第2回 勝手サイトのビジネスは30代、40代のメアド収集が決め手 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第2回 勝手サイトのビジネスは30代、40代のメアド収集が決め手

2024.5.15 WED

【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

中小事業者もケータイ環境を利用して事業効率アップを!
ケータイビジネス研究室

企画・文=針野信司
コンテンツプロバイド会社、ハリヤ出版企画代表。雑誌記事の編集、執筆、中小事業者のサイト運営支援コンサルティング、プログラム構築などを行っている。最近のプロデュース企画は、『ケータイでラクラクおこづかい』(メディアボーイ刊)がある。
url. www.hariya.co.jp/


第2回
勝手サイトのビジネスは
30代、40代のメアド収集が決め手


ケータイコンテンツのビジネスに注目が集まっている。すでに小資本でサイトを立ち上げ、大きな収益を上げている中小事業者も多い。だが、これからでも先駆者に追いつき、追い越せるビジネスモデルは存在するのだ。


▼▲公式サイトは限界が見え始めている▲▼

前号では、中小企業である小型店舗などがケータイサイトを使って販売促進を行う方策を探った。

しかし、現在手がけている事業を伸ばすのではなく、既存のビジネスに限界を感じ新たなビジネスチャンスをケータイの世界に求める人も多い。

そこで今回は「ケータイコンテンツビジネスの始め方と損益分岐点の算出法」という、めったにお目にかかれないテーマに挑戦してみたい。

というのも、ケータイコンテンツビジネスで専門誌などで取り上げられるのは、成功事例ばかりで、どのような立ち上げをしたのかが触れられることはほとんどないからだ。

これから小資本しか持っていない個人、企業がケータイコンテンツを立ち上げるのならば、勝手サイトに焦点が当てられるであろうが、まずはケータイキャリアが承認し、課金代行まで行ってくれる公式サイトから考えてみたい。

公式サイトのサービスインまでには
500万円以上かかる

一般的に公式サイトの場合、キャリアとの折衝経験がないと審査に合格するまでに1年以上の日数は必要となる。1年以上かけても審査に合格するかどうかは、まったくわからないというリスクもある。そこで、キャリアとの折衝を代行してくれる業者に依頼するとなると、審査に通る確率は格段にアップするうえ、審査期間も3~6カ月と短縮できるが、その代行費用がどんなに安い業者でも3キャリア分で500万~1,000万円かかってしまうのが現実である。

また、着メロやデコメの公式サイトが50万~100万人の会員を集め、大きな収益を挙げていたという夢を追うのはすでに難しい。現状では新たな公式サイトが立ち上がっても、2万~3万人の会員を獲得できれば大成功といわれるような状況になっているからだ。月額課金が300円で、会員を1万人獲得できても、月間の売上高はキャリアへの手数料を差し引くと270万円程度(サイトの性格によってキャリアへの手数料は変動するので、確定額ではない)。ただし、残ったお金はほとんど集客費用に消え、利益が出るどころか大きな損失を出してしまう可能性もある。

それは、ケータイコンテンツの集客費用が高額になるからである。

まずはリアルメディアの雑誌などにQRコードを掲載する広告。グラビアの月刊誌で発行部数10万部、実売7万部で表紙周りではなく、記事の間の1ページで広告費用は50万円程度だ。広告界ではレスポンスが1%あればいいとされているから、50万円の費用で集められる会員はたった700人。1人の会員獲得のために700円以上の費用がかかる計算になる。電車内の広告、テレビなどに出稿すれば、広告費用はこれ以上かかる。

つまりリアルメディアだけで集客しようとすれば1万人の会員獲得で700万円以上は必要。ほとんどの会員が3カ月以上退会しないでいてくれないと、利益は出ないことになってしまう。会員の退会率は日を追うごとに高くなっていくので、新たに会員獲得のための広告を打ち続けなければならない。

