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インドで重要なことは"Get thing done."、つまり完了させるかどうか~インドを代表するデザインオフィスに訊く~スタジオABD(前編)

2020.10.24 SAT

[インドを代表するデザインオフィスに訊く]
インドで重要なことは"Get thing done."、つまり完了させるかどうか
「スタジオABD」前編
2020年1月23日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)


台頭著しいインドで活躍するデザインオフィスのトップを取材し、そのインサイトを共有するインタビュー記事。前回は、同国のデザインの中心地であるプネを本拠地とするエレファントデザインを紹介したが、今回は、欧米のIT企業も社屋を連ねるバンガロールでクライアントワークと自社ブランドの製品開発の両方を手掛ける「スタジオABD」の共同創立者で代表のアブヒジット・バンソッド氏を採り上げる。
オフィス件ショップ

オフィス件ショップ

社屋は、街道の喧騒から逃れた公園のようなエリアの一角にあり、1階部分が独自製品を販売するショップ、2階部分が実際のデザインオフィスとなっていた。

なお、今回のインタビューのアレンジメントも、日印の架け橋として日本企業向けの視察・リサーチ業務、スタートアップとのマッチング、インド関連イベントのプロデュースなどを行っている「ムーンリンク株式会社」にしていただいた。
制約が厳しいほどインド人は能力を発揮する
まず、インドと他の国の違いについて、お話ししたいと思うのですが、日本の企業では、今もファックスが使われていると聞いて、少し驚きました。インドでは、ほぼ使われなくなった機器だからです。

日本ではプロセスが重視されますが、インドで重要なことは、"Get thing done."、つまり完了させられるかどうか。途中経過はどうあれ、また、完璧ではないかもしれませんが、ともかくやり遂げることを目指します。

そして、インド人は目の前の細かな問題に取り組むことが好きです。そうやって、様々な問題が解決されていくのですが、その弊害として、大きなビジョンに基づくシステムを考えたり作り上げることは苦手な面もあります。

1つ、興味深いエピソードを紹介しましょう。2010年から2015年にかけて、ヨーロッパから多くのデザイナーがインドにやってきました。その中には、フロッグデザインなども含まれていたのですが、不況の影響でヨーロッパではデザイナーが余ってしまい、インドに仕事を求めてきたのです。

しかし、いざ何かのプロジェクに参加してデザイン作業を始めてみると、必要な情報の全体像がわからないことに不満を持っていました。インドでは、そのようなことがよくあります。場合によっては、予算が削られたり、納期が短くなるかもしれません。

ところが、私たちにとってはそれが普通なので、パニックにはなりません。そこで諦めるのではなく、当初よりも少ない予算や納期の中で、プロジェクトを完了するにはどうすれば良いかを考えるのです。極端にいえば、制約が厳しいほどインド人は能力を発揮しますが、逆に潤沢な予算があって完全に自由にして良いといわれたら、どうして良いかわからなくなる可能性もあります(笑)。

ITに関しても、アメリカが過去50年かけて行ってきたことを、インドはこの10年で駆け抜けているような状態です。ともかく、スピード感が重視されています。
一方で私は、以前にインド最大の時計・宝飾品メーカー、タイタンのデザインスタジオに勤めていたのですが、その時から、インドの伝統的な価値をデザインの中に取り込むことを心がけてきました。

タイタンは今もスタジオABDのクライアントの1つで、その時計もデザインしながら、ヨーロッパの洗練や日本の完璧さのように、インドのデザインフィロソフィーとは何かを追い求めてきたのです。

[筆者プロフィール]
大谷 和利(おおたに かずとし) ●テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)、『インテル中興の祖 アンディ・グローブの世界』(共著、同文館出版)。
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