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グーグル(株)でWebデザインを担当するウェブマスターチームのJerome Senaillat(ジェローム・セナヤ)氏(以下、ジェローム)。フランスで生まれ、パリでデザイナー活動をした後に日本へ。今回のキャンペーンではWebサイトの制作を担当した。サイト制作の話や個人的なデザイン観を語ってもらった。
──実際、今回のキャンペーンはどう思いました?
ジェローム●ファッションショー編(「画像検索で、fashion show」)とか、スマートでしたね。あとはプロダクトそのものだけではなくて、プロダクトの周辺にあるウィットなアイデアがおもしろい。プロダクトがベースに創造がふくらんだキャンペーンだと思ってます。
──映像制作現場には行かれましたか?
ジェローム●今回は行ってません。Webサイトの制作は映像制作が終わってからの作業でした。制作会社の方々とコンセプトを話し合ってアートディレクションしていったのですが、Webにユーザーが来たら何をしたいか、目的をはっきりさせようと。あと今回はブランディングでしたから、Googleのポリシーを伝えようと。あまり時間がなかったので、1週間で4つぐらいアイデアを出しました。最初はFlashを使ったモザイクみたいなアイデアもあったけれど、すごく重い(笑)。もっとテレビコマーシャルの内容を見せた方がビジター的にクリックしたくなるのではと、王道的なデザインに収まりました。
今回ジェローム氏によってデザインされた、“1週間で4つくらい出したアイデア”のボツ案
──ところで、日本で働くきっかけは何だったのでしょうか?
ジェローム●偶然(笑)。もともと日本のデザイン好きだったのですが、いろいろありますよね。シンプルな“わびさび”だったり、グッチャグッチャなものまで。そういうものを見て回ろうと1年間いようと思ったら、いつの間にか5年も経ってしまった。
──Googleでデザインの仕事をするのはどうですか?
ジェローム●自分はもともと広告、Web制作のバックグラウンドがあるのですが、シンプリシティはチャレンジだと思っています。デザイナーとしてはいろんなものを追加していくほうが簡単な道で、やっぱり自分のセンスとか認めてほしいじゃないですか。でも、コンテンツの内容を中心にするインフォメーション・アーキテクチャはデザイン以上のものが必要となる。だからおもしろいです。
──今回ジェロームさんが制作されたサイトはシンプルにデザインされたように見えますが、本当はもっと盛り込んでいくデザインが好きですか?
ジェローム●そうかもしれません。でも、デザインは機能性も重要ですから。プロダクト用のデザインというか、GoogleやAmazonはデザインがないと思われるかもしれませんが、すごく機能的になっているんですよ。それはユーザーをメインにしているからです。デザイナー向けのデザインで「これ凄いな!」と思うこともありますが、それは業界の中で終わってしまうことも多い。だから、実際にユーザーが考えずに使えるようなクラシックも追求したい。
──今後、Googleで「こんなデザインをしてみたい」という目標はありますか?
ジェローム●レスポンシブデザインですね。CSSでさまざまなデバイスに対応して、同じデザインだけど画面サイズに合わせることができるレゾリューション。モバイルが重要になってきているので、デザイナー的にもチャレンジの時代じゃないですか。ドロップダウンメニューってよくあるけど、マウスがないタブレットだとどうしますか? そういうことを考えた、フレキシブルなインターフェイス・デザインをやってみたいと考えています。いまWebが印刷の世界と近づいてきて、やっとそれができるようになった。これからが楽しみです。
(取材・文=増渕俊之 2011年2月28日)
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