集客に威力を発揮する
アフィリエイト広告

次にケータイサイトに広告を打ち、自サイトに誘導するケースだ。この場合、サーチエンジンなどに掲載するリスティング広告、アフィリエイト広告などがあるが、もっとも効果があるとされているのがアフィリエイト広告。意外に思われるかもしれないが、アフィリエイト広告を打った場合、「ポケちょ」【1】や「ケータイコイン」といったポイントサイトが会員獲得に大きな効果をもたらしてくれる。

【1】「モバゲータウン」のディー・エヌ・エーが運営するポイントサイト「ポケちょ」(http://pklo.jp/)
【1】「モバゲータウン」のディー・エヌ・エーが運営するポイントサイト「ポケちょ」(http://pklo.jp/


ポイントサイトとはそのサイトに登録している会員が、公式サイトなどに登録すると、会員にポイントをバックするサービスをするもの。たとえば、デコメの公式サイトに登録した場合、初月の315円の費用をそのまま会員にポイントバック。会員がそのような登録作業を4回ほど繰り返すと1,000円以上のポイントがたまるので、1,000円になったらネットバンク等を通じて会員に現金などを支払うのである。

ポイントサイトは「Smart-C」【2】などのようなケータイアフィリエイト広告取扱業者から広告を卸してもらう。公式サイトで会員1人獲得できれば500円というような広告ならば、自サイトの会員が登録した場合、315円支払っても185円の粗利が出る仕組みで成り立っている。

【2】ケータイアフィリエイト広告を扱う「SMART-C」(http://smart-c.jp/)。成果報酬から出稿にいくらくらい必要か推測できる
【2】ケータイアフィリエイト広告を扱う「SMART-C」(http://smart-c.jp/)。成果報酬から出稿にいくらくらい必要か推測できる


ただし、ポイントサイトの会員はポイント欲しさのみで会員登録するケースがほとんど。ケータイアフィリエイト広告取扱業者が500円の成功報酬を支払う広告の場合、広告を出稿するケータイコンテンツ業者は、出稿費用がやはり700円程度は必要となってくるので、リアルメディアと同様の費用がかかるうえ、すぐに辞められてしまうリスクも抱えることになる。

会員の入退会の繰り返しがあり、つねに数万人の会員が居続けるような状況になって、出稿の必要がなくなって初めて大きな利益が出始めるのだ。

カテゴリメニューの上位にいるため
広告費用がかかり続ける

公式サイトの場合、サイトオープンから1カ月間はキャリアのメニューの中の最上位に掲載されることになり、メニューを見に来たケータイユーザーが注目してくれれば、広告費用もかけずに集客できるし、会員が多いとつねにメニュー上位に位置されるので、広告費を抑えることが可能になる。しかし、少額の広告費用でメニュー上位にいることは非常に難しい。デコメや着うたといった競争の激しいカテゴリであると、月額の広告費を1億円以上使わなければメニュー上位に掲載され続けることは難しいといわれている。

また、公式サイトの場合、収益が期待できるのは月額課金あるいは販売課金。公式サイトはサイト内にバナー広告を貼る場合、キャリアの承認が必要であり、ほとんどの場合外部リンク禁止である。また、ユーザーの特定はできないため、会員にメールなどを打つこともできない。

このように公式サイトは、非常にコストがかかるうえに、収益を得るモデルが限られている。小資本しか持たない個人や企業が手を出すのは非常に難しいビジネスモデルとなっている。


▼▲勝手サイトはメール広告が収益性大▲▼

アフィリエイト広告費用は
公式サイトより抑えられる

では、勝手サイトはどうか?

