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【インドのデザイン、ビジネス&テクノロジーレポート】迫りくる“インドの時代”を垣間見た、PwCのインドセミナー

2019.2.24 SUN

【インドのデザイン、ビジネス&テクノロジーレポート】

迫りくる“インドの時代”を垣間見た、PwCのインドセミナー


2016年に設立された携帯キャリアのジオは、画期的な低価格戦略を打ち出し、独り勝ちの様相を呈している

2016年に設立された携帯キャリアのジオは、画期的な低価格戦略を打ち出し、独り勝ちの様相を呈している

独自のダイナミズムで動くインド市場


デザイン&イノベーションコンサルティング企業、クイックサンドの共同創立者のアユシュ・チョハン氏は、グーグルや世界銀行、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などで社会問題を解決するプロジェクトを指揮してきた経歴を持ち、デザインの活用による社会の公平性や公衆衛生、教育の充実などを目指している。

同氏は、インドで最近起こった破壊的改革の例として、インドの巨大コングロマリットであるリライアンス・インダストリーズによって2016年に設立された携帯キャリアのジオの例を挙げ、データプランの料金がその年を挟む4年間で93%も下落して世界で最もローコストになったことを指摘。その結果、インド全体の月間のデータ利用量は15倍に増え、国民の約9割がモバイルインターネット環境を享受できていると言及した。

また、2000ドルからという低価格で心臓外科の開胸手術を行い、低所得者の命を数多く救ってきたナラヤナ・ヘルスというインドで2番目に大きなヘルスケア運営企業の例では、ソーシャルインパクトを与える事業に不可欠な3つの原則について述べた。それらは、(1)チャリティではなく健全なビジネスモデルを構築すること、(2)目的を明確に設定してチームを結束させること、(3)規模の大きな医療エコシステムを確立することであり、ナラヤナ・ヘルスに代表されるヘルスケア分野の改革がかつてない規模で進行しているという事実も報告された。
インド固有の社会インフラやサービスを説明するアユシュ氏

インド固有の社会インフラやサービスを説明するアユシュ氏

日本でも馴染みのある駅の無料Wi-Fiやグーグル・ペイに対し、ダウンロード再生可能なユーチューブ・ゴーはインド発のサービスだ

日本でも馴染みのある駅の無料Wi-Fiやグーグル・ペイに対し、ダウンロード再生可能なユーチューブ・ゴーはインド発のサービスだ

インドでは、日本でも普及しつつある鉄道駅における無料Wi-Fiや、グーグルの電子決済システムであるグーグル・ペイも導入されているが、通信状態が悪い地域でもユーチューブの動画をストリーミングまたはダウンロードして楽しめるユーチューブ・ゴーは、元々インド向けサービスだったものが世界130ヵ国(日本は除外)に広まった経緯がある。

続いて、ストリーミングによる登壇となったアニシャ・シン氏は、TEDxなどでも講演し、米国以外の女性起業家トップ7にも選ばれた影響力のあるビジネスウーマンで、女性目線で投資先を決定する企業投資ファンド、シー・キャピタルの創立者だ。同氏は、起業家の立場からインドで注目すべき起業の動きを紹介し、同国で成功するには「ジュガール」の姿勢が重要であると指摘した。

「ジュガール」とは、ヒンディー語などで「間に合わせ」を意味する言葉だが、転じて、限られた資源で最善を尽くす、あるいは、幾多の障害を乗り越えながら地道に改良を重ねていくことを指す。この概念を提唱したジャイディープ・プラブ氏によれば、入手しやすく、品質を重んじ、持続可能な製品やサービスを開発できることが、ジュガール・イノベーターの資質であるという。何事が起ころうと臨機応変に対応していく姿勢は、インド人の日常生活でも見られるもので、これからの不確実な社会においては他国のビジネスが参考にすべき指針の1つといえるだろう。
ストリーミングよって参加したアニシャ氏はインド独特の概念である「ジュガール」について説明した

ストリーミングよって参加したアニシャ氏はインド独特の概念である「ジュガール」について説明した

最後に登壇したロイストン・ブラガンザ氏は、英国のファイナンス・マンスリー誌によってアジアのトップCEOの一人として選ばれた人物で、グラミーン・キャピタルを創立して零細ビジネスや社会事業者の市場参入を手助けしている。女性の小規模起業家を支援するサ・ダンの会長も務めており、それらの経験から、社会に長期的な価値を生み出す「インパクト投資」をテーマに講演を行った。
日本とインドのパートナーシップが両国にとって有益であることを力説したロイストン氏

日本とインドのパートナーシップが両国にとって有益であることを力説したロイストン氏

ロイストン氏は、インドが今、ブラジルや中国を抜いて、最も魅力的な投資先であることに触れ、日本の豊富な資金と最先端技術が、可処分所得の増えつつあるインドの若い層と融合することによって、社会全体の包括的な成長と持続可能な開発が見込めると締めくくった。

このようにインドのトップクラスの企業人や投資家は、自身のビジネスや投資を社会的な意義のために行うという意識が高く、躍進しつつある祖国に貢献する気持ちも強い。それは、過去に日本も歩んできた道であり、そのノウハウを交流の中で活かすことができれば、両国の友好関係はさらに発展していけると確信した。
[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。
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