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伝統とモダンな感覚が融合するインドのデザイン事情~インドを代表するデザインオフィスに訊く~スタジオABD(後編)

2020.10.24 SAT

[インドを代表するデザインオフィスに訊く]
伝統とモダンな感覚が融合するインドのデザイン事情
「スタジオABD」後編
BPLスタディライト

BPLスタディライト

インドの価値をデザインに取り込む
2008年にスタジオABDを設立し、インドの家電メーカーであるゴドレジの洗濯機や、このBPLスタディライトという学習用の電気スタンドをデザインしました。

インドでは、今も停電が起こりますが、このスタディライトには充電池が内蔵されていて、急に電気が止まっても、8時間は使い続けられるようになっています。ライトの円形のモチーフは、子どもたちを見守る天使のイメージからインスピレーションを得ており、2010年のRed Dot Design Awardsを受賞しました。

他には、パッケージデザインも行っていて、インドのローカルブランドを国際的なものにしていくためのサポートをしています。

フードデザインにもインドの文化を反映させていて、インド人は食べ物を分け合う習慣があります。そこで、ルシャス・デリシャス!というチョコレートでは、分けやすくすると共に、それが本来持っている罪深い快楽の食べ物という側面を形に込めてみました。一般的な、角ばって格子状の溝がある形状は生真面目すぎて、チョコレートの本質を表していないと感じたからです。
インドのチョコレート「ルシャス・デリシャス!」

インドのチョコレート「ルシャス・デリシャス!」

また、化粧品のデザインにおいても、シルパ・リキッド・クムクム(クムクムとは、インドの女性が額につけるビンディと呼ばれる装飾のためのパウダー)のボトルは、グーンガットという伝統衣装を身に纏った女性のシルエットをイメージし、キャップもビンディの形を意識しています。
シルパ・リキッド・クムクム

シルパ・リキッド・クムクム

さらに、インドでは若い人たちが環境保護の観点からプラスチック製品の利用に疑問を持ち始めていて、リユース(再利用)可能なボトルへの関心が高まってきました。そこで、インド最大のボトルメーカーは、「リユージアム」(リユース+ミュージアム)というユニークな博物館を作ることになり、そのデザインにも関わっています。

インドでは、あらゆることが急速に発展していて、法律が追いつかない状況です。その結果、政府の政策とは別に、民間ベースで色々な取り組みが進むようになりました。それで、リサイクルに関する意識も高くなり、素材を再利用した二次製品が数多く作られているのです。
伝統とモダンな感覚の融合
クライアントワークとは別に、自分たちの取り組みとして「ムビ」のブランド名でオリジナル製品も生み出してきました。私たちは、単なるミニマリスト的なアプローチはインド人には適さないと感じていて、現代的でありながら贅沢さも併せ持つことが必要だと思っています。

たとえば、ラムディアという手作りのセラミック製装飾用プレートは、ジャイプールにあるランバーグ・パレスのロータスの噴水にインスパイヤされたもので、3層に分かれたプレートがハスの花のように折り重なっています。そこに花を浮かべたり、ロウソクを灯して、インテリアとして利用することを意図しました。

また、インドの行者が自らの体に金属の串を突き刺して行う修行がありますが、それにヒントを得た一輪挿しの花瓶が、アルベイズです。チャナパトナという町の工芸技術と強力なマグネットを組み合わせ、テーブルの天板や棚板を挟み込むようにして飾ることができます。

ボリウッドの映画やヨガ、アーユルベーダ、カレーのように、インドのデザインも、私たちの文化を世界中の人々と共有することができると考えています。それは、中国の工場で生産された製品とは異なる価値を提供するものなのです。
セラミック製装飾用プレートの「ラムディア」

セラミック製装飾用プレートの「ラムディア」

一輪挿しの花瓶「アルベイズ」

一輪挿しの花瓶「アルベイズ」


[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(共著、同文館出版)。
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