1年生になったら～ 1年生になったら～♪ ということで、デザイナーという職業に憧れる読者のみなさんに先駆けて、一足早くデザイナーになった先輩デザイナーの1週間を追いかけるのが、このコーナーです。夢を現実にした新人デザイナーの仕事と生活ぶりは実際どのような感じなのでしょうか？ 毎月第3週に、その曜日の出来事をお届けします！
今月の1年生デザイナー
岩村萌子さん（カジグラ）
〔プロフィール〕
いわむら・もえこ●東京生まれ、福岡育ちの29歳。地元の高校を卒業後、熊本大学・教育学部に進学。教育について広く学んでいたが、就職活動をするにあたって、あらためて仕事について考えてみた結果「自分がいちばん好きなことを仕事にしたい」という思いを強くする。もともと絵を描くのが好きだったということもあり、新たにデザインの勉強をはじめることを決意。大学卒業後、福岡デザイン専門学校に進み、グラフィック、パッケージデザインを学ぶ。専門学校卒業後は、福岡の印刷会社に就職。クライアントとデザイナーをつなぐ役割を担い、さまざまな印刷物にたずさわる。その後、さらにクライアントの役に立てる仕事に就きたくなり、縁のあったカジグラに転職を果たす。入社して9ヵ月、デザイナーとしてのスタートは遠回りだったかもしれないが、日々、さまざまなデザインに挑戦中。彼女の目標は、これまでの自分のキャリアを活かして、きめ細かくクライアントのリクエストに応えられ、将来的には企画などからより深く仕事に関われるようになること。そんな岩村さんの、多忙な一週間をお送りします！
カジグラとは？
2007年設立。アートディレクター・ロゴ家の梶原道生氏が率いるデザイン事務所。企業・団体のロゴ制作やグラフィック広告を中心に、ブランディング、営業戦略、コンサルティングなどをトータルに見据えたデザインを手がけている。
http://kajigra.com/
月曜。朝から嬉しいニュースあり。
7:30 起床
9:30 出社
今朝は、弊社社長が関わっていた「日田きこりめし弁当」が、ADC賞に選ばれたという嬉しいニュースがありました！「日田きこりめし弁当」 とは、大分県日田市を中心に林業の再生を考える多種多様な人材で構成する任意グループ「ヤブクグリ」が開発した弁当のこと。「丸太に見立てたゴボウを小さなのこぎりで切りながら食べる」という非常にユニークなものです。のこぎりも弁当箱も日田杉でつくられており、弁当の中身も鶏肉、椎茸、煮玉子など、すべて日田産の素材で作られています。
▲「日田きこりめし弁当」ポイントは、ごぼうを小さなのこぎりで切るところ！
この「日田きこりめし弁当」は、ヤプクグリ第一弾のオリジナル商品です。もともとは弊社社長が日田出身で、間伐材に興味のあった画家の牧野伊三夫さんを連れて日田に一緒に行ったことがきっかけとなり、「ヤブクグリ」発足のきっかけとなったそうです。この弁当は、もう一人の中心メンバーであるアートディレクターの富田光浩さんが全体のデザインを担当し、弊社社長は「名産品係」ということで弁当の中身や容器についての細かな検討を担当、調整役としてたずさわりました。このお弁当の背景には、輸入材に押され、補助金なしでは維持できない林業の現状という切実な問題があります。デザインの力を使って、広く世の中に問題提起を行うことができることに、素直に感動しました。
9:50 仕事スタート
会社に到着すると、毎朝、まずは掃除からスタート。その後、メールチェックをするのが一連の流れです。先週、カメラマンさんとお打ち合わせをしてお願いしていた商品撮影の画像確認についてのメールが、早速届いていました。信頼できるカメラマンさんが近くにいらっしゃるので、とても心強いです！
10:00 カレンダーのネタ探し
ある企業の顧客用カレンダーのコンペの相談が、広告代理店さんから来ました。デザインというよりも、企画勝負のコンペです。「VIP向けのカレンダーなので、絵画を素材にしたい」というオーダーにもとづき、ネタを探します。が、なかなかいいものが見つけられません。こういうときは、本当に日々の生活の中での知識や見聞がモノをいうと思います……どうしよう……。
▲ネタ探し中。今のところ、まだ白紙のノート
11:00 食品ラベル修正→確認
