web creators特別号 |
HTML5・スマートフォン・SNS・Webアプリケーション Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策 |
Webアプリ・リッチコンテンツ 3-03
オフラインでも使用可能なGoogleアプリケーション
メール、ドキュメント、マップなど、Googleが提供するWebアプリケーションは有用性が高く、必須のものが多い。その上、最近になってオフラインでも動作するよう改良が加えられている。まだ発展途上だが、オフラインGoogleアプリケーションについて解説しよう。
制作・文/白木達也(アローグ・プランニングス)、飯塚まり子
Browser Chrome 16over
クラウドソリューションの弱点
最近のネットワーク環境における大きな流行のひとつがクラウドだ。当初は様々なサービスが登場したが、徐々にいくつかのスタンダードツールに集約され、今はちょうど、クラウドコンピューティングを活用したソリューションが次々と登場している、という段階である。ただ、クラウドにはひとつ致命的な弱点がある。当然の話ではあるが、ネットワークに接続していなければ、プログラムを立ち上げることもデータを呼び出すこともできないということだ。モバイルコンピューティングが普及しつつあるとは言っても、外出先の全てでネットワークにアクセスできるとは限らない。そしてクラウドは、ネットワークにつながっていないと利用できない。すべてをネットワークに置くクラウドコンピューティングは、そういったリスクも抱えている。
オフラインでも使用可能な「Google Gears」
その問題を乗り越えるため、クラウド上のアプリケーションであっても、必要に応じてオフライン環境で使えるようにすることが考えられた。Googleはかつて、Google Gears の名称でサービスを公開し、オフライン環境においてもWebアプリケーションを動かす試みを続けてきたが、2010年早々にこのツールの開発を終了してしまった。それが2011年になって、オフラインツールとして復活した【01】、というわけだ。これは、単に以前のGoogle Gearsが復活したというわけではない。Google Gearsの機能をHTML5に完全対応させる形で再構築し、これらの機能をWeb標準でサポートしている同社のブラウザ・Chromeで再現させている。逆にいえば、Chromeというプラットフォームがスケールアップしたことで、Google GearsをHTML5に移行させる環境が整った、ともいえるだろう。
そもそもクラウドサービスは、ユーザーに対しては「どこからでもデータにアクセスできる」というメリットを与えるが、それ以上に「インストール、管理、バージョンアップを一元化する」というシステム管理者にとってのメリットが大きい。特にWebアプリケーションをクラウドで利用する場合は、そのメリットを実感しやすいだろう。
【01】現在のGoogle Gearsのウェブサイト。なおChrome15でアクセスすると、サポートしていない旨が表示されるので注意。
実際の使い勝手
サービス開始当初にGoogleが用意したオフラインWebアプリケーションは、特にユーザー数の多いGmail、Googleドキュメント、カレンダーの3種類である。Gmailでは、送受信したメールをローカルに保存し、オフライン環境でもアクセスすることができる【02】。もちろんメールの作成や削除も可能だ。ただし、送受信については次にネットワークでアクセスした場合にネットワーク上のGmailアカウントに反映される。
他にも、カレンダーでは予定の確認やイベントへの出欠入力、ドキュメントでは文書の閲覧が可能となっている【03】。オンライン状態のときに比べて機能が限定されていることが多いが、今後のバージョンアップなどで対応されるはずだ。
【02】オフラインGmailの画面。デフォルトのUIはiPadのメールアプリケーションに近く、2カラムの左側にメールのヘッダ情報、右側に本文などが表示されるようになっている。
【03】オフラインGoogleカレンダーの画面。
Chrome用のオンラインアプリ
さらに、サードパーティから、ChromeのためのオフラインWebアプリケーションが次々に登場している。ウィキペディアリーダーの「OfflineWiki」【04】、ウェブサイトをローカルに保存してオフラインでもアクセスできるようにする「Read Later Fast」【05】、複数のデバイスに分散されたファイルをWebベースで統合管理できるシンクロツール「Fiabee」【06】なども、注目を集めるChrome用Webアプリだ。これらはすべて、Chromeウェブストアから入手できる【07】。
【04】ChromeウェブストアでのOffline Wikiの画面。
【05】ChromeウェブストアでのRead Later Fastの画面。タブの一覧画面の様子がわかる。
【06】ChromeウェブストアでのFiabeeの画面。画像や文書、フォルダなど、さまざまな形式のデータが共有できるようになっている。
【07】Chromeウェブストアで「オフライン」をキーワードに検索した結果のリスト。カレンダーやGmailのほか、サードパーティのツールも充実しているのがわかる。
オフライン化の未来
とはいえ、こういったオフライン化は、決してGoogleのアプリケーションをローカルで完結させるためのものではない。Gmailはもちろんのこと、カレンダーやドキュメントも、あくまでオンライン状態に対する補完関係という位置づけであるクラウドサービスはネットワークが前提となっている。にも関わらず、ネットワークに繋がっていないときでもアプリケーションにアクセスできることが、クラウドサービスの利便性を高めることになるというのは、実に逆説的だ。しかしモバイル環境では、ネットワークに繋がっていない状態を無視できない。そのため、Googleは先ほどの3種類についてもさらなる開発を進めている。いずれスタンドアローンでもGoogleドキュメントが編集できるようになるだろう。そうなると、アプリケーションをローカルディスクにインストールするほうが珍しい、といった潮流が生まれるかもしれない。
[目次に戻る]
【本記事について】
2012年1月28日発売のweb creators特別号「Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策」から、毎週記事をピックアップしてご紹介! HTML5・CSS3によるコーディングから、次々と生まれてくる新しいソーシャルサービス、Webアプリケーション、スマートフォンやタブレット端末への対応など、いまWeb制作で話題になっているトピックを網羅した内容になっています。
※本記事はweb creators特別号『Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策』からの転載です。この記事は誌面でも読むことができます。