勝手サイトの場合は、“勝手”といわれるだけあって、キャリアの承認など必要ない。ケータイの画面でユーザーが利用できるようにサイトを構築するだけでサービスインが可能だ。

ただし、のちに触れる収益性のために、CGIやPHPおよび会員に対するメール広告配信のためのSQLなどのデータベースについての知識が必要であろう。その知識がない場合、サイト構築を専門家に依頼する必要があり、多額のサイト構築費用がかかることは認識しておきたい。専門家に依頼しないでも、「モバイルコントローラー」や「Let'sケータイ」【3】などのケータイサイト構築サービスを利用することも考えられるが、フルサービスを利用する場合、月額で5万円以上の費用がかかる。なお、集客にかかる費用のほうは、リアルメディアを使う場合は公式サイトと同じである。

【3】専門的知識がなくてもケータイサイトが構築できる「Let'sケータイ」(http://lets-ktai.jp/homepage/index.html)。フルサービスを利用すると月額79,800円から
【3】専門的知識がなくてもケータイサイトが構築できる「Let'sケータイ」
http://lets-ktai.jp/homepage/index.html)。フルサービスを利用すると月額79,800円から


ただし、昨年、大ブレークした「顔チェキ」のように話題性のあるコンテンツならばプレスリリースを各メディアに配信し、記事で取り上げてもらうということも考えられる。アイデア次第で広告費用を抑えられるという点は、公式サイトではあり得ないケースである。

サイト構築には
専門的知識が必要

ケータイサイトなどに広告出稿する場合を考えると、公式サイトとは若干違った側面が見えてくる。

ケータイアフィリエイトを使って、ポイントサイトなどから会員導入を図る場合だが、無料のサービスの場合(なぜ無料のサービスが成り立つのかは後述)、ポイントサイトの会員に支払われる金額は20~30円程度でもかまわない。ポイントサイトの会員は空メールから会員登録をするだけで、お金がもらえるのだから、積極的にユーザー登録してくるわけである。ポイントサイト業者の取り分、ケータイアフィリエイト広告取扱業者の取り分を含めても、1人の会員獲得費用は200~300円で納めることも可能。その場合、アフィリエイトおよびポイントサイトを利用しても、1万人の会員獲得であれば200万~300万円しかかからないわけだ。

公式サイトに比べて、集客コストはきわめて低く抑えられるのである。

では、収益の面である。先に無料のサービスと述べたが、物販をするならば会員登録は無料でも成り立つであろう。しかし、コンテンツサービスで、ユーザーにサイトを利用してもらうだけで利益が出るのは、どのような手法が必要なのだろうか?

まず考えられるのが、バナー広告による広告費であるが、1万人の会員が1日に10%程度稼働し、数ページを閲覧するだけでは広告収入を期待するのは難しい。やはり10万人、20万人といった会員を集め、ページビューを増やし、本誌のデータページにあるようなインプレッション保証ができるようなサイトにしていかざるを得ない。

そうするためには、何が必要なのか?

やはり、ユーザー側がコンテンツをつくり上げてくれるようなCGM的要素をサイトに導入することであろう。自らがサイト構築をしていたのでは、サイトの内容更新に限界がある。掲示板をつくるか、あるいはSNSを構築するか。掲示板を作成するならばI-SAY.NET【4】などにフリーのスクリプトが公開されているので、これを利用すればいい。SNSであればMixiのクローンのようなサイトが構築できるスクリプトが手嶋屋のサイト【5】から無料でダウンロードできる。

【4】ケータイ用のPHP、CGIを配布している「I-SAY.NET」(http://www.i-say.net/cgi/)。掲示板などのスクリプトはほとんどがフリー
【4】ケータイ用のPHP、CGIを配布している「I-SAY.NET」(http://www.i-say.net/cgi/)。掲示板などのスクリプトはほとんどがフリー

【5】SNS構築のためのフリースクリプトを配布している「手嶋屋」(http://www.tejimaya.com/)
【5】SNS構築のためのフリースクリプトを配布している「手嶋屋」(http://www.tejimaya.com/


小資本から立ち上げ成功しているビジネスモデルは「愛知情報システム」や「AWALKER」などがあるからページビューと収益を比較してみるべきだろう。ページビューはサイト内で公開されているし、そのような企業の求人広告を見ると、企業収益が掲載されていたりするので、ページビューに対する広告収入がいくらかなのかが算出できる。 ただし、これまでに成功してきたCGM的な要素を盛り込んだケータイサイトは、10代のユーザーが中心であり、またフィルタリング導入のきっかけになったアダルト要素が多いコンテンツが中心だった。

こういったコンテンツの内容を踏襲し、追いかけてみても先駆者に追いつくことは至難であるし、またアダルト的な要素はフィルタリングの関係でマーケットが縮小する可能性がある。新規にサイトを立ち上げるのならば、既存にないテーマのサイト構築を考える必要がある。

メール広告の収益は
1通当たり10円以上!

