユーザーの感動を購入のきっかけにする売り方だ。ユーザーを商品開発ディスカッションに参加させるという方法もある。こちらはユーザーに「つくり手側」のプロセスを体験させ、物語の主人公をユーザーにするという方法だ。ユーザーの購入履歴データをもとに「物語(ストーリー)」をつくり、メールで個別にアプローチするという方法も有効だ。

購買履歴をもとにしたCRMという売り方

「当サイトで最近3カ月以内に○万円以上お買い上げのお得意様×名限定のお知らせです」とケータイメール配信をすると、ほとんどのPC向けサイトやケータイサイトで大きな反響が出る。メールを受け取ったユーザーは「○万円以上購入した」という抽出条件に思い当たるので他人事とは思えない。「×名限定」という限定数に自分が入っていると優越感を感じているうえ、先行バーゲンのお知らせなどである。着信したメールをほぼリアルタイムで確認するため、買わないと損をするような気分になってくる。こういう売り方は、一般的にCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)と呼ばれるが、ケータイにおいては“購買履歴をもとにした物語づくり”と言い換えたほうがしっくりくるc。
こうした販売はとても効果が高く、ケータイ向きの売り方だ。ケータイECサイト構築では、ユーザーの購買・行動履歴をどれだけ簡単に抽出できるか、それをもとに簡単にメール配信できるか、売り場(商品販売ページ)を機動的に運用できるか、といった条件を考慮してシステムを調達することが大切だ。「位置ゲー」のように、リアルとバーチャルを横断するさまざまな情報やアクションを編集してECサイトを楽しめる仕組みをつくることができれば、まだだれも知らないECサービスの形をつくり上げることができる。奇をてらっているようにも感じられるが、Webサイトに来訪した顧客を楽しませて購入へとつなげ、一度購入体験をしてくれた顧客をもっと楽しませる、という物語は顧客満足向上プログラムそのもので、ビジネスとしてはむしろ王道のアプローチなのだ。

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【2】実在する街や建物にゲーム的な物語を付加し、半現実・半仮想の世界観を楽しむ
「ARG」(Alternative Reality Game:代替現実ゲーム)のマーケティングへの活用も話題になっている

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【3】「ケータイCRM」の可能性は大きそうに見えるのだが、成功事例が少ないと言われている。
物語性に乏しい、企業の都合を押し付ける施策が多く、ユーザーに魅力的に感じられないからではないだろうか

Column ケータイサイトのデザインはどうなっていく?

今後、ケータイサイトのデザインはどうなっていくのか? ケータイサイトのデザイン制作に携わる人は確実に増えているが、ケータイ制作ではデザインに関する情報、参照できる情報ソースはとても限られている。そのような中で頼りにされているWebサイトが「モバイルデザインアーカイブ」(mobiledesignarchive.jp/)である。さまざまなサイトのデザイン事例がアーカイブされており、自由に閲覧することができる。同サイトでは(株)イオスとモバイルデザインを語るためのイベント「モバイルデザインかんふぁれんす」を不定期開催しているが、今後サイト上でもモバイルデザインについての情報や意見を交換できる場所を提供していく予定だという(2010年3月オープンの予定)。

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