第2話 次にどういうことができるか? | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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今回の「ザ・対談』は、Flashアニメーションの二大巨頭が登場! 正月映画『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』の公開が決定した監督のFROGMAN(蛙男商会)さん。そしてDVD『ペレストロイカ』と『CATMAN』がリリースされたばかり青池良輔さん。お互いの新作インタビューと同時に、普段読めないようなユルくてタメになる談義をお送りいたしましょう!


第2話 次にどういうことができるか?



ジョイント講演会の直前、取材を受ける青池さん(左)とFROGMANさん(右)


ジョイント講演会の直前、取材を受ける青池さん(左)とFROGMANさん(右)


お互いの新作について



──FROGMANさん、今回原作モノを映画にするという心構えはどうでした?

FROGMAN●いやー、すごく辛かったです。特に今回の映画のほうは、原作がありながらストーリーはオリジナル。なおかつ『ピューと吹く〜』はジャガーさんを中心にした仲間たちの日常の話なんですね。それを延々、劇場で1時間30分見せるのは辛いだろうという話があって。やはり映画としての奥行き感、スケール感があったほうがいい。だからジャガーさんのギャグのテイストでありながら、なおかつ映画のスケールを出してくれ、と。正直「ウムム……」というのが第一感想でした。

──それで?

FROGMAN●原作者のうすた京介さんと焼き肉を食べながら「どーしましょうか?」と話をして。いろいろキーワードを投げたときに、引っかかったのが「パラレルワールド」だったんです。いろんな世界に行けるのがいいねって。それでウンウン言いながらシナリオ、上げたんですけど。

──上映館のサイズでFlashを見せていくのは、ある程度、力技も必要?

FROGMAN●たぶん青池くんがやれば、そんなに遜色ないと思う。けれど特に蛙男商会の作品って、キャラクターがほとんどひとつしかなくて「いかにして動かないアニメーションで70分引っ張るか?」というのが大変ですね。

青池良輔さん ──かたや青池さんの『ペレストロイカ』は各国の映画祭にノミネートされていますが、観客は自分の思った笑いのツボに反応してます?

青池●うーん、自分の予想の6割ぐらいですかね……。オタワ映画祭のときに、2分間ゲラ笑いしているオバちゃんが最前列にいて、みんな、そのオバちゃんが何を面白がっているのか、気になっているうちに終わったんですけど(笑)。

FROGMAN●キャラにツボ入っちゃってるんだね。ニューヨークにもそういう人いたよ。

──笑いってベーシックに各国人にアプローチできるものだから……

青池●そうですね。あ、でも国によって笑えないネタもあるようですよ。

──今回は落語のネタも取り入れつつ。

青池●そうですね。落語なんですけど、わかりやすい言葉遊びもありますし、動きとして思い白いものを取り入いれて。それは通じる感じでしたね。

──FROGMANさんは日本のエンターテインメント業界で作って、青池さんはクレイアニメをFlashで挑戦したらどうなるか……と、割と実験的なところでやっている。対照的だなと思ったのですが。

FROGMAN●彼、ことごとく、やっていることがカッコイイんですよ(笑)。

青池●そんなことないですよ。

FROGMAN●悔しいんですよね。手法自体、見てもあんまり理解できない。理解を超えてますね。いつも。

──『ペレストロイカ』のメイキングはご覧になりました?

FROGMAN●ええ。「ああ、こういうふうにやっているか」と。そこらへん、彼はクリエイターだなと思います。僕は今まで既存のシナリオがあって、それに絵をつけてこうなりました、と。オーソドックスなやり方で、それがFashだったということでいろんな人から声をかけてもらっていると思うんです。でも、彼の場合はFlashで「次にどういうことができるか?」を考えている。

青池●ひとつのこと、飽きちゃうんです。初めの話じゃないですけど、同じ絵柄で同じ作り方をしている作品がふたつ続くと「もうやりたくなーい」って。

FROGMAN●ハハハ。そういう意味では俺、保守的なんだよね。

青池●いやー、話とか間(ま)で見せるパワーがすごいじゃないですか。

FROGMAN●逆に言うと、それしかないからね。

青池●一個、武器があればいいじゃないですか。

FROGMAN●でも最近、絵が上手くなりたいなって思って。だから毎朝、クロッキーとかやってるの。

青池●アハハハ。魅力がひとつ減りますよ(笑)。

FROGMAN●そうそう、周りに止められているんだけど。「ダメですよ、絵がうまくなったら」って(笑)。

青池●僕も絵がうまくなりたいなと思いますから、新作の『CATMAN』は全部レイアウトを3Dで組んで、パースと構図は決めて、影は決めてから描いてます。

FROGMAN●へー。

青池●これで絵を描くのが楽になるはずだと思ったら、3D作るの面倒くさくて。

FROGMAN●彼、驚くのは、iMacのタッチパネルで絵を描いてたんだよね。最初。我々ペンタブというものを使うんですけど「これでやっているの?」って聞いたときに、かなわないなコイツに……と思いましたもん(笑)。

