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 スポットインタビュー 
INTELYの再挑戦
―ビジネスSNSとして低迷した理由と次の一手(前編)


2012年8月22日にサイバーエージェントが手がけるビジネスSNSとして大きな注目を集めた「INTELY」(インテリー)。1年強が経過した2013年9月5日、INTELYはコンセプト、デザイン、機能を大幅にリニューアルし、新しく生まれ変わっている。新たなビジネスメディアへの挑戦としてはじめられたINTELYにはどのような課題があり、今回のリニューアルでなにを目指そうとしているのだろうか。渡邊大介さんと齋藤隼一さんにうかがった。

>>> 後編:「INTELYの次の一手と今後の展開」

齋藤隼一さんと渡邊大介さん

株式会社サイバーエージェント
ビジネス事業部
プロデューサー
齋藤隼一さん(左)

株式会社サイバーエージェント
ビジネス事業部
事業責任者
渡邊大介さん(右)


INTELYとは

エンターテインメント性の高いコンテンツを提供し続けているサイバーエージェントがビジネスパーソンに向けたSNSとして2012年8月にリリース。2013年9月に新たにリニューアルし、「メモでつながるビジネスブログ」というコンセプトで“学びを応援する”サービスとし、日常の学びや気づき、経験などを共有する場として新たなスタートを切っている。
オフィシャルサイト:http://intely.jp/



 Interview 

INTELYの前に立ちふさがった大きな壁とは


渡邊大介さん
[渡邊大介さんプロフィール]
青山学院大学国際政治経済学部を卒業後、2006年にサイバーエージェントに入社。アカウントプランナーとして大手飲料、保険、通信系クライアントのウェブキャンペーンプランニング、デジタルマーケティング業務支援に携わり、その後、ソーシャルウェブを基軸としたマーケティング/プランニング組織・SMM Div.を立ち上げ、事業責任者に就任。2011年10月よりビジネスSNS「INTELY」の企画開発に従事し、現在はビジネスメディア事業部でビジネスパーソン向けのサービスを取りまとめている。
――INTELYの立ち上げはMdNも注目し、インタビュー記事でも取り上げさせていただきましたが、改めて開発のきっかけについてお聞かせください。

渡邊●ビジネスSNSのLinkedInがグローバルで億単位のユーザーを獲得しているのにも関らず、日本国内ではあまりユーザーを獲得できていない現状を見て、ここにビジネスチャンスがあると考えたのが最初のきっかけです。難しいといわれているこの分野で、さまざまな企業が挑戦しては失敗しているところに、あえて挑戦してみようと考えました。Amebaのノウハウやコミュニティ運営の技術を活かせれば、日本国内でビジネスSNSが定着しないという現状をくつがえすことができると思いましたね。

――企画段階で、どのようなコンセプトにしようと考えられたのですか。

渡邊●まず、なぜLinkedInが流行しないのかというネガティブサイドから考えました。多くの分析がなされていますが、SNSとしてはFacebookが抜きん出ているため、“LinkedIn=転職活動をやっている”という印象になってしまうという声を多く聞きましたね。また、海外では使いやすくても、日本のビジネスパーソンには合わない部分もあると感じたため、日本人に合ったコンセプトで日本人が使いやすいものをつくろうと思いました。我々日本人には“収集することが好き”という文化があると思います。そこに行けば必要な情報が人を介して集まってくるという場をつくれば、ビジネスマンが利用できるSNSとなるという最初の仮説を立てました。

――ユーザーの投稿を情報として活用することでつながる、ということですね。

渡邊●いきなりユーザーに情報を流せと言っても難しいと思ったので、今日学んだことを投稿してくださいという形にし、そのうえで皆が学んだ情報をシェアできれば、ためになる情報の収集を通じて人脈形成に役立つと考えました。情報収集や学びのためにやっているという建前があれば、LinkedInのような転職活動をやっているという印象を人に与えなくてすみますし。

――リニューアル前までには、どのような機能を提供し、サービス化していったのでしょうか。

渡邊●機能的には、職種や関心テーマ別のネットワーキング機能をつくり、同じ話題をもつ人で集まれるようにしました。Facebookはリアルでもつながっている人が多いですが、INTELYでは職種やテーマがきっかけで、新たなつながりが生まれるようにしたかったのです。年末年始にはイベントも開き、実際のリアルな交流を通じてコミュニティが活性化するようにしていきました。

2013年9月5日にリニューアルされたINTELYでは、“メモでつながるビジネスブログ”という新しいコンセプトが掲げられている
2013年9月5日にリニューアルされたINTELYでは、“メモでつながるビジネスブログ”という新しいコンセプトが掲げられている
――そのような機能改善や活動の中で、新たなサービスにどのような手ごたえを感じ、どのような課題があると考えたのでしょうか。