先週、先方に提出していた食品の瓶ラベルの修正依頼がメールで到着していたので、今日の作業はこれから始めます。小さなツールですが、原材料や内容量といった、絶対に間違ってはいけない情報が入っているので慎重に進めます。一度修正したあとも、自分で必ず確認。ラベルなどはどうしても文字が小さくなってしまいますが、その制約の中でも、少しでも見やすくできるように勉強中です。
12:00 ランチ
今日は、近くの定食屋さんでランチ。ここのロゴマークも弊社社長の制作です。社長の梶原道生は、肩書きに「アートディレクター／ロゴ家」と入れています。これはつまり、とりわけロゴの制作に力を入れているということでもあります。企業や商品の良さを消費者にダイレクトに伝えるのがロゴの役割。ロゴを見て「お店に入ってみようかな」「何となく良さそうだから見てみよう」と、感じてもらえるように制作しています。
▲このロゴを社長が手がけました
▲社長のロゴデザインへの思い、会社紹介の挨拶でも綴っています
13:00 カレンダーのネタ探し
午前中に引き続き、カレンダーのネタ探しに入ります。少し前に話題になった「富士山と三保の松原が世界文化遺産に認定された」というニュースを思い出し、富士山の絵を集めてみました。それに加えて、九州ゆかりの画家についてもリサーチしてみました。ネタに困っていましたが、タイムリーにトピックがあったのでとりあえず解決。デザインも社会の中のものなので、あらためて、社会の動きやニュースについても興味を持つことが大事だなと感じました。
13:30 入稿データ作成
某ジェラート屋さんの商品に貼るシールが校了になったので、入稿データを作ります。制作後、出力して確認していたら、文字が少しだけズレていることに気がつきました。慌てて修正。危ないことろでした……。作業中、意図しないところを触ってしまうことがあるので要注意です。
14:30 食品ラベル海外用制作
午前中にラベルを提出したお客様より、デザイン流用で、もう１種類ラベルを作ってほしいとの追加発注が来ました。パッケージやパンフレットなど、商品まわりのものを一括してご依頼いただいているので、細かいツールの制作もたくさん発生してきます。文字のバランスを何パターンか制作して、切って、巻いてみて……実際のイメージや商品が置かれる場面も想像しながら制作していきます。
▲デザインした食品ラベルを、切って巻いてみます
15:30 入稿データ作成
以前、ロゴ、名刺、診察券、シール、封筒などの一式を制作させてもらった病院から、名刺の増刷依頼がありました。印刷会社さんに連絡をとり、すぐに手配。また、新たにリーフレットを作るお話も進みそうなので、嬉しいです。
16:30 ライターさんと打ち合わせ
タブロイド型の冊子を制作するため、ライターさんとお打ち合わせ。一度、お客様に提出しているラフをさらに詰めて行くため、少し細かいところまでお打ち合わせをしました。明日からは、この冊子の制作もお手伝いさせてもらいます。
▲タブロイド型の冊子制作について打ち合わせ
17:30 食品ラベルの修正作業
早速、メールでお送りしていたラベルの修正が戻ってきました。急いでいるようなので、すぐに対応しますが、私はまだまだ何をするにも時間がかかってしまうので意識して作業に取り掛かります。社長からは「もっと効率よく！」という点で、よく注意されるので、もっと意識していかなければ！
18:00 シールサイズ変更、そして「のし」の制作
その後、博多の郷土料理である水炊きの某専門店さんから、シールサイズ変更の連絡が来たので対応します。また、同店の「のし」の制作にも取り掛かりました。まずは、のしのパーツを作っていきます。
19:30 退社
明日のタスクの確認、郵便物のまとめ、雑用などを終わらせて帰宅します。以前は、人の多い会社にいたので、総務部の人がやってくれていたようなことも、今の会社ではやることになりますが、それも勉強になると感じています。
20:00 友人と食事
今夜は、前職の友人と女子会。月曜日から大好物のお寿司屋さんで、2時間飲み放題・3500円なり。おいしすぎて、写真を撮るのを忘れました……。迷いや悩みがないわけではないけれど、こうやって気の合う人とおいしいものを食べて、わいわい話して、明日への活力にします！ ……という、月曜日から贅沢してしまった言い訳……。
23:00 帰宅
24:30 就寝
[目次]
月曜。朝から嬉しいニュースあり。
木曜。「K-ADC AWARD 2013」準備をしながら、納品も。