勝手サイトの場合、収益面で公式サイトではまったく期待できない要素がある。それが会員に配信するメール広告である。

実はケータイのメール広告費用は非常に高額。1通当たり10~30円が相場であり、会員の属性がわかっていてセグメントができるシステムがあれば、さらに高額の広告収入も期待できるのが現状である。

CGM要素のところでアダルト要素は避けるほうがベターだと触れたが、アダルト要素が入っていれば、会員登録が必要だった場合、ユーザー数を伸ばすことは期待できない。自らのメールアドレスをサイト側に通知し「アダルト要素を楽しんでいます」などと開き直れる人はそうそうはいない。アダルト要素でページビューを稼ぐビジネスモデルは、このメール広告による収益の期待値がグッと減ってくるのである。

つまり、CGM的な要素は一般の社会人あるいは特定のテーマにひかれるマニアが必要とするものにしていきたいのである。たとえば成功するかどうかはまったく未知数だが「10分でつくれるお弁当レシピの掲示板」とか「画像付きフィギュアの自慢SNS」。前者であれば、学生の子どもを持つ主婦が集まるサイトとして認知され、食品会社などのメール広告が取れるかもしれない。また後者であれば、完璧にフィギュアのマニアだけが集まるサイトなのだから、ホビーショップやフィギュア制作会社の広告が期待できるであろう。

あくまでもこれらは事例にすぎないが、まだまだ30~40代の人が集まるケータイサイトは少ない。アダルト的な要素で10代の人間を集め、大きな収益を上げたビジネスモデルはあるが、30代、40代のユーザーに生活情報、趣味情報などのコンテンツで迫っているサイトを構築するならば、先駆者として小資本からビジネスの成功者になることも期待できるのではないだろうか。

1万人の会員に対し配布するメールに、1通10円の広告が入れば10万円の収入。会員の属性が定まっていれば、それが可能になる。ただし、メール広告で気をつけなければいけない点がある。

ひとつは1万通のメールを同時に配信するのは不可能だということ。同時に配信する場合は、キャリアに申請し、同時配信の費用などをキャリアに支払わなければいけないケースもある。その手続きを怠ると、スパムメール配信業者として特定され、同一IPアドレスからのケータイへのメール配信が拒否されてしまう。

また、10万通、20万通といった大量配信になってくると、キャリアの同時配信許可だけではメール配信は難しくなる。このような大量のメール配信を行う場合は、メール配信ASPサービス【6】を利用するしかない。

【6】「アクセスメール」というメール配信ASPサービスを提供する「Klab」(http://www.klab.org/am/)
【6】「アクセスメール」というメール配信ASPサービスを提供する「Klab」(http://www.klab.org/am/


メール配信ASPサービスとは、独自に時間をわずかにずらしながら大量のメールを短時間に配信できるものだ。

10万通、20万通のメールが送れるようになれば広告収入も大きくなってくるはずであるが、それとともにメール配信ASP業者へ1回の配信当たり数十万円程度の費用を支払わなければならない。

広告収入とメール配信ASPコストのおいかけっこが、ここでも始まるのだが、30代、40代の社会人やマニアのメールアドレスを大量に収集している業者はまだほとんどない状況。メール配信ASPコストが悩みの種になった時点で、ケータイコンテンツビジネスは大成功の域に達しているといってもいいのではないだろうか。


本記事は『Web STRATEGY』2008年7-8 vol.16からの転載です
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