渡邊●INTELYの立ち上げ当初は、サイバーエージェントがビジネスSNSをはじめたということで注目を集め、広告などを出さなくてもさまざまなメディアに記事にしてもらえたので、最初の1カ月で2~3万人の会員数を獲得し、滑り出しは好調でした。しかし、サービスサイドとしては、多くのユーザーに使っていただく体制になっておらず、せっかく初期段階に参加してくださった会員の方々が続けにくい状態になってしまったことが、大きな反省点ですね。我々としては、最初はサービスに向き合い、よりよいものとしていかなければなりませんでした。しかし、ソーシャルは人がコンテンツであるため、私としても会員数をもっと増やしたいと考えて露出を増やすことに注力してしまい、サービスに目を配れなかったと感じています。

――ユーザーからはどのような声が寄せられていたのでしょうか。

渡邊●「今日の学び」というラベリングと「Agree」というボタンのハードルが高いという声が多かったですね。1日の中でなにも学ばなかったということはなく、なにかしらを読み、なにかしらの気づきがあるはずと我々は考えていたのですが、実際は今日なにを学んだかを意識していないと投稿することができません。SNS全体の投稿量が少なくなれば、我々が目的としていた情報収集をユーザーができないことになります。また、「Agree」についてはAgree(同意・賛同)しないとボタンが押せず、「いいね」のように社交辞令で簡単に押すことはできないと感じられてしまったようです。投稿した側からすれば、「Agree」の数が少なければ反応が低いと感じてしまい、モチベーションが下がってしまいます。企画段階からある程度質の高い投稿をしてもらいたいと考えていたので、投稿のハードルを上げ、それに対する支持もハードルを上げたほうがよいと考えていましたが、結果的に投稿やレスポンスが少なく、成果を実感できないサービスとなってしまいました。

――ユーザーの声に対して、どのような改善を行ってきたのでしょうか。

渡邊●改善に関しては、試行錯誤をし過ぎたということも反省点ですね。立ち上げ段階ではつくりこまずに、ユーザーの声を聞きながら改善できるようにしようと考えていたのですが、前述のように最初から多くの会員を獲得でき、意見を聞きながら改善し過ぎたため、最初のコンセプトから徐々にずれていき、ユーザーも離れていったのだと感じています。匿名性の高いサービスであれば、ユーザーは顔の見えない状態でサービスに対する意見を出してくるので、多数の意見から対応して改善していくことができます。しかし、実名で実際にもお会いしたことがあり、多くの投稿を行ってくれる方々から改善要求が上がってきた場合、どこまでその意見を加味して改善するのかが難しいという問題もありました。2013年3月くらいから、イチから考え直す必要があると考え、リニューアルを企画しはじめたのです。

――大幅なリニューアルを企画するにあたって、どのようなことを考えらましたか。

渡邊●サービス面の課題もありましたが、組織的な部分も変える必要があると思いましたね。私自身は対外交渉の意識が強い人間であるため、リニューアルにあたってはプロダクトから離れなければならないと決断しました。これまでは、モノづくりとビジネスサイドの両方をひとりで考え過ぎてしまっていたという反省から、モノづくりとビジネスサイドを分業としなければならないと考えたのです。そこで2013年4月に、INTELYのサービスだけを考える責任者を置き、私自身は組織のマネジメントやビジネスサイドの役割を行うように分担しました。

齋藤隼一さん
[齋藤隼一さんプロフィール]
一橋大学商学部を卒業後、広告映像制作会社を経て、2008年にサイバーエージェントに入社。ソーシャルウェブを基軸としたマーケティング/プランニング組織・SMM Div.を渡邊氏と立ち上げ、自動車、通信、飲料系など数多くのクライアントのコミュニケーションプランニングに携わる。2013年4月からは渡邉氏に代わって、INTELYのプロデューサーとして従事。今回のリニューアルの中心となって、サービスの見直しを行っている。
――新たにINTELYのプロデューサーとなった齋藤さんは、立ち上げ当初からINTELYの開発に関ってきたそうですが、リニューアルに対してどのようなコンセプトを考えられたのでしょうか。

齋藤●2013年4月からINTELYの担当となり、「投稿の質を下げずに投稿数を増やす」というジレンマをどのように解決するか考える際、実際にサービスを利用しながら悩みました。まず、自分自身がビジネスシーンの中での学びや気づきをどのように記録していたかを振り返ってみると、スマートフォンのメモ機能やEvernoteなどを使っています。これらは自分のために記録して蓄積しているものですが、公開すれば人のためになるし、相互作用が起きればユーザー全体がビジネスパーソンとして成長できると感じました。そこで、リニューアルのコンセプトとして“メモでつながるビジネスログ”というものを掲げたのです。

――議論を最初から考えるのではなく、自分のメモを公開するというところからはじめられるようにハードルを下げたということですね。

齋藤●そうです。


(取材・文・撮影:野本幹彦)


>>> 後編:「INTELYの次の一手と今後の展開」

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