青池●ペンタブ、知らなかったんですよ。締め切りが近づいて「ヤバイ!」ってときに、友達が「なんでペンタブ使わないの?」って。

──『ペレストロイカ』に関して言うと、アニメーターというよりもモデラーですよね。

青池●背景なんかも、うちの奥さんや友達が作って。メイキングでも明かしてましたが、一番最初にソファを作ろうと言ったら、奥さんが本革でソファ作ってきて。

FROGMAN●へー。それ仕事じゃないよね。

青池●うん。大変でした。

 DVD『ペレストロイカ』より DVD『ペレストロイカ』より


 DVD『ペレストロイカ』より DVD『ペレストロイカ』パッケージ

DVD『ペレストロイカ』
発売中 2,940円(税込)
発売元:ROBOT/販売元:東宝
企画・脚本・アニメーション制作:青池良輔 ミニチュア制作:青池清子 音楽:冷水ひとみ プロデュース:ROBOT、Bascule、Creative Artists
日本語版キャスト:松尾スズキ、阿部サダヲ、村杉蝉之介、皆川猿時
本編:26分+特典映像20分

2006年、MTVで放映され、オワタ国際アニメーション映画祭ほか、国際映画祭で各賞受賞経歴のある、クレイ(粘土)アニメーション+FLASHの融合作品。ハラペコ3人組が繰り広げる、金はなくとも腹を満たそうとする“まぬけさ”に笑み。制作過程が楽しめるメイキング映像も必見だ

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昨今「Flash」事情



──この数年、周囲の環境が激しく変わった印象はありますか?

FROGMAN●青池くんのほうは、早くから仕事にしていたからね。

青池●ええ、どちらといえば。蛙さんは会社にされた頃、ポーンッとあったんじゃないですか?

FROGMAN●2006年、確かに『鷹の爪 THE FROGMAN SHOW』の頃、それまでFlashを映像コンンテンツとしてメジャー・メディアで展開する試みとしては初めてだったから、猛烈なバッシングと猛烈な「なんじゃこりゃ?」の世界。どうやってこの作品を見ればいいのか「?」マークで迎え入れられたんですね。

青池●はい。

FROGMAN●まあ、その中でも好事家の方がいて、面白いと応援してくれるんですけど。その1年は「どーしたらいいんだ、この作品」という感じで周囲は見ていた。でも、新聞とか硬めのメディアが取材に来られて。ヘンな動きが最近ある、と。ですから、いまだにアニメーション業界からは認められていないんですけど(笑)。

青池●ハハハ。

FROGMAN●アニメ雑誌からも1本も取材こないし(笑)。映画とアニメ、4本作っているんだけどさ。

青池●うーん、ビミョーな話ですね。

FROGMAN●既存のアニメ業界ではまだ受け入れられていないという気がしますけど、今年に入ってから大手のアニメ会社がFlashやり初めているんですよ。

青池●そうなんですか。

 FROGMANさん FROGMAN●みんな、韓国に制作を出しているんですよ。受注はするんだけど、スタジオを持たずに海外に流して、Flashアニメーション制作の国内需要がグワーンと伸びているんです。それはいいことだと思う。ようやくFlashアニメーションというものの、いわゆる産業としての形が見えてきたんじゃないか、と。まあ、大規模スタジオと僕らみたいな個人制作者というのは、また別のフィールドの話になっちゃうんだけど。

青池●やっぱりコストが違ってきますからね。「これ、青池くんのところで引き受けられる?」と言われて、僕「ゴメンなさい」と言ったのが、某国に流れてたって話で(笑)。

FROGMAN●へー(笑)。

青池●そういうところと価格競争、無理ですよ。

FROGMAN●だよね。

青池●いまFlashスタジオって、主は近隣アジアなんですよ。

──青池さんが在住しているカナダも、スタジオ多くて盛り上がっていると聞きますが。

青池●ええ。でも使ってるアプリが、純粋にはFlashじゃないんですけど。

FROGMAN●みんな「ToonBoom」だね。

青池●そうですね。別のツールで、中身はFlashなんだけど。

──カナダに移住した理由も、そういうことが影響を?

青池●いやいや、行き着いた果てがカナダだっただけです(笑)。



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